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おっさんAは転生してもやっぱりおっさんAだった。  作者: タツダノキイチ
第一部

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5/5

おっさんA、元騎士の行商人と出会う01

妙な行きがかりでマイを仲間に加えた私たちはとりあえず町に戻る。

さっそくギルドに寄って依頼を完了させると、ギルドの酒場に場所を移し、次はどの町に行くかの検討をし始めた。

「とりあえず南にいってみない?」

「そりゃまたどうしてだ?」

「うん。十日くらい行ったところに、けっこう大きな町があるでしょ? あと、その先には海があるからさ。そろそろ海鮮が食べたいと思って」

「ははは。そりゃなんともいい理由だな。よし、南に行くか。マイはどう思う?」

「私も行ってみたいです。実は海、見たことがないんですよ」

「お! ならちょうどいいね! 海鮮も食べてみるとけっこう美味しいよ」

「はい。楽しみです」

ということでさっそく行き先が決まる。

「そうなると、今日は一日休んで明日が買い出し、明後日が出発だな」

「そうだね。じゃあさっそくマイの歓迎会と行こうか!」

「それはいいが、今回は、飲み過ぎるなよ?」

「えー……」

「三人で小金貨一枚までの範囲な」

「それじゃ、ビールくらいしか飲めないじゃん!」

「明日もあるんだから、今日はそれで我慢しろ」

「はーい……」

という私とサーニャのやり取りに、マイが、

「サーニャさんってそんなに飲むんですか?」

と不思議そうな顔をしながら、素直な疑問を差し挟んできた。

「ああ。飲むなんてもんじゃない。笊だな。笊」

「ちょっとそれってひどくない? あれでも、ちゃんと味わって飲んでるんだから」

「それにしても飲み過ぎだ」

「ちぇっ」

と悪態を吐きつつもサーニャの表情に怒りはなく、どこか楽しそうにしている。

おそらく自制しようと思えばできるタイプの酒飲みなのだろう。

私は密かにそんなことを思いつつ、

「じゃあさっそく飲み始めるか。ビールでいいよな?」

と二人に聞いた。

「はい。あ、でもできればワインの方がいいです」

「お。いいね!」

「じゃあ、一番安いやつな」

「えー!」

「小金貨一枚だぞ?」

「……そうだったね」

と、また念を押すように言い、一番安いワインと適当なつまみを注文する。

サーニャは本当に自制できるタイプの酒飲みらしく、その日は酒より食い物という感じで豪快にピザや骨付きのから揚げを口に放り込んで満足そうな表情を浮かべていた。

「いやぁ、食った食った。でも、どこか物足りない感じがするんだよねぇ」

「え? あれだけ食べてまだ入るんですか?」

「ん? ああ、まぁね。ていうか物足りないのは量じゃなくて味かな? マイもアレンの料理を食べたんだから、そう思わない?」

「ええ。まぁ、それはたしかに……」

「ふっ。お褒めにあずかり光栄だ」

「アレンはもう少し自分を高く見積もった方がいいよ。アレンの料理はどこに出しても恥ずかしくないんだからさ」

「そうか? まぁ、ありがとうな。これからもそのご期待に沿えるようせいぜい美味い物を作るさ」

「えへへ。お願いね」

「ええ。よろしくお願いします」

「おうよ」

と気楽に話しながら宿に向かい、それぞれの部屋に入る。

私は適当に風呂を済ませると、その日はちょうどいい感じのほろ酔いでベッドに入った。


翌朝。

ゆっくりと朝食を取り、昼前から市場に買い出しに行く。

「ねぇ、アレン。収納は任せてもらっていいからさ。美味しいご飯がたくさん食べられるようなのを選んでよ」

「そうか? じゃあ、お言葉に甘えよう。しかし、魔法鞄なんて高価な物があると本当に便利だな」

「そうだよね。でも、これって知り合いのコネで安くしてもらったからそこまで高くなかったんだよ」

「そうなのか? それは羨ましいな。ちなみにどのくらいしたんだ?」

「うーん、たしか聖銀貨二、三枚かな?」

「ぶはっ! おいおい。そりゃすごいな……。そんだけあれば街中にちょっと豪華な一軒家が建つぞ」

「まぁね。無制限で時間停止付きだって言ってたから、本当はもっと高いらしいよ?」

「ああ。そうだな。相場は知らんが、そんな機能付きなら本来そんな値段じゃ買えないだろうぜ」

「ええ。おそらく国の軍隊とかが国家予算で買う物ですわよ」

と驚きつつ、遠慮なく食材を選んでいく。

(新鮮な野菜が買えるってのはいいな。しかし、なにがあるかわからんから、いつもの乾燥食材も仕入れておこう)

と考えつつ、適当な店での昼食を挟み、店を回りテキパキと買い物を済ませていった。

そして、夕方前。

無事買い物を終え、いったん宿に戻る。

「アタシたちせっかくだから銭湯に行こうって思ってるんだけど、アレンもどう?」

「ん? ああ、そうだな。たまには大きい風呂もいいかもしれん」

「じゃあ、荷物を置いたら宿の玄関に集合ね」

と決まり、適当に準備を整え宿の廊下でしばらく待っているとサーニャとマイが連れ立ってやってきた。

そろって銭湯に向かう。

「たぶん、俺が一番早いだろうから、上がったらこの待合室で待ってるよ」

「了解」

と話してさっそく風呂場に向かうと、久しぶりの大きな風呂にゆっくりと浸かり、

「ぬっはぁ……」

と、いかにもおっさんらしい声を漏らした。

やがて十分に体が温もったのを感じ、風呂から上がる。

待合室に入ると、そこにはまだサーニャたちの姿はなかった。

とりあえず、牛乳を買って飲み、

「ぷはぁ……」

と息をつく。

そして、半分ほど飲んだ牛乳瓶片手に適当なベンチでのんびりしていると、

「お待たせ。あ、私も牛乳飲みたい!」

「あら。いいですね。じゃあ私も」

と言いつつ、サーニャとマイが風呂から上がってきた。

二人とも牛乳を飲みつつ、なんだかきゃっきゃと話しているから、きっと親睦が深まったんだろう。

そんなことを思いつつ二人を微笑ましい目で見つめる。

やがて、私も残りの牛乳を一気に飲み干し、「どっこらしょ」と腰を上げた。

その後、適当な飯屋で飯を済ませ、宿に戻る。

明日は朝一番に町を出ようという話をしていたので、さすがに酒は止めておいた。

そして翌日。

さっさと町を出る。

次の町に行くついでに護衛の依頼を受けてもよかったが、今のところ路銀にも余裕があるし、のんびり行こうという話になっていた。

街道を進みつつ、世間話をする。

マイは本当にずっとエルフの里から出たことがなかったらしく、見るものすべてが珍しいと感じていたんだそうだ。

「お肉屋さんにたくさんの種類のお肉が売ってるのもけっこう衝撃的でしたし、見たことのないお野菜もたくさんありました。それに、料理が全部辛くないっていうのも衝撃的だったかもしれません。なにしろエルフの料理は全般的に辛いですから」

と楽しそうに話すマイの話を聞きつつ、のんびりと旅は進んでいく。

そして、次の町にたどり着いたところで、その日ものんびりとした気持ちで宿に入った。


翌日も朝から町を出る。

そして昼過ぎ。

狭い登りの道を歩きつつ、

「たしか、この先は大きな街に続く峠だったな」

「うん。他に道がないからお貴族様もしかたなく使うらしいよ」

「そうなんですね。じゃあ前の町でちゃんと探せば護衛の依頼とかあったかもしれないですね?」

「別にいいんじゃない? のんびり行きたい気分だし」

「そうだな。路銀には余裕があるから、大丈夫だぞ」

「それにしても人の気配がありませんね。どうしたんでしょう?」

「どうしたんだろうな? 朝はけっこうな数の隊商が出て行っているように思えたが……」

「そうだね。でも、なんだか急いでる感じだったから、なにかあったのかもよ?」

「とりあえず、気を付けて進んで行こう。油断はするなよ?」

「りょうかーい」

と話していると、やがて峠の頂上かというところで、なにやら戦闘をしているらしき音が聞こえてきた。


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