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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、西の町に着く02

盾、普通の剣、量産品の弓、高級ナイフを用意してそれぞれに客の反応を見る。

普通の鋼鉄製の剣を一本金貨一枚と小金貨五枚に設定したが、それに対する客の関心が強い。

客が引いた時を見計らって、リズが、

「この感じだと、値引きしたらけっこう売れるかもね」

と言ったが、

「いや。安易な値引きはまだしない方がいいだろう。おそらく冒険者ギルドに卸す時不利になる」

と話し、値段は下げないことにした。

その後もぽつぽつと客が来て、中堅と思われるけっこうしっかりした装備の冒険者が、さんざん悩んだ挙句、金貨二枚と小金貨一枚で盾を買ってくれた。

「くっ。この出費は痛ぇ。しかし、こいつは長年使えそうないい盾だ。こういう品はこの町じゃもっと高いからな。お値打ち品っちゃぁお値打ち品なんだろうよ」

「ええ。ドワーフの里で職人が丁寧に作ったものですから、品質は確かです。なにしろバグベアの投石を難なくはじき返してへこみ一つ作らない逸品ですからね。いいお買い物ですよ」

そう客ににこやかに対応するリズを見て、

(さすが商人だ。きっちりこの盾の良さを端的に売り込んでる)

と思いつつその冒険者の格好を改めてみる。

けっこうしっかりした装備だと思っていたが、よく見るとそれなりに傷みがきているように思えた。

「ところで、この町の武器屋で防具一式を買うといくらくらいになるんだ?」

と何気なく話しかける。

「ん? ああ、あんたも冒険者か。そうだな。たぶん他の町よりちょっと高いぜ。なにしろこの辺じゃ金属が取れねぇからな。それでみんな仕方なく魔獣素材の防具を使ってるんだけどよ。それもけっこうな値段がしやがるから、こうして傷みがくるまで使い込むのが普通なんだ」

「ほう。それでそんなに年季が入っているんだな」

「おう。もう十年になるからそろそろ買い替えかと思っていたが、この盾を買っちまったからなぁ……。防具は少し諦めて騎士団様のお下がり品でも買うことにするさ」

「騎士団が防具を市場に出すのか?」

「ああ。他の町じゃどうか知らねぇが、この町じゃ普通だぜ。もちろん下っ端が使うやつだけどよ。そこから紋章を抜いたり、打ち直して形や色を変えたりしてそれなりに作り替えるんだ。たぶん金属が貴重な町だからそういう仕組みができたんじゃねぇか?」

「なるほど。賢い再利用方法だな」

「ああ。騎士団は騎士団で、中古品の下取りがあるから財布が少しは潤うし、町の防具屋もそれで商売ができるからな。わりと人気なんだよ」

「ということは、剣や盾も中古品があるのか?」

「ああ、あるぜ。つっても本当にいい剣や盾は出てこねぇな。出てくるのはやっぱり下っ端の騎士が使う安物とか練習用の剣とかだけだ。そういうのは新人の冒険者が買って使ってるよ」

「ほう。そいつは良いことを聞いた。ありがとうな」

「へっ。どうってことねぇさ。兄ちゃんたちも商売頑張りな」

「ああ」

そう話して去っていく冒険者の背中を見送っていると、リズが、

「その話、どういうこと?」

と聞いてきた。

「ああ。騎士団が中古品を流してるってことはそれなりに武器の買い替え需要があるってことだ。ってことは騎士団に武器を卸している仲買人とかに話を持っていけばそれなりの高値で買い取ってもらえるかもしれんと思ってな。まぁ、ダメ元で一度行ってみるくらいのことはしてもいいかもしれんぞ?」

「そっか。でもそういうところってぎっちり網が出来てて横から入りづらそうな印象なんだよね。そう上手くいくかな?」

「ああ、そっか……。上手いことつながりが作れればいいだろうが、今日のあの商業ギルドの対応を見てるとそう簡単には行きそうにないな」

「だよねー。はぁ、商売って難しいね」

「ははは。そうだな。ここは地道に頑張ろう」

そんな話をしているうちに夕方になる。

結局その日売れたのは剣が一本と盾一つだった。

翌日も同じ場所で商売に励む。

その日は前日よりも少し多くの客が来たが、若手の冒険者は一目見たもののため息を吐きながら帰っていく者が多かった。

それでも、鋼鉄の剣が三本と量産品の弓が二つ売れる。

「昨日より売り上げたね」

「ああ。冒険者の実情が分かったような気がするよ」

「というと?」

「この町じゃ武器が高い。だからちゃんと大切に使おうってやつが多いんだ。だからみんな商品選びに慎重になる。特に露店の武器商を覗くような若手から中堅にかけての冒険者にはその傾向が強いんだろう。おそらく冒険者ギルドにまとめて買ってもらって上級冒険者に売ってもらう、ってのが当たり障りのない正解だろうな」

「そっか。やっぱりそうなるよね」

「ああ。しかし、騎士団に納入するって道も途絶えたわけじゃない。明日一日露店をやってみたあとはその仲卸業者ってのを聞き出して売り込みに行ってみよう」

「だね」

そう話してその日は終わり、私たちは宿に戻っていった。

翌日。

露店最終日。

やはり客は来るものの売り上げは渋いという状況に苦笑いを浮かべていると、そこに冒険者とはちょっと違う身なりをしたガタイのいい男性がやってきた。

「ほう。こんなところで武器の露店とは珍しいな。ちょっと見ていいか?」

「ええ。どうぞ。この町には初めてきた新規の行商人なんです。見ての通り私はドワーフですから、きちんとドワーフの里から仕入れてきたものを扱っておりますよ。品質もかなりいいですから、実際に手に取ってお試しください」

「そうか。じゃあ、ちょっと触らせてもらおう」

そう言って男性が剣を手に取る。

すっと構えたその男性の立ち姿を見て、私は、

(ほう。只者じゃないな)

と素直に感じた。

「なかなかいいな。そっちの盾もいいか?」

「ええ、どうぞ。バグベアの投石にも耐える逸品ですよ」

「ほう。そいつはすごい」

今度もその男性は慣れた感じで盾を構える。

軽く取り回しを確認しているようだが、その動きに無駄がない。

やはり私は「只者じゃない」と感じつつ、その様子を見ていた。

「いいな。いくらだ?」

「はい。鋼鉄の剣が金貨一枚と小金貨五枚。盾が金貨二枚と小金貨一枚です」

「ほう。やはりけっこうするな。しかし、この品質ならむしろ安いほうだろう。わかった。もらおう」

値段にやや躊躇はしたものの渋ることなく買う男性を見て、ほんの少し違和感を覚える。

(冒険者じゃなさそうだ。となれば騎士だろうが、なんで騎士がこんなところに?)

そう思っていると、男性がリズに、

「この店はいつまでやっているんだ?」

と何気なく聞いてきた。

「すみません。市場調査も兼ねた露店なんで今日までなんです。しかし、この町にはしばらくいるつもりですから、宿にご連絡をいただければ追加もお売りできますよ」

「そうか。もしよければ仲間にも見せてみよう。もしかしたら連絡するかもしれん。ちなみにどこの宿だ?」

「はい。町の端にある『六花亭』という小さな宿です。おわかりになりますか?」

「ああ。あの宿なら知っている。わかった。もし何かあれば連絡させてもらおう」

「ありがとうございます。お待ちしております」

そんなやり取りをして男性が去っていく。

そんな男性の後姿を見ながら、リズが、

「何者かな? 騎士?」

と聞いてきた。

「うーん。あの剣の構え方や盾の扱いからして、そうだろうと思うが、しかし、こんな店で剣と盾を買う理由がわからん。いったいどういう人なんだろうな?」

「元騎士だけど、つい最近辞めて冒険者に転職しようとしてるとか?」

「いや。それはないだろう。かなり身なりがきっちりしてたから、下っ端じゃない。そんな人が冒険者に転職はないな」

「だよねー」

そんな話をして軽く笑い合う。

そして、その日も無事剣三本と盾ひとつ、それに弓三本を売って商売が終了した。

屋台をたたみ、商業ギルドに返しに行く。

ついでにギルドに行き、受付でリズが、

「この町の騎士団に武器を卸している仲買人のお店を紹介していただけませんか? 武器を売り込みに行きたいんです」

と聞くと受付嬢は淡々とした顔で、

「おそらく紹介状がなければ話も聞いてもらえませんよ? 正式な紹介状はこの町のギルドに商人として登録しないと発行できません。それでも、発行に一か月はかかりますが、どうされますか?」

と逆に聞き返してきた。

「……それは時間がありませんわね。かしこまりました。お店の名前だけ教えてください。あとは自力でお話いたしますので」

リズがそう言うと、受付嬢はあくまでも事務的な対応で、

「ギルベルト商会というお店です」

と答えてくる。

私はそれを傍で見ていて、

(ああ、こりゃダメだ……)

と思ったが、リズがあくまでも笑顔で、

「ありがとうございました」

と言ったので、顔には出さず、ただ淡々とリズと一緒に帰っていった。


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