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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、再びモノづくりをする

かなり痛い頭を抱えて起きる。

(いかん。飲み過ぎた……)

二日酔いの薬を飲んで食堂に向かうと、やはりマイも調子が悪そうだった。

「これ、薬な」

「ありがとうございます」

そんな挨拶から入り、和やかに朝食をすませる。

調印式は午後からということで、私とマイはゆっくりさせてもらうことにし、リズとサーニャは町をぶらついてくることになった。

(サーニャもそうだが、なにげにリズも酒、強いよな。羨ましいというかなんというか……)

そんなことを思いつつ、ベッドに横になる。

ベッドの上でぼーっとこれまでのことを振り返るが、楽しい思い出しか出てこない。

(ああ、本当に俺、青春しちゃってんじゃん)

と思って苦笑いしつつ、今度はこれからのことを考え始めた。

(明日からさっそく職人との打ち合わせが始まる。さて、何人くらいこの事業に参加してくれるだろうか? 最低でも三人できれば五人以上は欲しいところだが……。納期にはまだ余裕がある。しかし、すんなり完成品ができるとも思えん。参加する人数が増えると言うことは性能にばらつきが出る可能性もあるってことだ。最初に完成品ができたら厳しく検査してある程度の品質基準を作ってしまおう。その作業に長ければ三十日以上かかるか……。その間に一回くらい冒険に出てもいいな。そろそろサーニャが限界だろうし……)

長々といろんなことを考えていると、不意に部屋の扉が叩かれた。

「入っていいぞ」

「失礼しますね」

そう言って入ってきたのはマイだった。

「どうした? まだ痛むか?」

「ええ。そっちはどうにか。それより、これからのことでちょっと」

「もしかして、そろそろサーニャが限界って話か?」

「ええ。少し息抜きさせてあげた方がいいかなって。なんだかウズウズしてるっていうか、ムズムズしてるっていうか、そんな感じがしてたので」

「そうだな。それは俺も考えていたんだ。最近、サーニャとちゃんと遊んであげられてなかったなって」

「あら。その言い方じゃまるで娘と父親みたいじゃないですか?」

「ふっ。そうかもしれんな。サーニャはどこか子供っぽいところがあるからな」

「うふふ。否定はできませんね。でも、よかったです。アレンがちゃんとサーニャのことわかってくれてて」

「すまん。マイにも負担をかけたな」

「いえ。私は大丈夫ですよ。町をぶらつくのも楽しいですから」

「くれぐれも一人で町にでるなよ? また迷子になったら大騒動だ」

「まぁ、アレンったら!」

マイがわかりやすく怒ったふりをしたので私たちは笑い合い、せっかくなので私が胃に優しい薬草で作ったお茶を振舞い、世間話をしながらリズとサーニャが帰ってくるのを待った。

その日の昼食は宿の食堂でとり、

「今日も晩飯は豪華にいこう。ただし、俺は飲めないがな」

「あ。私も今日、お酒は遠慮しておきます」

「えー。じゃあ、私もいいや」

「あら。遠慮しなくていいのよ?」

「うーん。みんなと飲むのが楽しいんじゃん? だから今日は我慢するよ」

「ははは。サーニャは偉いな」

そんな言葉を交わしさっそくそれぞれに行動を開始する。

私とリズは職人ギルドに向かい、サーニャとマイはどこかにお茶をしに行った。

正式な調印式ということでかなり緊張したが、リズとベイニールさんが署名をしただけで、意外とあっけなく終わる。

リズと握手をしながらベイニールさんが、

「お互いいい商売になりそうですね」

と声を掛けると、リズも嬉しそうに、

「これからこの町が発展していくのが楽しみです」

と正直に答えていた。

契約書と聖銀貨を受け取り、さっそく宿に戻って伯爵様に手紙を書く。

内容はいたって簡素なもので、交渉が成功したこと、剣の売値が一本金貨二枚になること、グルワッツ商会という大手商会が流通網を築いてくれることなどを列挙した。

ついでに、ドワーフの里では薬が高いから帰りの荷は薬を仕入れて帰りたいとグルワッツ商会が希望していることを書き足す。

そして、それについては薬師ギルドと契約を結ばせたいから、是非調整をお願いしたいと依頼しておいた。

夕闇迫る中、冒険者ギルドに行き、「急ぎで頼む」と手紙を預ける。

料金に金貨一枚もとられてしまったのに、

(やはり流通だよなぁ、この世界の弱点ってのは)

と改めて感じ、また急いで宿に戻っていった。

翌日。

さっそくグルワッツ商会の倉庫を訪れる。

そこで量産品の剣、百十本を仕入れると金貨二十二枚を支払って、いったん職人ギルドの倉庫に持ち込んだ。

そこにエドバンさんが五人の職人を連れてやってくる。

その中には会合の時、一番に意見を言ってくれた女性職人の姿もあった。

「こいつらが引き受けてくれるってよ。とりあえず、五人もいりゃなんとかなるか?」

「ありがとう。おそらくなんとかなると思う」

「そっか。じゃあ、さっそく練習だな」

そう言って、まずは五人の職人に二本ずつ試し打ち用の剣を渡す。

「要点は二つだ。まず硬さと粘りを増して耐久性を上げること。そして、バラツキのある重心の位置をきっちりそろえることだ。重心の位置は少し剣先よりがいいだろう。その方が、弱い力でも強い斬撃が打てるからな。魔獣戦では重宝するんだ」

そう言って職人たちを見ると、職人たちはさっそくなにやら話し合い始めていた。

「今日はエドバンさんにも手伝ってもらってこの職人ギルドにある研修用の炉を使わせてもらおう。エドバンさん見本を見せてもらってもいいか?」

「おうよ。一回で決めるからよく見とけよ」

そう言ってエドバンさんが職人たちを連れて職人ギルドの裏手にある工房に向かう。

そこには研修用の小さな炉があり、エドバンさんがさっそく炉に火を入れ、実際の作業を始めてくれた。

「いいか。炭の色をしっかり覚えておけ。この白っぽい色が全体に出てくるまでしっかり熱を上げるんだ」

とか、

「重心の位置を意識して槌を振れよ。きっちり魔力を込めるのも忘れるな。ここで、手を抜いたらただのガラクタを作って終わりになっちまうからな」

などと説明しつつ作業するエドバンさんを見て、

(さすが、職人だな。一連の動作に無駄がない。みんながこれを手本に作業してくれれば、きっといいものができあがるぞ)

と確信する。

職人たちもこの際、憧れの先輩の手並みを盗んでやろうというような目で真剣にエドバンさんの姿を見つめていた。

やがて、剣が打ちあがり、

「ほれ、アレン。軽く振ってみろ。ああ、熱いから気を付けてな」

と言われ、出来立てほやほやのまだ熱を帯びた剣を手に取る。

言われた通り軽く振るが、重心の位置は理想的で、私は、

(これなら金貨二枚の価格設定はいける。もしかしたらそれに小金貨五枚くらい上乗せできるかもしれんぞ。そのくらいの価値はある)

と思った。

その後、集まった職人が各々にエドバンさんが打ち直した剣を持ち、感触を確かめていく。

「明日はとりあえず、最初の一本を打ってみてくれ。私が品質の確認をしてから続きに取り掛かってもらう。この町の今後を占う大事な仕事だ。みんなすまんが気合を入れて頑張ってくれ」

「おう!」

そんな職人たちの気持ちのいい返事をもらい、安心して宿に戻る。

安心してベッドに横になり軽く目を閉じると、ささやかな充実感が胸に広がった。

(明日が楽しみだ。明日を乗り切れば少し時間ができるからサーニャを冒険に連れ出そう。あまり遠出はできないからきっとゴブリンやオーク程度になってしまうが、美味しい野営飯を作ってやればきっと満足してくれるはずだ。サーニャは生姜焼きが好きだからな。美味しいオーク肉でたっぷり作って生姜焼き丼にしてやるか。ふっ。楽しみだ)

そんなことを思っているうち、やや疲れた体にふわふわとした眠気が下りてくる。

私はその眠気を自然と受け入れ、軽く頬を緩めながらゆったりとした気持ちで眠りに落ちていった。


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