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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、再び西の町に向かう02

夕方。

麓の町の門で衛兵に賊が出たことを報告する。

衛兵は明日の朝一番に急いで向かうと言っていたから、おそらく無事逮捕されることだろうと思ってややほっとしながら宿に入った。

ゆっくりと風呂に浸かり、気持ちを切り替え、寝床に向かう。

(これから定期便が往来するようになると考えると、ああいう危険地帯の芽は摘んでおいた方がいいだろうな。西の町に着いたら伯爵に近郊の貴族に言って道の警備を強化して欲しいと軽く依頼しておくか。道の安全を守るのも貴族様の大事なお役目の一つだろうしな)

そんなことを考えていると、少し目が冴えてきてしまったが、私はまた気分を整えるように軽く深呼吸すると、なんとか落ち着いて眠りに入っていった。

翌朝。

また西に向かって進路を取る。

この先、しばらくは街道も太く平穏な旅が続くだろうと思っていたが、案の定なんの危険もなく十五日ほどが過ぎた。

少し大きな町に入り、そこで馬車の整備を兼ね、一日休みを取ることにする。

私はゴバッツさんとニールを誘い、みんなで飯を食いに行くことにした。

「まだ旅の途中だから六人で小金貨三枚までな」

という私の言葉を聞き、ゴバッツさんが「?」という顔になる。

私が苦笑いでサーニャの笊っぷりを披露すると、サーニャが少しむくれたふりをし、ニールが、

「酒豪が多いドワーフでもそんな飲み方する人滅多にいませんよ」

と言って驚いたような顔をしていた。

「おそらく全世界を見ても、こんな酒飲み滅多にいないだろうな。しかし、サーニャの偉いところは普段はちゃんと自制できているところだ。酒は飲むが酒に飲まれることはない。そういう意味でサーニャは筋金入りの酒飲みだな」

私がそう言うとサーニャがいかにもなドヤ顔で、

「えっへん!」

と胸を張ってみせる。

その様子を見てみんなが笑顔になり、わりと賑わっているらしい居酒屋に入っていった。

「やっぱり、ここまでくるとドワーフの里とはずいぶん味付けがちがいますね」

「はい。なんていうかすごく穏やかな味がします」

と言うゴバッツさんとニールに、

「味が物足りなければソースかなにかもらうか?」

と言うが、ニールが、

「いえ。これも旅に慣れる練習だと思って我慢します」

と言い今後の旅に意欲を持っているようなことを言ってきた。

「そうか。しかし、あまり無理をするなよ。ちなみに、西の町は冒険者が多いからドワーフの里みたいにこってりした味の料理を出す店が多い。量も大盛りにしてくれる店がたくさんあるから、安心してくれ」

「それは助かりますね。楽しみにしています」

にこやかに話し、楽しい食事会が進んで行く。

ゴバッツさんとリズから南の町のことや商売をする上での心意気のような話を熱く語りあっているのを見て、

(どの世界も一緒だ。情熱を持って働く人間が少しずつ世界を変えていく。そういう人達を支えられているのだとすれば、それが私がこの世界にいる意味なんだろうな)

と思いながら頼もしいような微笑ましいような気持ちでビールを飲んだ。

気持ちよく食事を終え、楽しい気持ちで宿に戻る。

そして、次の日は一日ゆっくりと体を休め、翌日、私たちはまた旅の空に戻っていった。

それからは一度森の中を通る道でゴブリンの襲撃を受けたくらいで順調に進んでいく。

私は馬車が持つかどうかということを一番懸念していたが、ゴバッツさんが、途中こまめに整備を入れ、出し惜しみすることなく修理をした甲斐もあり、無事例のリザードマン騒動があった町まで到着した。

ここまでくれば西の町へは四、五日ということになるが、その行く手には湿地帯という難所が待っている。

私たちは一応道の状況を確認すべく、商業ギルドに向かった。

久しぶりに来た商業ギルドはそれなりに人がいるという状況で、私は、

(なるほど。全て通常通りに戻ったらしいな)

と感じ、少しほっとした。

受付に行き道の状況を尋ねると、二、三日前に雨が降ったので、まだ道がぬかるんでいるだろうとの情報を得た。

そこでゴバッツさんと話し、無理をせず一日休みを取ることにする。

ついでに、薬草のラーバンゴケは順調に入荷しているか? と聞くと、そっちも順調だということだったので、私はまた安心して宿に向かっていった。

翌日。

冒険者ギルドに顔を出してみる。

軽く依頼票を見て異常がないことを確認していると、

「アレンさん!」

と声を掛けられた。

誰だろうかと思って振り向くと、あの日、湿地帯の中で助けた若い冒険者たちの姿がある。

「ああ。お前たちか。たしか、リックとエルザとカッツだったな。元気だったか?」

嬉しい気持ちでそう聞くと、最初に声を掛けてきたリックが、

「はい。おかげ様で元気にしています。あの時は本当にありがとうございました!」

と明るい声を返してきてくれた。

「そうか。昨日商業ギルドで聞いたが薬草の出荷も順調らしいじゃないか。よかったな」

「はい。おかげで細々とですが、生活できてます。近いうちに西の町に戻ってなにか依頼を受けようかっていう話をしていたところなんですよ」

「ほう。そうか。そいつはいいな。ああ、こんなところで立ち話もなんだ。よければその辺でお茶でも飲みながら話さないか?」

「いいんですか!? ありがとうございます!」

流れでリックたちを誘いお茶をすることになる。

私たちは冒険者ギルドを出ると、リックたちがよく使っているという喫茶店に行くことにした。

そこで適当にお茶を頼み、さっそく話を始める。

リックたちはリザードマン戦を経験し、ずいぶん上達してきたのを感じているということで、そろそろ西の町の森に挑戦してみようという気になったのだそうだ。

そんなことを嬉しそうに報告してくるリックを見て嬉しくなりつつも、

「装備は万全にしておけよ。西の町はやたらと武器が高い。しかし、あの厳しい森の中で戦うならそれなりの装備が必要だ。最初は苦労するだろうが、ケチらずいい装備を手に入れるんだな」

と少し老婆心な忠告をした。

「そうですか。わかりました。でも、そこまで余裕があるか……」

リックが少し暗い顔になったのをみて、なんとも切ない気持ちになる。

せっかく縁あって知り合った若者が苦労する姿は見たくない。

そう思ってしまっている自分に、

(おいおい。お人好しのお節介焼きだな)

と思っていると、リズが、

「じゃあさ、私から武器買わない? 鋼鉄の剣が金貨一枚、盾が金貨一枚と小金貨五枚でいいよ。特別に卸値で売ってあげる。どう?」

と言ってくれた。

「えっと……」

そう言って、少し悩んでいるリックに、

「俺が言うのもなんだが、お買い得品だ。とんでもなく無理ならしょうがないが、少しの無理で手が届くなら買っておいたほうがいい」

そう言うとリックはコクンとうなずき財布を取り出した。

「毎度あり!」

リズが冗談ぽく言ってサーニャの魔法鞄から剣と盾を取り出す。

リックとカッツは真新しい武器を手に取り、子供のように目を輝かせていた。

「いいなぁ、新しい武器。槍は扱ってないんですか?」

と言うエルザに、リズが、

「ごめん。仕入れてきてないんだ。槍って意外と需要が少ないからね」

と言って申し訳なさそうに謝る。

私は少ししょぼんとするエルザに、

「弓はどうだ? 槍なら牽制役なんだろ? 弓も覚えておくと戦闘の幅が広がるぞ?」

と提案する。

その提案にエルザは少しぽかんとしたような表情を浮かべていたが、マイが、

「遠距離の牽制があると、前衛の戦闘がかなり楽になるのよ。覚えておいて損はないわ」

と後押しする。

その話を聞き、エルザは少し考えるような仕草を見せたが、そこにリックが、

「思い切って覚えてみようよ。金貨一枚くらいなら出せるからさ」

と声を掛けた。

そのひと声でエルザが決断する。

リズは嬉しそうに微笑みながら、

「毎度あり! 剣と盾も買ってもらっちゃったから特別に小金貨五枚にしてあげる。言っとくけど、これ仕入れ値なんだからね」

と言って弓と十本ほどの矢を渡した。

「ありがとうございます! 大切に使います!」

嬉しそうなエルザを見てみんなが微笑ましい表情を浮かべる。

私は、

(この金貨二枚の投資はきっと明るい未来を作ってくれるぞ)

と思いつつ、ゆっくりお茶をすすった。

リックたちと別れ、宿に戻る。

その日もまたゆっくり体を休めると、翌日、いよいよ私たちは西の町に向かって旅立っていった。

快晴の空の下、ゆっくりとした速度で馬車が進んでいく。

私は徐々に小さくなる町の姿に軽く目を細めつつ、

(がんばれよ)

と心の中で小さく声を掛けた。


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