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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第三部

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おっさんA、海を満喫する02

なんだかんだで海遊びを満喫した翌日。

さっそく南の町に向かう。

二日ほどかけ、船で南の町に入ると、適当に宿を取り、私たちはさっそく商業ギルドを訪ねた。

「すみません。行商人のリズと申しますが、エメローダさんはいらっしゃいますか? もし、お手すきならお話を伺いたいと思ってやってきたんです。以前、リネア村の件でお世話になったと伝えていただければわかると思いますわ」

なんとも商人らしい口調でリズが受付嬢にそう言うと、受付嬢はハッとした顔で、

「ああ、あの時の! 少々お待ちください。聞いてきますね」

と言い奥に下がっていってくれた。

(ああ、あの時の受付嬢だったか。どうりで見たことがあると思った)

と思いつつしばし待つ。

すると、奥からエメローダさんがニコニコしながら出てきてくれた。

こちらはリズが代表してエメローダさんを迎える。

「お久しぶりですわね」

「ええ。お久しぶりです。今日は海辺の町のことについて少しお伺いしたいと思って伺いました」

「あら。お耳が早いんですね。不漁の問題をお聞きになったんでしょう?」

「ええ。なんでも深刻だそうですね。それに漁師に体調不良者が出ているにも関わらず薬師ギルドが動いてないとか聞きましたから、なにか裏に事情があるのかと思ってご意見を聞かせてもらいにきましたの」

「なるほど。そこまでご存じでしたか。私も大雑把な内容は把握しておりますが、詳しい事情となるとリッツ商会のヒースさんが一番詳しいでしょうね。なにしろ私もヒースさんから情報を仕入れておりますから」

「そうでしたか。なんとなくそんな気はしていたのですが、ヒースさんに面会を申し込むことは可能ですか?」

「ええ。可能だと思いますよ。宿はどちらに?」

「商店街の端にある『梢亭』です」

「ああ。あそこですね。かしこまりました。すぐに使いをやりますから、明日には返事を持っていけると思いますよ」

「ありがとうございます」

「いいえ。海辺の町のことは私も気にかけておりましたの。でも、これといった打開策も思いつかず頭を悩ませていたところでしたのよ。ヒースさんも同じようなことを考えてらっしゃると思いますから、きっと喜んで面会してくださいますわ」

そんな話をし、リズとエメローダさんが握手を交わしたところで、私たちは商業ギルドを後にした。

「やっぱり問題になってたね」

「ああ。しかもヒースさんが動いてるってことは相当だ」

「なるべく大きな問題になってないことを願ってたんだけどなぁ」

「どうやらそうもいかなかったみたいだな」

「私たちになにかできることあるかな? もちろん、商人としてだけどさ」

「どうだろうな? ただ、問題が大きければ大きいほど、解決する時に大きな商機が訪れるってのも商売の基本だ。おそらくヒースさんもそこを狙って動いているんだろうぜ」

「……そっか。だよね。ヒースさんが動いているとなるとそこには絶対に商売の種が埋まってるって考えて間違いなさそうかも。俄然やる気が出てきたよ」

と商人らしいことを言いつつもどこか困ったような表情で苦笑いを浮かべるリズを見て、なんとなく、

(きっと商売人としての考えと自分の信じる正義の狭間で揺れ動きながらなにか計算しているんだろうな)

と考える。

そんな私の考えはおそらく当たっていたようで、リズが、

「また、みんなが幸せになる方法、考えなくっちゃね!」

と言って私にニカッとした笑みを見せてきた。

その日の夜。

少し遅い時間。

リッツ商会の手代を名乗る若い女性が訪ねてくる。

「よければ明日、すぐにでも会いたいらしいのですが、ご都合はいかがですか?」

という女性に「もちろん」と返事を返すと、その女性はほっとしたような表情で、

「では明日の朝、お迎えにあがりますので、どうぞよろしくお願いします」

と言い宿を辞していった。

「この時間に急いで使いを出してくるってことは、さ……」

「ああ。あっちも必死なんだろう。こりゃ思ったより本腰を入れなきゃいかんかもな」

「なにかいい案が浮かぶといいね」

「ああ。とにかく、どういう事情かじっくり話を聞いてみよう」

とリズと話し、その日は床に就く。

そして翌日。

朝食がすむのと同時くらいに昨日もきた手代の女性が迎えにきたので、私たちは馬車に乗り、リッツ商会へと向かっていった。

さっそく到着した馬車寄せと門構えを見て圧倒される。

そこは商会というよりも貴族の邸宅のように見えた。

「ヒース会頭のご自宅です。どうぞ、中でお待ちですので」

そう言われて、

(ああ、そうか。仕事の話をするからてっきり商会に行くものだと思っていた……)

と気付き、

(それにしてもデカいな……)

と子供のような感想を持つ。

手代の女性によって開けられた豪華な扉をくぐるとそこにはメイドの姿があった。

「お待ちしておりました。リズ様、アレン様、マイ様、サーニャ様。主人が待っております。さっそくですが、サロンへどうぞ」

やたらと丁寧に迎えられ、柄にもなく緊張しながらメイドについていく。

するとなかなか瀟洒な作りの白い扉の前でメイドが止まった。

「失礼いたします。お客様のお着きです」

「入ってもらえ」

短いやり取りでメイドが扉を開き中へと案内してくれる。

一歩足を踏み入れたそこには明らかに質の良さそうなソファが置かれ、壁にはいかにも上品な絵画がいくつか掛けられていた。

「わざわざ呼び立ててすみませんね」

そうにこやかなに挨拶をしてくるヒースさんに、

「とんでもございません。素敵なご自宅ですね」

とリズが返し、和やかに会談が始まる。

さっそくソファに腰掛けると、そこにメイドがお茶を持ってきてくれた。

(お。これすごくいい香りだ。ハーブ系か? 花のような甘さの中にさっぱりとしたものも感じられる。もしかしてナルシーの花を使っているのか? だとしたら、あれ、めちゃくちゃ高いぞ?)

と思っていると、リズが、

「とっても美味しい紅茶ですね。どちらの産地のものですか?」

と何気なく話を切り出す。

「東の国の産物ですよ。ナルシーの花という珍しい花の香を付けたもので、最近気に入っておりましてね」

「さようですか。それは素晴らしい嗜みですね」

「ははは。ありがとうございます。では、さっそく話に入らせていただきましょうか」

「ええ。ありがとうございます」

そう言ってさっそく本題に入っていった。

「不漁だそうですね」

「ええ。潮の流れが変わったとか。おかげで取れる魚の質は落ちるし、漁場が遠くなったおかげで鮮度も落ちてしまっております。庶民の台所を直撃しておりますなぁ」

「それはさぞお困りのことでしょう」

「ええ。なにかいい解決策を思いつきませんか?」

「残念ながら、その点に関しては自然が相手ということになりますので」

「そうですな。無茶を申しました」

「いえ。それより、カヤの販売はいかがですか? 私たちが海辺の町で泊まった宿にも設置されておりましたから順調なのだろうとは思っておりますが」

「ええ。あれは想像以上の商売になりました。今では各地に生産拠点を作ったり、リネア村に薬草の増産をお願いしたりするまでに急成長しておりますよ」

「それは良かったです。それについて、なにか困っていることはありませんか? 私どもも商売の種を売ったわけですから、なにかあれば尽力させていただきますよ?」

「おお。それはありがたい。実は今日お呼びしたのはその件だったんです」

「というと?」

「ええ。実はカヤが売れたことで、虫刺されの薬を作っていた薬師たちの生計が苦しくなるという事態が起こってしまいましてね。それで、今薬師ギルドと少しだけもめているんです。私は虫刺されの薬が売れないなら他の薬を作ればよいと提案したのですが、どうもそんなに簡単な話じゃ無さそうでしてね。なにかいい知恵はないものかと思っていたところなんですよ」

ヒースさんがそう言ったところでリズが私に目を向けてくる。

私は軽く「こほん」と咳払いをすると、

「通常、薬師はいろんな薬を作って生計を成り立たせているものです。しかし、海辺の町のように底堅い需要に支えられたいわゆる鉄板商品があれば、話は別になってくるでしょう。おそらくその生計に困っている薬師というのは虫刺されの薬を専門に作っていた者たちでは? そうであれば他の薬を作れと言われてもそう簡単にはいかないでしょう。なにしろ他の薬を作った経験がないのですから。それに、他の薬を作れる薬師たちも虫刺されの薬という事業の大きな柱を失ったのだから、損害は相当なものになる、ということであっていますか?」

と聞いた。


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