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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第二部

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おっさんA、緊急討伐に参加する03

「大丈夫か?」

優しく声を掛けつつ三人の若者に近寄る。

パッと見たところ、剣と槍、そして盾の三人組のようだった。

「あ、あの……」

少し震えながら返事をしてくる槍を持った少女に、

「もう大丈夫だ」

と優しく声を掛け、軽く頭を撫でてやる。

ふと腰の辺りを見れば、少し膨れた薬草袋を持っているから、おそらく討伐ついでに薬草採取もしてしまおうと考えたのだろう。

(そんなことだから、こんな事態になっちまうんだよ……)

と呆れつつも、

(いや、きっと町の危機をなんとかしたいって気持ちで動いたんだろうな。まぁ、気持ちはわからんでもないさ)

と考え直し、

「とりあえず動けるか? 開けた場所でお茶にしよう」

となるべく気安く声を掛けた。

「は、はい!」

そう言って立ち上がる少女に続いて盾役らしき少し大柄な少年が立ち上がり、剣を持った少年に肩を貸す。

私はその様子を見て、

(これは素直に帰れと言った方がいいだろうか? いや。単独で帰すのは危険だ。とにかく、いったん安全圏までこいつらを連れていくのが急務だな)

と考えた。

とりあえず茂みを出て、三人がなんとかついてきているのを確認しながら少し歩く。

見晴らしのいいところまで三十分ほど歩いた。

ようやく見晴らしの効く場所まで出て、

「よし。休憩だ。よく頑張ったな」

と息を切らしかけている三人に声を掛ける。

私とマイはすぐに温かいお茶の準備に入り、リズとサーニャが三人に手拭を渡した。

泥だらけになった顔や体をとりあえず拭いた三人にお茶を渡す。

「……ありがとう、ございます」

疲れ切った表情ながらもそう言ってお茶を受け取る槍の少女がひと口お茶を飲むのを見届けてから、

「なんであんなところに行ったんだ?」

と声を掛けた。

「あの、その……。茂みの中ならリザードマンに見つからずにすむかと思ってて……」

予想通りの答えを返してくる少女に軽くうなずきつつも、

「こういう場合は逆だ。相手はこちらの動きをある程度読んでくる。おそらく夜のうちに行動を把握されてしまったんだろう。足場の悪い状況でやつらが狙いやすい茂みに入れば、あっちの思うつぼだ。少し選択を間違えたな」

と答え、また軽く頭を撫でてやる。

すると少女は涙を流し、

「うぅ……」

と嗚咽を漏らし始めた。

「泣くなよ、エルザ! 悪いのは俺だ。俺が薬草も採っていこうって言ったから……」

そう言って盾役の少年がエルザと呼んだ少女の肩に手を置く。

するとエルザと呼ばれた少女は、

「リックぅ……」

と言い、少年の胸に顔を埋めて本格的に泣き始めてしまった。

そんな二人に苦笑いしつつ、もう一人の少年に声を掛ける。

「体力は大丈夫か?」

そう声を掛けると、少年はコクンとうなずいた。

しかし、どう見ても顔が青ざめている。

私は、ポケットから飴を取り出すと、

「甘い物を口に入れておけ。少しは落ち着くぞ」

と言った。

「ありがとうございます……」

素直に飴を口にした少年に、なるべく優しい声で、

「どうしてこんな無茶をしたんだ?」

と事情を尋ねる。

すると少年はぽつぽつといった感じで、なんとなく事情を語り始めてくれた。

「俺たち、西の町出身なんです。で、今はこの町に拠点を置いてるんですけど、薬が足りなくなると、みんな困ると思って……。子供の腹痛にはあの薬しかないから。エルザには小さい妹がいるし、俺も子供のころ腹を壊したことがあるから、早く薬をたくさん作ってもらって、西の町に届けてもらわなくっちゃって。それで、あの……」

そこまで言ったところで少年が言葉を切る。

私は心の中で、

(なるほどな)

と思いつつ、

「そうか。事情はわかった。それは人として正しい行動だ。気にする必要はないぞ。でも、今回は少し間違えたな」

と言い少年の頭をくしゃりと撫でてやった。

「……はい」

少年が恥ずかしそうにしながら、顔を伏せる。

そんな少年の心中を想い、私はなるべく明るい声で、

「今日は少し戻ってそこで野営だ。美味いものを食わせてやるから、期待しとけよ」

と言った。

三人が落ち着いたところで、撤退を開始する。

その日はどう頑張っても安全圏にはたどり着けないだろうと思って、見晴らしのいいところで野営をすることにした。

さっそくドワーフの里で買ったダッチオーブンを使い、温かいシチューを作る。

なるべく消化にいいものがいいだろうと思って、肉と野菜はやや小さめに切った。

「さぁ。温かいうちに食え。体が冷えると心まで冷えるからな。今日の見張りは任せてもらっていいからな。ゆっくり食べてゆっくり休んでくれ」

「「「ありがとうございます」」」

恐縮したようにシチューを受け取る三人が、ひと口食べるのを見て私たちも食べ始める。

やがて食事が一段落すると、私は改めて、

「俺はアレン。そっちの獣人がサーニャでエルフがマイ、ドワーフがリズだ。名前を聞いてもいいか?」

と自己紹介をし、三人の名前を尋ねた。

「俺、リックっていいます。で、槍がエルザで剣を持っているのがカッツです。あの、遅くなりましたけど、今日は助けていただき、ありがとうございました!」

そう言ってガバッと頭を下げてくる三人に、

「なに。こういうときはお互い様だ。俺も若い頃はこうして先輩に世話になったもんさ。気にするな」

と答え苦笑いを送る。

そして、三人に、

「明日、お前らを安全圏まで送り届ける。いったん退却しろ。ギルドには俺たちが十五匹ほど仕留めて北に進んでいると伝えるんだ。おそらく二、三日後には大きな群に出くわすだろうから、出来るだけ削ってくるとも伝えてくれると助かるな」

と伝えた。

何かを訴えかけるような表情を一瞬見せたエルザの肩にリックが手を置く。

私はそれを見て、

「今は自分の命を大事にしろ。お前らが死んだら町のやつらが悲しむぞ」

と伝え、なるべく優しく微笑んでみせた。

黙り込む三人をしばらく見守り、休むよう、促す。

疲れ切って眠ってしまった三人をどこか微笑ましいような顔で見つめつつも、私は一段緊張感を高めた。

「いるっぽいね」

「ああ」

「見られてるんですか?」

「おそらくな。夜襲を仕掛けてくるかもしれんから、リズとマイは三人を常に守れる位置で休んでくれ。サーニャ。交代で見張るぞ」

「了解」

そう言って静かに緊張しつつ夜を過ごしたが、結局やつらが襲ってくることはなかった。

あくる日は、空が白んでくるのと同時に行動に出る。

もしかしたら追撃があるかもしれないと思い、撤退戦になることを想定したが、そこでもやつらは襲ってこなかった。

(こちらの戦力を高く見積もっているのか、低く見積もっているのか……。どちらにしろこの統率の取れた動き方は尋常じゃない。そうとう手慣れた統率個体がいると見て間違いないぞ)

そう思いながら、夕暮れ前にはなんとか遠くに街道が見える所まで辿りついた。

「まっすぐ帰れよ。今、お前らに託された役目は確実にギルドに情報を伝えることだ。それとただの勘だが統率個体がいるとしたら北側なんじゃないかってことも伝えてくれ。どうも群れの様子をみていると、普通のリザードマンより一段高い統率力を感じるからな。俺らはそこをつついてみる。南側の前線が持ちこたえてくれれば、俺たちの戦闘が有利になるから、それを忘れずに伝えてくれ」

「「「はい!」」」

真剣な表情で返事をする三人になんとなく安心感を持って見送り、私たちはまた奥地へ少し歩いて野営をすることにした。

「ねぇ、アレン。統率個体いるってほんと?」

「わからん。しかし、ぷんぷん臭う」

「私、そういうのわかんないけど、何をすればいい?」

「リズはとにかくマイを守ってくれ。マイはとにかく魔法で牽制。それに徹してくれ」

「わかりましたわ」

「俺は戦場をかき乱してなるべくマイやリズに負担がかからないように動く。サーニャ。もし、統率個体に遭遇したら頼むぞ」

「任せといて。一撃で沈める!」

「ははは。そいつは頼もしいが無茶はするなよ。ケガをしたら若者に示しがつかんからな」

「あはは! 先輩としてかっこいいとこ見せなきゃだもんね。了解!」

そう言って笑うサーニャの表情に少しほっとする。

(こいつはいつも無茶をしたがる傾向にあるからな。今回も無事、笑顔で終わってくれよ)

と思いつつ、私はいつも通り、温かい食事を作り始めた。


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