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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第三部

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おっさんA、調査する02

治療をして回った人たちに話を聞くが、原因はよくわからない。

ただ、全員に共通しているのは、みんなが海辺に住む漁業関係者で日ごろから海に出て、この町の魚を食べているというざっくりとした状況だけだった。

(一般庶民にも若干の被害はあるらしいが、被害が漁業関係者に集中しているとみていいのだろうか? だとしたらやはり原因は海なんだろうか?)

そう思いながら、漁師の家を後にし、いったん浜辺に向かう。

そこでマイに、

「頼めるか?」

と聞くとマイは真剣な表情で、しっかりとうなずき、

「やってみます」

と言ってくれた。

例の水晶玉のようなものとワンドを取り出し、マイが魔力を集中させ始める。

すると青白い魔力の波が波紋のように周辺へと広がっていった。

キラキラと夕日に輝く海にマイの魔力が溶けていく。

私は少し不謹慎かもしれないが、単純に、

(美しい……)

と感じた。

やがて、マイが魔法を止める。

マイはすぐに手を膝につき、「はぁ……、はぁ……」と肩で息をし始めた。

「大丈夫!?」

すぐにサーニャがマイのそばに寄り、肩を支える。

私も心配してみていたが、マイはなんとか顔を上げると、

「すみません。はっきりしたことはわかりませんでした……」

と悲しそうな表情でそう言った。

「そうか。ありがとう。参考になったよ」

と言うが、心の中では、

(うーん。これ以上の調査は難しいか……)

と考える。

しかし、そこへリズが、

「じゃあさ、ぼんやりした感想なら言える?」

とマイに聞いた。

「え? あ、うん。これは本当になんとなくだからはっきりとしたことはわかんないんだけど、普通の水の魔力を読む時と違って、魔力の波が広がるのが速いなって感じがしたわ。普通のお水だったら、それは魔力が少なくなってる証拠になるんだけど、でも、それってただ単にここにあるのが真水じゃなくて海水だからっていう理由かもしれないじゃない? だから、本当のところはよくわからなくて……」

マイがどこか申し訳なさそうに言うのを聞き、なんとなく推論を立ててみる。

(仮に海水の魔力が少ないとしたら、話の辻褄が合う。漁師は魔素の少ない環境に長時間さらされるから体調不良を起こしてしまったという推測ができるだろう。だが、子供は? ん? もしかして、魚に含まれる魔素の量も減っているということなのだろうか? いや、それなら大人も……。そうか、子供は食う量が少ない。ならば大人よりも重症化しやすいわけだ。となると、これは大問題だぞ!)

私はそう気付くと、

「これは急いでヒースさんに報告した方が良さそうだな。この問題はこの町だけの問題じゃ終わらない可能性がでてきた。となると、一介の商人がなんとかできる範囲じゃない。下手をしたら国家が動く問題だ。きっちり報告して善後策を練る必要があるぞ」

と言い、みんなに真剣な顔を向けた。

「どういうこと?」

と素直に疑問を差し挟んでくるサーニャにかみ砕いて私の推論を説明する。

「そっか。魔素の薄い地域のご飯っていっぱい食べても食べた気がしないことがあるもんね。ってことはみんなのご飯に危機が迫ってるってことじゃん! それって大問題だよ!」

どうやらサーニャも事態の深刻さを理解してくれたようだとわかったところで、私たちは急いで宿に戻っていった。


翌日。

朝一番の船に乗り、南の町に戻る。

私は居ても立っても居られないような気持ちを抑え、ゆっくりと流れる川面の景色を眺めた。

やがて、南の町に着き、さっそくリッツ商会を訪ねる。

ヒースさんは留守だということだったので、至急伝言してくれと伝え、宿に向かった。

翌日の朝。

先日と同じ手代の女性が宿を訪ねてくる。

「さっそくですが、是非面会したいと申しております。いかがでしょうか?」

と聞いてくる手代の女性に、

「もちろんだ」

と答えると、私たちはさっそく用意された馬車に乗り込んだ。

また馬車がヒースさんの自宅に向かう。

相変わらず豪奢な邸宅に少しだけ緊張しつつサロンに入ると、ヒースさんが、

「原因はわかりましたかな?」

と嬉しそうな顔で挨拶抜きに聞いてきた。

それに対して私は軽くうなずきつつも、

「結論としてはわからなかった。しかし、推論は立てられたから報告に来た」

と言った。

「推論ですか?」

と訝しがるヒースさんに、

「もしかしたら、事は私たちが考えていたより重大なのかもしれん。最悪の場合国が動くような案件になるから、その相談にきたんだ」

と言うと、ヒースさんの顔つきが変わった。

「詳しく伺いましょう」

そう言われて席に着く。

またすかさずメイドが入れてくれた高級茶をひと口すすると、私は、落ち着いて事の次第を語り始めた。

「まず、強壮剤の件は無事片付いた。そこは安心してくれ」

「わかりました。ありがとうございます。で、体調不良の件が、大変かもしれないということですね?」

「ああ。まず、体調不良が広がっているのはやはり漁業関係者、特に漁師とその子供が中心だった」

「ええ。事前の情報と合致しますね」

「そこで、ここから先の話はヒースさんにだから言うことだ。そのつもりで聞いてほしい」

私がそう言うとヒースさんが、

「……わかりました。おい。声を掛けるまで外で待機していてくれ」

とメイドに声を掛け、メイドが一礼して部屋を出ていく。

そして、ヒースさんは、より真剣な表情になると、

「お伺いしましょう」

と言い私に話をうながしてきた。

「ああ。まず、ここにいるマイは聖魔法が使える。このことはなるべく秘密にしたいと思っているから下手に口外しないでくれ」

「かしこまりました。商人としてお約束しましょう」

「ありがとう。で、その聖魔法を使った結果わかったのが、体調不良の原因は魔力障害だったということだ」

「魔力障害?」

「ああ。冒険者だと魔法使いが魔力を使い過ぎた時になったり、魔素の薄い地域で子供がなったりする病気だ。全身の倦怠感が強く出るという症状がそれと似ていることから気が付いて確かめてみた。実際、マイの聖魔法で治療すると症状が改善したからそれは間違いないだろう」

「……なるほど。ということはあの町で体調不良を起こしている全員にその聖魔法を使った治療が必要ということですかな?」

「いや。ちょっと違う。それももちろん必要だろうが、いわゆる対処療法にしかならないだろうな。根本の原因を解決しなくては、ずっとこの状態が続くだろう」

「……それでは、あの町はもう……」

「いや。まだ希望はあるぞ。まず、魔力障害から起きる体調不良は強壮剤でなんとかしのげる。まぁ、一時しのぎにしかならないが、無いよりマシだろう。で、問題は根本原因の方は、一介の商人や冒険者がどうこうできる範囲を超えている。おそらく領主が動いても解決できないだろう」

「となると、まさか?」

「ああ。国に直接動いてもらうことが必要だ」

「それは、なんとも……」

「マイが調べた結果、原因ははっきりしないが、どうやらあの町の海には魔素が少ないのではないかという可能性が浮上してきた。もちろんはっきりしたことは言えないが、それなりの筋に通せば、調査くらいしてもらえるんじゃないか? ヒースさん。そういう伝手を持っているなら使ってくれ」

そこまで言うとヒースさんがなにやら顎に手を当て、考え事をするような仕草を見せ始めた。

「どうだ?」

思わず聞く私にヒースさんが、

「その聖魔法が使えるという情報、王都の商業ギルドのギルドマスターになら伝えても?」

と逆に私に条件を尋ねてきた。

マイに視線を送る。

マイが真剣な表情で、「こくん」とうなずいてくれたので、私もヒースさんにうなずいてみせた。

「ありがとうございます。では、王都の商業ギルドのギルドマスター宛てに書状をしたためます。私からの紹介だと言えば、おそらく会ってくれるでしょう。申し訳ありませんが、アレンさんたちがその書状を届けてくださいませんか? そして、王都がどういう対策を取るか分かった時点で教えてください」

「わかった。その仕事引き受けよう」

「助かります。ことがことだけに私の一存だけで動けない部分もあります。一度組合で会議に諮ってから書状をしたためますので、少々お時間をいただけますかな? 急げば明日にはできると思いますので」

「了解した。マイのことはくれぐれも口外しないよう頼むぞ」

「心得ております。ご安心ください」

「ありがとう。では連絡を待っている」

「こちらこそありがとうございました。追ってご連絡差し上げます」

そこまで話し、握手を交わす。

私たちはなんとも重たい気持ちを抱えてヒースさんの自宅を後にしていった。


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