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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第三部

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おっさんA、再び海に向かう01

南の町へあと五日ほどの町までくる。

特に用事は無かったが、とりあえず冒険者の癖として冒険者ギルドに寄ると、そこで、「カヤ運送・護衛・若干名」という依頼を見つけた。

(お! これって南の町で売り込んだ蚊帳のことじゃないか。そうか、さっそく商売になっているんだな)

と嬉しい手応えを得る。

リズにもその依頼を見せると、ニコッと笑い。

「よかったね!」

と言ってくれた。

少しいい気持ちで町を出る。

そして、私は南の町に行けばまたなにか新しいことに出会えるのではないかというなんの根拠もない希望を胸にまた旅の空に戻った。


南へ向かう街道をのんびり歩く。

リズ、マイ、サーニャの三人がなにやら楽しそうに話しながら歩いているのを私は後ろから微笑ましく眺めていた。

そんな私を振り返り、サーニャが、

「そういえば、アレンってどこの出身なの?」

と聞いてくる。

「東の辺境だが?」

と答えると、サーニャは少し考えるような仕草をしてから、

「じゃあ、意外と近いね。アタシも東の町の近所の村出身だから」

と言った。

(サーニャが自分の生い立ちを少しでも明かしたのは初めてだな。少しは私たちに心を開いてくれたということなんだろうか?)

と思い、少し嬉しくなる。

(しかし、東の町の近所の村か。ってことは寒村なんだろうな。辺境まで行けば逆に砂糖の生産があるが、あの町の周辺は主要な産物もないし、魔獣の被害が多いところだから村が大きくなりにくいんだよな)

などと考えていると、サーニャがどこか嬉しそうな顔で、

「アタシ、アレンの故郷見てみたいな」

と言った。

「つまらん町だぞ。砂糖の生産があるから多少賑わっているが、それだけだ」

自虐を込めてそう言うと、サーニャはどこか遠い目で、

「でもまだあるんでしょ?」

と言ってくる。

一瞬意味が分からず、不用意に、

「ん? ああ、あるが?」

と答えたが、サーニャはニコリと笑い、

「うちの村はなくなったんだよね」

と言った。

(まずい。踏み込み過ぎたか!?)

と思うがサーニャに気にした様子はない。

それどころか、

「アタシさ、小さいころ村が魔獣に襲われて孤児になったんだ。で、そこに討伐にきた冒険者パーティーに拾われたってわけ。みんなS級だったからとんでもない経験ばっかりさせられたなぁ。まぁ、今ではいい思い出だけどさ」

と言いあっけらかんと笑ってみせた。

(その話のどこをどう拾っていいか……)

少し思い詰めて悩む私にサーニャが、

「なんでアレンがそんな顔してんのさ。本当にいい思い出もあるんだよ。そりゃ、つらいこともあったけどさ。知ってる? 『竜炎の牙』ってパーティー。竜を討伐したからみんな英雄とかになっちゃってさ。リーダーなんて貴族になっちゃったんだよ。笑っちゃうよね!」

と言ってくる。

私はその「竜炎の牙」という名前に驚き、

「おいおい。そりゃ伝説の勇者パーティーじゃねぇか!? え? ていうか、じゃあなんでこんなところで冒険者やってんだ?」

と思わずつっこんでしまった。

「うん。あの人たちってばそう言われてるみたいだね。アタシは下っ端だったから、そういうのは全部断って逃げてきたんだけどね。みんな元気かなぁ? あ、そうだ! 時間があったら王都にも行ってみようよ。きっとみんな歓迎してくれるよ」

そう言って笑うサーニャの顔に悲壮感はない。

私はそこに、

(いや。あの時のサーニャの目。あれは本当にいい思い出だけで終わっているような目じゃなかったが……)

と若干の違和感を持ったが、横にいるリズも、

「あはは。まったく、びっくりの経歴だよね。まさかサーニャがそんな過酷な人生を歩んできたなんて思いもしなかったよ」

と言ってどこかあっけらかんとしているし、マイも、

「ええ。私たち似た者同士だったんですね。私も戦災孤児で王都の孤児院にいましたから」

とどこか微笑ましい感じでそう言っている。

私は本当にこの話のどこをどう拾えばいいのかと思い、苦笑いしながら、

「人の数だけ人生があるんだな」

とわかるようでわからないようなことを言った。

その後、話を聞くと、三人は昨日泊まった宿でそんな話をしたんだそうだ。

リズもマイもサーニャが自分から話してくれたことがとても嬉しかったと言い、サーニャもどこか照れくさそうに、

「だって、もうそういう間柄じゃないじゃん?」

と言いはにかんだような笑顔を見せているからきっとリズとマイに心を開き、心の底からほっとしたというのがおそらく今の状況なのだろう。

私はその光景がまさに青春そのものだと思ったので、思わず、

「若いっていいな」

とつぶやいて頬を緩める。

そんな私に三人は、

「なにそれ? おっさんの感想じゃん!」

「あはは! そうだね、アレンってば妙に達観してるね」

「そうね。私やリズからしたら、アレンの方が年下なのにね」

とそれぞれに感想を言っておかしそうな笑顔を向けてきた。

なんだかわからないが楽しく清々しい気持ちになり、

「俺もまだまだ青春しなきゃな」

と冗談を言う。

すると三人はまた笑い、

「そうそう。おじさんも青春していいんだよ?」

「あはは。アレンに青春って似合わないかも」

「もう、リズったら。それはいくらなんでも失礼よ?」

「えー? そう言いながらマイも笑ってんじゃん」

と言葉を交わし、また前を向いて楽しそうに歩き始めた。

(三人寄れば姦しいってか?)

となんともおっさん臭いことを思い、苦笑いを浮かべる。

そんな三人の姿を微笑ましく思いながらまた後をついていく。

すると今度はリズが振り向き、

「ねぇねぇ。海を堪能したら王都に行ってみようよ。勇者様の家に伝説の賢者様が残した魔道具がいっぱいあるらしいよ。サーニャがお願いすれば、それもしかしたら見せてもらえるかもなんだって!」

と言ってきた。

「それはすごいな。でも、勇者様といえば王都の立派なお貴族様なんだろ? そんなにすぐに会えるのか?」

「それなら問題無いって。たぶんサーニャが会いたいっていったら喜んであってくれるらしいよ」

「そうか。じゃあ、海で魚を堪能したら王都見物だな」

「やった! 王都の流行も知れるし、なにしろ伝説の賢者様が残した魔道具だからね。もう、ワクワクが止まんないよ!」

そんなリズにサーニャが、

「エリスのケーキはとっても美味しいんだよ」

とニコニコ顔で言う。

私はエリスという名にピンとこなかったが、マイが、

「まぁ! 聖女様はケーキもお作りになれるの!?」

と言ってくれたので、

(ああ、勇者パーティーにいた聖女さんはエリスって名前なのか)

と気が付いた。

そんな三人に、

「じゃあ、このまま王都に向かうか? 海は逃げないしな」

と言うと三人から、

「まずはお魚食べたい!」

「うん。あのカヤの行方も気になるから、それは確認したいんだよね」

「私ももう一度海が見たいですわ」

という言葉が帰ってくる。

私はそんな自然体の三人をとても微笑ましく思いながら、

「そうか。じゃあ急いで南の町に向かおう」

と笑顔でそう告げた。

急いで次の町を抜け、小さな村に入る。

そこはいつか訪れたリネア村とよく似たいわゆるド田舎で、なんとも緩い雰囲気とどこまでも広がる田園風景が広がっていた。

こじんまりした宿に入り、女将となんとなく世間話を始める。

女将曰く最近は南の町に活気が出たのか、この辺りにも頻繁に行商人が来るようになったのだとか。

それでも、十日に一回くる程度ということだったので、

(いや、そんなに頻繁じゃないじゃないか)

とツッコミを入れたくなったが、女将が嬉しそうに、

「この村も便利になりましたよ。あとは畑がもう少し良くなるともっとよくなるんでしょうけどねぇ」

と言っていたので、そのツッコミはそっと心の奥に仕舞っておいた。

その後、宿自慢のクリームシチューっぽいロールキャベツを美味しくいただき、ゆっくりしたお茶の時間になる。

するとそこに、なぜか村長だと名乗る妙齢の女性がやってきた。

「遅くにすみません。この村で村長をしております、イザベラと申します」

そう言うイザベラさんにこちらも名乗る。

「で、なにか用か?」

単刀直入に聞くとイザベラさんは、少し困ったように一瞬顔を伏せたが、その顔をすぐにあげ、

「あの、つかぬことをお伺いしますが、この村で野菜の育ちがあまりよくない原因を探るというのは冒険者さんのお仕事に含まれるのでしょうか?」

と聞いてきた。

「それはまた唐突だな」

と苦笑いしつつ、

「冒険者ギルドに依頼は出したか?」

と聞く。

その問いに対して、イザベラさんは軽く首を横に振り、

「こんなこと誰に相談すればいいのかもわかりませんから、ずっと一人で悩んでおりました。でも、近くの村では薬草が育ったり、織物が盛んに作られたりしておりますから、きっとこの村にそういう産業が育たないのは、なにか特有の原因があるのではないかと思ったんです。それで、冒険者様がいらっしゃったと聞いて思い切ってうかがってみようかと思ったのですが、これは難しい依頼なんでしょうか?」

と現状を正直に話してくれた。

そこに宿の女将もやってきて、

「すみません、私がお客さんのことをお伝えしたんです。イザベラちゃんがずっと一人で悩んでいろんな本を読んだりしているのを知っていたものですから……。それにここ数年は徐々に畑がやせていってるって話も聞きますし、最近では農家を継がずに町に出る子も増えてきましたから……」

と言いどこか苦しそうな顔をこちらに向けてくる。

私は正直、

(なんとか力になってやりたいとは思うが……)

と迷ってしまった。

そこに、サーニャが、

「アレン。どうかな? 調査だけでもやってみない? ほら、リネア村のこともあるじゃん? もしかしたらなにか見つかるかもよ?」

と言って私に視線を向けてくる。

気が付けばマイもリズも私の同様の視線を向けてきていた。

(おいおい。俺はそんなに万能じゃないぞ?)

と思って苦笑いを浮かべつつも、イザベラさんに、

「わかった。調査だけでも引き受けよう。その代わり、報酬は一日小金貨四枚で四日間だけな。それくらいの負担はできるか?」

と聞く。

するとイザベラさんはパッと明るい顔になり、

「そのくらいでしたら私の私費からなんとかできます。どうか、この村のためになにか一つでもいいので、きっかけをつかんできてください!」

と言いガバッと頭を下げてきた。

「おいおい。そんなに期待せんでくれ。あくまでも森に入って少し調査するだけだからな? 空振りに終わっても文句は言わんでくれよ」

と少しタジタジになる私に、サーニャが、

「大丈夫、アレンならきっとなにか見つけられるよ! 絶対大丈夫!」

と明るい声を掛けてくる。

私は本当に心からの苦笑いを浮かべつつ、

「そう、買いかぶらないでくれ」

と言った。


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