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おっさんAは転生してもやっぱりおっさんAだった。  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、迷子のエルフと出会う02

辺りの気配に注意しながら森を進み、ようやくそれらしい痕跡を見つける。

「けっこういるみたいだな」

「そうだね。五匹ってとこ?」

「そうだな。手分けしてやるか?」

「うーん。そうだね、その方が早そうだし」

「よし。じゃあ一匹受け持とう」

「了解」

と話しているところに、エルフの少女が、

「あのー」

と遠慮がちに声を掛けてきた。

「なんだ?」

「あ、はい。五匹くらいならお任せいただけないでしょうか? あの、助けていただくお礼なので、素材はそちらがとっていただいていいですから」

「いや。それはいくらなんでもいかん」

「そうだよ。それはさすがに……。ねぇ?」

「そうですか? あの、本当に一瞬で終わりますから。こう見えて私弓は大得意なんです」

「ほう。弓使いだったのか。まぁ、いい。とりあえず遠方から狙ってみてくれ。もし撃ち漏らしがあればこちらで対応する。サーニャもそれでいいか?」

「うん。お手並み拝見ってことかな?」

「ありがとうございます。頑張りますね!」

という感じで作戦が決まり、さっそくオークのもとへと向かう。

やがて見えてきたオークは森の中にあるちょっとした草地で何かを貪っているように見えた。

「相変わらずキモイね」

「ああ。で、大丈夫か?」

「あ、はい。すぐに片付けちゃいますね」

「おう。頼んだぞ」

と軽く言葉を交わしエルフの少女にその場を委ねる。

それでも私は油断なく剣を抜き、もしもの時に備えた。

エルフの少女が弓を構える。

矢はつがえていない。

(ほう。魔道具か……)

と思い少し感心していると、私の横でものすごい量の魔力が一気に膨れ上がった。

(おいおい。こりゃすごいぞ……)

と思って見ていると、エルフの少女の頭上に無数の光り輝く魔法の矢が浮かぶ。

そして、少女が何かをぼそっとつぶやき弓を放つと、その魔法の矢はものすごい勢いでオークに向かっていった。

矢は過たずオークの体に突き刺さっていく。

そして、オークは叫ぶ暇もなくその場に倒れ伏した。

本当に一瞬で終わった戦いに唖然としつつ、エルフの少女の方を見る。

エルフの少女はいかにも「ドヤ」というような顔をしていた。

そんなエルフの少女にこちらは苦笑いを浮かべる。

「お疲れさん。すごかったよ」

と正直な感想を言うと、エルフの少女は、

「はい! お役に立ててうれしいです!」

と満面の笑みでそう返してきた。

さっそく倒れたオークの元に近寄り、状態を確認する。

どのオークも頭部を中心に急所を撃ち抜かれ一瞬で絶命していた。

「ヒュー。すっごいね」

「ああ。なかなかのものだ」

「さっさと回収しちゃおうか」

「いや。先に私たちが食う分を剥ぎ取ろう」

「あ、そうだったね。どの部分がいい?」

「そうだな。とりあえず肩肉でいいだろう。今夜は生姜焼きでいいか?」

「それ最強!」

というサーニャの言葉で今夜の飯が生姜焼きに決まる。

そして私たちはさっさと食べる分を回収し、残りはサーニャの魔法鞄に収納させてもらった。

「いやぁ、これでやっと宿代が返せるね」

「ふっ。ああ。そうだな」

と言いながらその場を離れ、町に戻る方向に少し進む。

そして、森に差し込んでくる日の光がずいぶんと赤みを増してきたのを見て、適当な場所で野営の準備に取り掛かった。

「あ。お米くらいなら炊けます!」

「お。そうか。じゃあ頼む。けっこう多めでな」

「了解です」

とエルフの少女に手伝ってもらいながら、手早く生姜焼きを作っていく。

ジュージューと音を立てる肉たちにこれでもかというくらいのショウガとタレをさっと絡ませ、あっという間に生姜焼きが完成した。

「ほれ。できたぞ」

「待ってました!」

「あらまぁ、とっても美味しそう」

「そうだよ。アレンの料理はとびっきり美味しいんだから!」

「まぁ、それは楽しみです」

「ははは。能書きはいいからさっさと食うぞ」

「はーい。いただきます!」

「「いただきます」」

と声を揃えてさっそく肉を口に放り込む。

ツンと効いたショウガの香りと甘いタレが絶妙に絡み合い、少し厚めに切った豚肉のうま味と相まって、それは問答無用で私に米を頬張らせた。

「美味いっ!」

「ええ。とっても美味しいです!」

「止まんないね!」

「ええ。お米がどんどん進んじゃいます!」

と単純だがなんとも嬉しい言葉を聞きさらに嬉しくなってまた米を頬張る。

そして私たちはパチパチとはじける薪の軽やかな音を聞きながら、楽しい夕食の時間を過ごした。

食後のお茶の時間、

「そう言えば、名前を聞いてなかったな。私がアレンでこっちがサーニャだ」

「あ。申し遅れました。私マイって言います」

「マイな。短い間になるがよろしく頼む」

「はい。こちらこそご迷惑をおかけします」

と大人らしく丁寧に自己紹介を交わす。

そんな私たちの周りに漂っていた、大人の空気を突き破るようにサーニャが、

「ねぇねぇ。マイはどうして冒険者になったの? あんなに方向音痴なのに」

といきなり核心を突くような質問をした。

(いや。たしかに気にはなるが、いきなりそれを聞くか?)

と思いつつ私もマイに視線を向ける。

するとマイは少し恥ずかしそうにうつむき、

「あの……。家出なんです」

と答えてきた。

「家出!?」

と驚く私にマイは慌てたように手を顔の間で振り、

「あ、あの、家出っていっても私ちゃんと成人してますからね? なんていうか、その、里の風習みたいなのがあって、それで聖魔法を使える人間は里の巫女にならなくちゃいけないっていうのがあるんですけど、私それがいやで飛び出してきちゃったんです」

と事情を説明し出す。

そんなマイの話を聞いてサーニャが、

「え? 聖魔法って伝説の? それってすごいことなんじゃない?」

と私同様驚きの顔でマイの方を見た。

「あ、いや。あれってただの伝説なんですよ。あれですよね? 傷を一瞬で直すとか、死にかけの人を蘇生させるとか……。ああいうのじゃないんです。聖魔法って。実際の聖魔法はちょっと元気のない人の体力を回復したり、魔獣の血を払ったり、あと、使い方によっては魔獣を弱体化させたりすることができる魔法のことで、あんまり使いどころがないっていうか、そんなに便利なものじゃないんです」

「いや。それでも十分すごいと思うが……」

「うん。魔獣の弱体化なんてできるんだったらどのパーティーからも引く手あまたでしょ?」

「……それが、あんまり言ってないんですよね。聖魔法が使えるってバレたら里の人に連絡がいっちゃうかもですし、それに、なんかそういうのってよほど信用できないと言っちゃダメな気がしてて……」

「そうか。しかし、良かったのか? 私たちには話してしまったが」

「あ。はい。アレンさんとサーニャさんは言いふらしたりしなさそうだなと思ったので、つい……」

「あはは。それはたしかにそうだね」

「ああ。その辺りは信用してくれて構わない」

「それにしても、これからどうすんの?」

「はい。今まで護衛の仕事とかを受けてきたんですけど、それだとどうしてもゆっくり世界を見て回れないって感じてたので、思い切ってソロで活動してみたんですけど、結果、このザマでして……」

「ふーん。そっかぁ……。じゃあさ、当面の間マイも一緒に行動しない? 私たちと一緒なら三食アレンの美味しいご飯が食べられてのんびり旅ができるよ?」

「おい。それは……」

「いいじゃん! 旅は道連れ世は情けって言うんだし、これも何かの縁だよ」

「いや。そもそも私はサーニャと行動を共にするとは言ってないんだが……」

「え? 嘘。違ったの?」

「ああ。聞いてないな」

「あちゃー。言ったつもりでいたんだけどなぁ。そっかぁ、じゃあ、改めてお願いするけど、しばらく一緒に行動しない? 荷物なら私がたんまり持てるからアレンも仕事がしやすくなるし、私も美味しい料理が食べられてお互いいいことずくめじゃん? それにマイの弓が加わればどんな魔獣でも相手にできそうだし、安全性もより高まると思うんだ? どう? 楽しそうじゃない?」

「いや。まぁ、それはそうだが。いいのか? こんなおっさん足手まといだろ?」

「何言ってんの。アレンが足手まといなら世界中の九割以上が足手まといだっての」

「そうか。ならいいが、マイはどうだ?」

「あの。とっても嬉しいです。でも、私の場合、この方向音痴のせいで本当に足手まといになってしまう可能性がありますから……」

「あはは。さすがに私たちについてくるだけなら迷子にはならないでしょ?」

「ええ。まぁ……。本当にいいんですか?」

「うん! 私は大歓迎だよ!」

「ああ。俺も歓迎だ」

「……うぅ……。ありがとうございます! 本当は不安だったんです。本当にひとりでやっていけるかどうかって。だから、本当にありがとうございます!」

と最後はなぜか泣き出してしまったマイをサーニャが慰めるという形で話がまとまる。

こうして、私たちは当面の間行動を共にすることになった。


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