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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、緊急討伐に参加する05

「ギシャァァッ!」

突如戦場にリザードマンの大きな叫び声が響き渡る。

すると周りの茂みから突如五匹ほどのリザードマンが姿を現し、サーニャに向かって走ってきた。

すぐにサーニャの後につき、

「背中は任せろ!」

と声を掛ける。

サーニャはいつも通り、

「よろしく!」

と言ったが、珍しくやや息が上がっていた。

(サーニャもそれほど余裕があるわけじゃなさそうだな。これは早めに勝負をつけないと……)

そんなことを考えつつ、おそらく伏兵として潜ませておいた最後の戦力を迎え撃つ。

私はなんとか残りの体力を振り絞って刀を振り、サーニャの背中を守った。

「ありがと!」

サーニャの短い言葉で自分がなんとか役目を果たせたことを悟る。

そして、統率個体に向け、駆けていくサーニャの背中に、

「あとは、頼む!」

と声を掛けた。

初めて見た統率個体の異様さに目を見開く。

通常大きくても二メートルに届かないほどであるはずのリザードマンとは違い、その個体は明らかに三メートル近くの身長を持っていた。

顔を含む全身に傷があるから、これまでいくつもの戦場を生き残ってきたのだろうということが容易に想像できる。

おまけにそのリザードマンは冒険者から奪ったであろう粗末な剣すら持っていた。

(なんて化け物だ……)

率直にそう思う。

そこへリズとマイがやってきた。

「なにあれ!?」

「あれが統率個体なんですか?」

やはり驚く二人の声を聞きつつサーニャの戦闘を見守る。

マイから魔力の気配を感じるから、おそらくここぞと言う時のために、魔法の準備をしてくれているのだろう。

しかし、その心配は結局杞憂に終わった。

ものすごい勢いで振り下ろされたリザードマンの剣をサーニャがひらりと飛んでかわす。

統率個体の剣が強烈に地面をえぐった。

バシャッと泥が舞い上がる。

しかし、サーニャはまるでそんなことを気にしないかのように立ち回ると、統率個体の剣を何度もかわし、一瞬の隙をついて、懐に入り込んだ。

サーニャの大剣が統率個体の足を斬る。

片足をなくして倒れた統率個体の首にサーニャが素早く大剣を突き立てた。

(おいおい。本当に二発で倒しちまったよ……)

と少し引きつった笑顔を浮かべる。

そんな私たちに向かってサーニャが、いかにも「ドヤ」という顔で、軽く右手の拳を突き上げて見せた。

「すごいっ!」

「やったね、サーニャ!」

そう言って軽く駆けていくリズとマイの後を歩いてついていく。

ともに喜び合い、ハイタッチを交わす三人の輪に私も混ざると、私も軽くハイタッチを交わした。

「アレン、お疲れ」

「本当に疲れたよ」

「あはは。アレン、おっさんだもんね!」

「ああ。歳には勝てんな」

「でも、今回誰もケガをしなかったのはアレンのおかげだと思いますよ」

「そうか? まぁ、当初の目的はなんとか達成できたな。俺の腰がちょっと痛いのを除いてだが」

「うふふ。町に帰ったら聖魔法で回復しますね」

「いや。それよりゆっくり風呂に浸かった方が効きそうだ。それより、みんな。まだ気を緩めるなよ。帰りは残党狩りが待ってるからな」

「「「はーい」」」

「よし。とりあえず今日はこの統率個体を軽くばらして収納したら飯にしよう。いい加減腹が減った」

「アタシもお腹ペコペコ。なんだか、がっつりお米の気分!」

「そうだね。私も味の濃いのが食べたいよ」

「うふふ。じゃあ私もそれで。アレン、なにを作るつもり?」

「そうだな。焼肉丼なんてどうだろう? タレをたっぷりかければ濃いめの味でがっつり食べられる」

「いいね! じゃあ収納はやっとくからさっそく作ってよ!」

「了解。任せてくれ」

最後はみんな笑顔で戦闘が締めくくられる。

私はそれにほっとひと息つきつつも、

「さて。美味いのを作らんとな」

とつぶやきさっそく料理に取り掛かった。

焼肉丼をみんなでがっつき、少し体を休める。

そして私たちはまだ日が高いのを見て、さっそく帰路に就いた。

一度、五匹ほどの残党との戦闘を挟んだが、帰路は順調に進んでいく。

二度野営を挟み、町に到着すると私たちはさっそくギルドに報告に向かった。


「本当ですか!?」

大袈裟なほど喜びの表情で叫ぶようにそう言った受付嬢に、

「ああ。討伐部位も持って帰ってきたぞ」

とどこか誇らしげに微笑んで答える。

「すぐにギルマスを呼んできます。すみませが、倉庫の方に行っていてもらえますか?」

という指示に従い、私たちは隣接されている倉庫の方に向かった。

統率個体の首と持っていた剣を出してしばし待つ。

するとそこへやや慌てた様子で壮年の男性と受付嬢がやってきた。

「統率個体をやったというのは本当ですか?」

冒険者ギルドのギルドマスターにしては丁寧な口調で物腰も柔らかそうな男性に向かい、

「ああ。見ての通りだ」

と討伐部位を示す。

「ああ、ありがとうございます。これで町は救われました……」

そう言ってほっと胸を撫で下ろす壮年の男性に、

「あんたが、ギルドマスターか? すまんが、まだ仕事は終わりじゃないぞ。掃討戦が残っているからな」

と伝えるとその男性は、少しバツが悪そうに苦笑いしながら、

「そうでした。しかし、これでこちらの優位は揺るがなくなったでしょう」

と言った。

「俺はアレン。あんたは?」

「ああ、すっかり申し遅れました。この町のギルドマスターをしているフォウリーと申します。この度はご助力いただきありがとうございました」

「いや。当然のことをしたまでだ。ついでに二、三日ゆっくりさせてもらうからまた状況を聞きにくる。その時はよろしく頼む」

「かしこまりました。前線にはすぐに伝令をだします。詳しい状況を伺っても?」

「ああ。もちろんだ」

「では、一度会議室の方に。そこが作戦司令部になっています。詳細な地図もありますから、接敵地点などを教えてください」

そう言われてさっそく会議室に向かう。

そこで、今回の状況を詳しく話すと夕方になって宿に戻っていった。

「とりあえず、風呂だな。泥まみれでかなわん」

「だね。で、今日はなに食べる? 小金貨何枚まで?」

「まだ決戦が終わったわけじゃないから軽く一杯くらいにしておこう。だから小金貨二枚までだな」

「えー……」

「打ち上げは全て終わったのを確認してからにしよう。その時は派手にやるぞ」

「うん! 約束だよ!」

「ああ。とりあえず明日は物資の補給だけにして半分休みにしよう。みんな今日はたっぷり食べてたっぷり寝てくれ」

「「「了解」」」

そんな話をしながらすっきりとした気持ちで宿に入ると、すぐに風呂を使って体の方もすっきりさせた。

一日たっぷり休んだ翌日。

さっそく商業ギルドに顔を出す。

おそらく統率個体討伐の話を聞いたであろう商人たちでごった返す受付を見て、

(これは出直した方がいいか?)

と思ったが、そこに最初に出会った受付嬢が私たちを見つけ、声を掛けてきた。

「少々お待ちくださいね。今ギルマスを呼んできますから!」

少し離れたカウンター越しにそう声を掛けてきた受付嬢のお礼の意味で軽く手を上げ、しばらく待つ。

すると私たちのところにギルドマスターのエミリアさんがにこやかな笑顔でやってきた。

「この度はどうもありがとうございました。おかげでこの活況ですよ」

「行商人が街道を通れるようになるまではまだ四、五日かかるだろう。しかし、急ぎの荷は冒険者の護衛付きで運べるようになる」

「そうですわね。その護衛受けていただくことは?」

「もちろん、いいぞ。しかし、その前にカナイ村のチーズとレシピを売り込ませてくれ」

「あら。そうでしたわね。ではさっそくこちらにどうぞ。詳しい話を聞かせてくださいませ」

そう言ってくれるエミリアさんについて応接室のようなところに入っていく。

さっそく野営道具を使って簡単にチーズフォンデュを用意すると、さっそく口に運んだエミリアさんが、

「まぁ……!」

と驚いたような顔をした。

「どうだ? これならこの辺の飲食店どこでも出せるはずだ。それにカナイ村のチーズが決め手になるから、他の地域で真似をしてもこの味は再現できない。本当にカナイ村とその近郊だけの名物料理になるぞ。カナイ村はチーズの販路が広がって潤うだろうから、そうすれば長い目で見ると商業ギルドにもうま味が出てくるんじゃないか?」

「そうですわね。地域おこしにピッタリの料理ですわ」

「じゃあ、決まりだな。で、いくらに?」

「うふふ。金貨二枚と言いたいところですが、この町の危機を救っていただいた恩人さんですから、思い切って金貨四枚でどうです?」

そう言われて私はチラリとリズに視線を送る。

リズが満足げにうなずいたので、私は、

「よし。それで売ろう」

と言い、エミリアさんと握手を交わした。

西の町へ行く急ぎの隊商は明後日出す予定だから、冒険者ギルドで手続きをしておいてくれと言われ、依頼書を持って冒険者ギルドに向かう。

冒険者ギルドで手続きをするついでに状況を尋ねると、

「はい。もう大丈夫です。あとは殲滅戦なので四、五日で片付くと思います。ああ、リック君たちも前線にもどりました。とっても感謝していましたよ」

と受付嬢が笑顔でそう教えてくれた。

「そいつはよかった。無理せず頑張れと伝えてくれ」

そう言ってギルドを後にする。

「ねぇ。今日はもう打ち上げしてもいいんじゃないかな?」

「そうですね。私もしたいです!」

「あはは! チーズとレシピが売れたお祝いもあるから、いいんじゃない?」

「そうだな。パッといくか!」

「「「おう!」」」

明るい声を上げ、石畳の道を商店街の方に向かって歩いていく。

暮れなずむ町で走る子供たちや普段通りに買い物をしている人たちを見て、私は、

(ああ、この日常が守れたんだな……)

と改めて自分のなした仕事の意味を改めて感じ、そっと胸に溜まっていた息を吐いた。


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