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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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28/90

おっさんA、西へ行く02

翌朝。

まずは被害があるという裏街道を通り、小さな村に向かう。

村には半日ほどで着き、そこで村長を訪ね詳しい話を聞いてみた。

聞き取った内容はほぼギルドで聞いたものと一致していたが、一つだけ、

「襲ってきたのは五匹くらいの集団で指揮をする大将格がいたらしいですよ」

と気になることを言う。

その話を聞いて、私は、

(もしかして、全体の統括をするやつだけじゃなく小隊長みたいな個体もいるのか? だとしたら伏兵の配置が流動的になってもおかしくないぞ)

と思い、村長に地図を見せながら現地の地形を詳しく聞いていった。

「伏兵のいそうな茂みや窪地は全部で五つくらい確認されている。そのどこから来るかわからんが、おそらく来るとしたら後ろからだろう。戦闘はリズに任せようと思っていたが、序盤はサーニャに頼もう。私とリズはとにかくマイを守るぞ。で、中盤からはリズが前面に出る形だ」

「そうだね。とにかく、中腹の難所を越えるまでは用心して行った方がいいかも」

「私なんだか守ってもらってばっかりですけど、戦闘になったらじゃんじゃん活躍しますからね」

「ははは。期待しているぞ」

「ええ。がんばります!」

そんな風に村の宿で作戦会議を開き、ゆっくり休む。

そして翌日。

私たちはいよいよ、そのバグベアが住み着いているという丘を目指し第一歩を踏み出した。

森に入り、林道を行く。

おそらく林業者が作った道だろうが、今はバグベアの移動経路になっている道だ。

そこを進んでいると昼を過ぎたくらいに気配が動いた。

ザザっと藪が動き黒い影が走り去っていく。

「さっそく見つかったみたいだ。ここからは油断できないぞ」

「「「了解」」」

隊列をしっかり組み直し、私が殿を務める。

その後、慎重に進んでいったのもあり、バグベアが巣くっている丘のふもとまで来たところで日が暮れてきた。

「夜襲に警戒しながらの野営になる。手早く済ませて俺とサーニャが交代で見張りに立とう。リズとマイはゆっくり休んでくれ」

そう指示を出し、手早くサンドイッチで夕食を済ませる。

そして迎えた夜。

三日月の弱い光しか届かない暗い森の中にらんらんと光る凶暴そうな目がいくつも浮かび上がった。

「来たぞ!」

大声で叫びつつ灯りの魔道具から光を射出する。

そして刀を抜き、

(そう言えば、初実戦だな……)

と少しどうでもいいことを考えつつ、襲ってきたバグベアのごつい腕に斬りつけた。

スッという手応えで、パッとどす黒い血が飛ぶ。

(うわ。これすごいな。さすがエドバンさんの作だ)

と感心していると、サーニャがものすごい勢いで飛び出してきた。

前線を一瞬任せ、後方を見る。

どうやらリズが押しとどめてくれているようだ。

私は、そちらに回り、リズに襲い掛かっている個体の背中をざっくり切り裂いた。

「マイ。いけるか?」

「いけます!」

そう言ったマイの魔力が急激に膨らむ。

そして、マイは雨のように魔法の矢を降らせると、そこで数匹のバグベアの動きが止まった。

すかさずサーニャがトドメを刺し、次に向かおうとする。

しかし、バグベアはすぐに指揮官らしき個体の指示にしたがって、さっと冷静に退却し始めた。

「深追いするな!」

さらに追撃しようとするサーニャを呼び止め状況を確認する。

仕留めたのは五匹。

襲ってきたのは八匹くらいだったから、まずは勝利を収めたと言ってもいいだろう。

私は、少し悩んだが、

「一度失敗したからにはそうそう次の手は打ってこないだろう。あちらも体制を整えるだろうが、こちらも少し体を休めておこう」

と言い、休息をとることにした。

早朝。

夜明けを待って行動を開始する。

なだらかな道を警戒しながら進んでいると、やはり後方で藪が動いた。

さっと盾を構え、

「来たぞ!」

と叫ぶ。

すぐにリズが飛び出してきてマイを守れる位置についてくれた。

私たちの上をサーニャが飛び越えていく。

私が一匹引き受けて撃退している間にサーニャが三匹のバグベアを斬ってくれた。

(ここまでは予想通りだな。しかし、この後どう出てくるか……)

そう思いながら、進んでいると、けっこうあっけなく問題の中腹にある要衝に到着した。

「なるほど。ここで待ち構えて一気に勝負を決めにきやがったか……。みんな。総力戦になる。油断するなよ」

「「「了解」」」

そう言ってみんなが武器を構える。

「まずはおびき出します!」

そう言ってマイが魔法を放つと、それを合図に戦闘が始まった。リズが堀の中で相手を押し留めている。

サーニャはそれを守って押し寄せる敵をなんとか撃退してくれているようだ。

しかし、けっこう相手の数が多い。

本当にやつらは総力戦をしかけてきたようだ。

「ちっ!」

思わず舌打ちをしながら、時折飛んでくる意外と強烈な投石からマイを守りつつ漏れてきた敵を相手にする。

マイの魔法は土塁を挟んだ向こう側に着実に届いているから、あちらも慌てて攻めてきているのだろう。

(ここが踏ん張りどころだな)

そう思って私は刀を振り、なんとかマイを守り通した。

そのうち、徐々にこちらが優勢になってくる。

「どっせい!」

リズがそう叫んで少し大きな個体をふっ飛ばしたところで、サーニャが一気に土塁を上っていった。

「マイ、リズを援護だ!」

「了解」

マイがリズに襲い掛かろうとしていたバグベアに向けて魔法の矢を叩き込む。

その隙にリズも土塁を上り相手の陣地を攻め始めた。

「こっちもいくぞ。じゃんじゃん撃ってくれ!」

そう指示して堀の中に突っ込んでいく。

私はまだ一匹残っていたバグベアの相手をし、魔法を撃ち込むマイを守った。

やがて、サーニャが土塁の上に立ち、大剣を掲げて見せる。

いつも通りニカッとしたその笑顔を見て、私は無事勝利したことを悟った。

「よし。もうこっちのものだ。一気に攻めよう。しかし、最後まで油断するなよ?」

「「「了解!」」」

そう決めるとそこからはやや足を速めて頂上を目指していく。

途中二匹奇襲を仕掛けてきたが、リズがいち早く気付き、サーニャが問題無く仕留めてくれた。

頂上付近で、五匹のバグベアと明らかに体格のいい統率個体を発見する。

どうやら、小細工を止めて正面からぶつかってくる作戦に出てきたようだ。

「よし。一気に決めるぞ!」

そう言って私も前に出る。

そして戦いが始まり、残り三匹となったところで私は勝利を確信した。

しかし、次の瞬間、

「きゃっ!」

と後ろからマイの鋭い叫び声が上がる。

(まさかっ!?)

と思って振り向くと、一匹のバグベアがマイの魔法を受け膝をついている状況だった。

(まだ伏兵を……!)

そう思いつつ急いで駆けつけ、そのバグベアを一気に仕留める。

「大丈夫か?」

慌てて声を掛けるとマイは苦笑いで、

「はい。大丈夫です。なんとか先に気付けたので魔法を放てました」

と言ってくれた。

(くっ。私は大切なものを失うところだった……。油断するなと言っておきながら、自分が油断してどうする!)

悔しさが溢れる。

そんな悔しさをいったん落ち着け、前方を見ると、ちょうどサーニャが統率個体の首を刎ねたところだった。

「やったね!」

「うん。討伐大成功!」

と喜んでハイタッチを交わすリズとサーニャを見て、忸怩たる思いになる。

(私は十分に役目を果たせなかった)

という想いが胸に重たく圧し掛かってきた。

「大丈夫ですよ。結果上手くいったからいいじゃないですか」

と言ってくれるマイに、

「すまなかった」

と謝る。

しかしマイは、

「反省は次に生かせます。ここは謝らないでください。お互いによく頑張ったんですから」

といつもの笑顔でそう言ってくれた。

私は少し救われたような気持ちになり、

「ありがとう。お互いよくやったな」

と言ってマイに向かって軽く右手を上げる。

するとマイはニコッと笑って私の右手を軽く叩いてくれた。

そこへサーニャとリズが戻ってきてさらにハイタッチを交わす。

「お昼、ハンバーグがいいな!」

「おいおい。野営でハンバーグか?」

「だめ?」

「いや大丈夫だ。ダッチオーブンがあるから煮込みハンバーグもいけるぞ!」

「やった! アタシ大盛りね!」

「あはは。いっぱい働いたから私もお腹ペコペコだよ」

「あら。じゃあみんな大盛りですね」

「ふっ。じゃあ、さっそく作るか。マイ、好きなだけ米を炊いてくれ」

「了解です!」

最後はそんな風に笑い合い、私に少し苦い思いをさせたバグベア討伐が終わった。

小高い丘の上から晴れ渡った空に映える周りの景色を見る。

そこにはなにごとも無かったかのように平和な田舎道があった。


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