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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、緊急討伐に参加する04

緊張の一夜を過ごし、空が白むのを待ってさっそく行動を開始する。

(サーニャはともかくマイあたりは体力的にきつくなってきているだろうな。ということは二、三日が活動の限界か? なるべく多く削りたいが、持久戦に持ち込まれたら一度撤退する必要がある。となると撤退戦も視野に入れておくべきか……)

そんなことを考えて歩いていると、さっそくリザードマンの一団がきっちり隊列らしきものを組んで姿を現した。

(なっ!? こんなに早く来やがっただと? まずい、敵は早々に決着をつけるつもりだ。ちっ! 思惑が外れやがった!)

かなり焦りつつも、

「リズはマイを守って徐々に前進! マイ、右翼を中心にじゃんじゃん攻撃を頼む! 俺は左を押さえるからサーニャ、中央で暴れてくれ! 包囲される前に乱戦に持ち込むぞ!」

そう指示を出し、さっそくそれぞれが攻撃を始める。

マイの魔法の矢が右側に飛んでいくのを見ながら、私は左側を押さえるべくリザードマンの群れに立ち向かっていった。

(先日までより明らかに数が多いが、おそらく全戦力じゃない。こちらの戦力を低く見積もってくれたのか? なんにしろ助かった。これならギリギリいける!)

そんなことを考え、悪い足場でなんとか動き回りながら敵を斬っていく。

そして、五匹ほど斬ったところで、ふいに足を滑らせてしまった。

(あっ!?)

そう思ったが遅い。

尻餅をつき、一気に攻め寄せられてしまう。

(くそがっ!)

なんとかその場で転がりながら凶悪な爪を必死にかわしていると、そこにマイの魔法が降ってきてくれた。

(また助けられたな。しかし、ずいぶん消耗しちまった。息が切れなきゃいいが……)

と思いつつなんとか立ち上がって再び刀を振るい始める。

戦闘は三十分ほど続いたが、相手の数が残り十五匹程度になったところで、リザードマンが退却する様子を見せ始めた。

ここぞと思って攻めようかとも思ったが、

(いや。伏兵の可能性もある。茂みに逃げ込まれたら厄介だ)

と気付き、サーニャに、

「殿を削れ。それだけでいい!」

と指示を出す。

「了解!」

湿地で戦っているとは思えないほどの速度でサーニャは殿についていた少し大きな個体に迫ると、たった一振りで勝負を決めてくれた。

私はすぐさまリズとマイの方に駆け寄っていくと、

「いったん態勢を立て直す。徐々に追っていくぞ!」

と声を掛けた。

前線からサーニャが戻ってきたところで、お茶を淹れ、地図を広げる。

どうやらマイが少し疲れているらしい。

そう思って蜂蜜たっぷりのミルクティーを渡した。

「はぁ……。甘くて生き返りますぅ」

ほっとした表情で言うマイに、微笑みつつ次の作戦を伝える。

「おそらくだが、次は本体が待ち構えているぞ。なるべく戦いやすい立地を選んで進もう。俺が指揮官なら、この周りにちょっとした茂みのあるこの開けた場所に陣を置くかな? あっちに有利な足場の悪さや周りに伏兵を潜ませる場所もあるし、本隊をぶつけてくるなら絶好の位置だ。そこまで行って本隊がいれば戦うし、本隊がいなかったら接敵したリザードマンを削りながら撤退戦だ。そうなると夜戦のリスクもあるから、体力が持つかどうか心配だが、致し方ないだろう。マイ。すまんが頑張ってくれ」

「「「了解」」」

「もし統率個体が現れたら頼むぞ、サーニャ」

「任せといてよ。一発で沈めるからさ!」

「無茶、厳禁だぞ?」

「ははは。そうだったね。じゃあ二発で沈める」

「ふっ。さすがだ」

「もし本体がいた場合私たちはどう立ち回ればいい?」

「とにかくリズはマイの前を守ってじっくり前進してくれ。おそらく相手は囲みに来るはずだが、それは俺がなんとかする。後ろは気にしなくていい。サーニャが前線で削れるだけ削る時間を稼いでくれればいいから、あまり無茶するな」

「了解。じゃあ、私はとにかく守ることに徹するよ」

「ええ。私はサーニャの援護と敵のかく乱ですね?」

「ああ。それで大丈夫だ。落ち着いて行動してくれ」

「「了解」」

しっかりと作戦を決め、ナッツがぎっしり詰まった行動食を口にしてから出発する。

私たちは周囲の状況に気を配りつつ、なるべく見通しのいい場所を辿って目的の場所を目指した。

やがて夕暮れが迫ってきたのを見て、少しでも安全そうな場所を見つけて野営にする。

決戦は明日だろうという緊張感がみんなの口数を少なくさせていた。

再び緊張の夜を過ごし、夜明けとともに行動を開始する。

二時間ほどで目的地に着くと、まずは低木の影からなるべく全体を把握しようとしてみた。

明らかに陣形らしきものを敷いたリザードマンたちが五十匹ほど集結している。

どうやらこちらを待ち構えているようだ。

(来るなら来いってか? まったく想定以上だ。どうやら統率個体は考えていたより小賢しいらしいな。しかし、ここまで来たら、撤退は命取りだ。追撃されて終わる。ちっ。判断が甘かったか……)

そう悔やみつつもみんなを見ると、

「いけるよ!」

「ええ。守り切ってみせます!」

「私も魔力が切れるまで撃ちますからね」

と軽く微笑みつつ私を励ますような言葉を掛けてきてくれた。

そんなみんなの言葉に軽く感動しつつ、

「そうだな。総力戦になるが、頑張って無傷で帰ろう!」

と声を掛ける。

「「「おう!」」」

みんなが笑顔でそう答えたのを聞き、私は作戦開始の合図を出した。

まずは一団になってリズを先頭に突っ込んでいく。

最初の部隊らしき集団にぶち当たると、リズがいつものように、

「どっせい!」

という気合の声を発し、防御魔法で軽く相手の陣形を崩してくれた。

サーニャがリズの上を飛び越え、リザードマンたちの真ん中に立つ。

サーニャは恐ろしいほどの速度で大剣を振るい始めた。

「マイ。右の集団を足止めしてくれ!」

そう言いつつ、私は左に向かう。

どうやら右が本体で左が遊撃隊のようだ。

(十匹くらいか? ギリギリ足止めできる範囲内だ)

冷静にそう分析しつつまたなるべく足を狙って相手の足を止める作戦に出た。

ぬかるみに足を取られ、鋭い爪の攻撃にヒヤヒヤしつつなんとか戦う。

おそらくマイは右から攻めてくる本体の対応でいっぱいいっぱいだろう。

(ドジるな。今回は助けがこないぞ。むしろここをさっさと切り抜けてこっちが援軍に向かわなきゃいかん立場だからな)

自分にそう言い聞かせ、私はなんとかその場で立ち回った。

やがて最後の一匹の胴を深く斬り、肩で息をしつつ戦況を確認する。

サーニャは前線で生き生きと暴れているが、どうやらリズとマイが囲まれそうになっているようだ。

私はその状況を見ると、急いでリズとマイのもとに走った。

悪い足場をバシャバシャと音を立てながらなんとか走っていく。

私は現場に到着するとすぐに、マイの背中を狙っていたリザードマンの背中に斬りつけた。

「ギシャァァッ!」

と汚い声が響き、マイが一瞬こちらを気にする。

「後ろは大丈夫だ。とにかく、サーニャを援護しろ!」

私はそう言ってマイの背中を守れる位置につき、次々と襲ってくるリザードマンを相手にし始めた。

マイの魔力が膨れ上がる気配に安心しつつ、目の前の敵をなんとか退けていく。

リズもメイスを使いそれなりに応戦しているようだ。

こちらの残りはあと五匹ほど。

(これならいける。しかし、油断だけはするなよ!)

私はバグベア戦での手痛い失敗を思い返しながら、慎重にリザードマンを戦闘不能にしていった。

やがて、最後の一匹が倒れ、再び戦況を見る。

サーニャもそろそろ統率個体に迫ろうかという勢いで残り三匹ほどを前にしていた。

「もう少しだ。とにかくサーニャのところまで行く。 マイ、無理はするな。リズと一緒に来い!」

そう声を掛け、私は先行して走っていく。

ぜぇぜぇと切れる息に、

(あとちょっとだ。あとちょっともってくれよ。おっさんの肺……)

と思いながら走っていくと、ちょうどサーニャが周りのリザードマンを黙らせたところだった。


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