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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、ドワーフと一緒にモノづくりをする06

ドワーフの里名物のジンギスカンのような羊の焼肉を堪能し、ゆっくり骨休めをしてから帰路に就く。

帰りもまたのんびりとした馬車に揺られつつ、

(帰ったらエドバンさんの様子を見にいってみよう。はてさて、どんな刀が出来上っていることやら)

そんな楽しみを思って軽く目を細めた。

翌日。

さっそくみんなでエドバンさんの店を訪ねる。

差し入れにと思って市場で美味しそうな果物を籠いっぱいに買っていったが、よく考えたら、

(エドバンさんって家族いるんだっけ?)

とエドバンさんのことをなにも知らないことに気が付いた。

(まぁ、余ったらこっちで引き取ればいいだろう)

くらいの気持ちでエドバンさんの工房の扉を叩く。

しかし、返事がない。

「?」と思って軽く扉を押すと、鍵はかかっていなかった。

「おーい。エドバンさん。様子を見に来たぞ」

と声を掛けるが返事がない。

みんなと顔を見合わせるが、みんな「どうしたんだろう?」というような表情で私を見てきた。

仕方ないので、工房の奥にある作業場を覗いてみる。

するとそこでエドバンさんが見るからに青白い顔で倒れていた。

「大丈夫か!? おい、しっかりしろ!」

慌てて抱き起こすとエドバンさんが、

「うーん……」

と小さく唸るような声を上げた。

「マイ、聖魔法を頼む!」

「わかりました!」

マイが駆け寄ってきてエドバンさんの胸の辺りに手を置くと、そのマイの手を中心に青白い光が広がり、エドバンさんの体を包み込んでいく。

(いったいどうしたんだろうか? もしかしてなにか病気でも抱えていたんだろうか?)

と心配していると、マイが、

「おそらく魔力の欠乏で気を失ってしまったんですね。しばらく横になっていれば回復すると思いますよ」

と言ってくれたので、私はほっと息を吐いた。

しばらくマイが手当てを施し、エドバンさんの容体が落ち着く。

エドバンさんは先ほどまでの苦しそうな顔とは打って変わった安らかな表情で眠っていた。

「このままにしておくのもどうかと思うし、今日は交代で看病しよう」

そう言って、とりあえずサーニャとリズに工房の中を見てもらう。

すると、どうやら工房の二階が住居になっているらしいことが分かったので、私たちはエドバンさんをベッドに運んだ。

「魔力欠乏ならいい薬がある。材料はどの薬局で手に入るようなものだから、リズ、サーニャ、すまんが買ってきてくれるか?」

「「了解」」

そう頼んで、メモ帳に買ってくるものを書きつける。

二人はすぐに工房を出て行き、私はマイと一緒にエドバンさんを見守った。

やがて、二人が戻ってきたところで、工房の一画を借りて薬を調合する。

調合といっても市販の強壮剤と魔力回復効果の高い薬草を煎じたお茶を混ぜ合わせるだけだ。

簡単に作り、二階に持っていくと、ちょうどエドバンさんが目を覚ましたところだった。

「すまねぇ……」

と謝ってくるエドバンさんに、

「まずは薬を飲んでくれ。良く効くぞ」

と言って薬が入ったコップを渡す。

「ありがてぇ」

そう言ってエドバンさんは一気に薬を飲んだが、

「苦っ!」

と言って顔をしかめた。

「すまんな。効果は高いが味はイマイチなんだ。我慢してくれ」

と苦笑いで告げ、

「で。どうしてああなったんだ?」

と聞く。

エドバンさんは少し迷っていたようだが、

「エルダートレントの炭を高温でしかも安定して燃やし続けるにはかなりの魔力と集中力がいるんだ。で、その後の鍛冶にも相当な魔力を使うから、どうやら無理し過ぎたらしい。大会まであんまり余裕がねぇから少し焦っちまったみてぇだ」

と正直に事情を話してくれた。

「なるほどな。大会はいつなんだ?」

「製品の受付は明後日の夕方までだ」

「おいおい。間に合うのか?」

「……それは、間に合わせるしかねぇって言いてぇところだが……」

「かなり厳しいんだな?」

「ああ。みんなにはせっかく骨折ってもらったのに、すまねぇ。しかし、最後までなんとかやってみるさ」

「……」

「おいおい。そんな顔すんなよ。ちょっと気合入れればなんてことねぇさ。薬、ありがとうな。さっそく続きに取り掛かるぜ」

そう言ってベッドから降りようとするエドバンさんを、マイが止める。

「ダメですよ。今はゆっくり寝てください。私の魔法で一時的に回復させているだけですから、またエルダートレントの炭なんて扱ったら今度こそ命に関わります。少なくとも今日一日は安静にしていてくださいね」

「いや。しかし……」

「いや。マイの言う通りだ。いくら職人の意地があるからといっても、命に関わるようならやめておくべきだろうな」

「……言いたいことはわかるが、それじゃぁ間に合わねぇ」

「そうか……。ちなみに、あとどのくらいの作業が残ってるんだ?」

「ん? ああ、あと数回は鍛錬が必要だ。それからあとは鍛冶魔法で術式を打ち込んで研ぎを入れれば完成だな」

「通常ならどのくらいかかる?」

「魔力が十分なら一日半で終わる、と踏んでいた。しかし、今はこのザマだ。また倒れたらそこでお終いだろう。だから仕上げのことも考えると、とうてい間に合わねぇ。それに今日倒れちまったおかげでエルダートレントの炭を一回分無駄にしちまったから、そっちも足りるかどうか、ギリギリだ」

「そうか。エルダートレントの炭なら心配するな。予備が一袋ある。あと、問題の根本は魔力が足りるかどうかということでいいか? となると、エルダートレントの炭の熱を制御する手間が省ければなんとかなる可能性がある。そういう理解でいいか?」

「……ああ、まぁ、誰かが代わりに火をなんとかしてくれんだったらなんとかなるな。しかし、エルダートレントの炭をただ扱うだけじゃなく、高温で一定時間維持するなんて器用なことができる人間なんてこの町の職人じゃ俺だけだ。いろいろ考えてもらって悪いが、やっぱり俺が気合でなんとかするよ」

「いや。それはだめだ。そんな無茶見逃せるわけがない。それに安心しろ。エルダートレントの炭の火力制御ならあてがある。マイ。いけるか?」

「ええ。炎の色で温度を指示していただければたぶん大丈夫ですよ」

「なっ!? それは本当か!?」

「はい。私、炎の制御は得意ですから、炎の色さえ指示していただければ、それを維持することは可能だと思いますよ」

「どうだ、エドバンさん。いけそうか?」

「ああ。いける。それならいけるぞ!」

「よかった。じゃあ、今日は一日大人しくしていてくれ。ああ、台所を使わせてもらうぞ。栄養たっぷりのシチューを作っておくからな。起き上がれるようになったら食べて今日はゆっくり休んでくれ」

「ああ。すまんな」

「ついでだ。みんなでちゃんと休んでるかどうか監視してやろう。目を離した隙に無茶されたらたまらんからな」

「おいおい。いくらなんでも……」

「乗りかかった船だ。好きにさせてくれ」

「……そうか。すまねぇ。恩に着るぜ」

そういう話で急遽エドバンさんの鍛冶をマイが手伝う事が決まり、それぞれが動き出す。

私は薬と料理を担当し、リズとサーニャには店番や雑用をお願いすることにした。

その日は夜まで交代でエドバンさんの看病をし、いろいろ世話を焼いてから明日の朝早く再開することを約束して宿に戻る。

「マイ。明日は大変だろうが、頼んだぞ」

「ええ。任せてください。ちょっとドキドキですけど、一生懸命がんばります!」

マイのやる気のこもった表情を見て私は、なんの根拠もないのに、明日の成功を確信した。


翌朝。

早朝からみんなしてエドバンさんの工房に向かう。

工房に着くとエドバンさんはすっかり元気になった様子で、

「今日はよろしく頼むぜ。特にマイの嬢ちゃんには世話になる。すまんが頑張ってくれよ」

と笑顔で出迎えてくれた。

「はい。一生懸命がんばります!」

マイがそう答えたところでさっそく作業に取り掛かる。

私は一応心配だったので、最初だけ見させてもらうことにした。

「じゃあ、いくぜ」

「はい!」

マイが気合を込めて炉の中のエルダートレントの炭に魔法で火を着ける。

火はあっという間に着き、高温の青い炎を見せ始めた。

エドバンさんがそれをじっと見つめる。

「嬢ちゃん、もっと青白くしてくれ」

「はい」

そう言ってマイがさらに魔力を注ぎ込む。

すると炎は信じられないほどの高温を放ち、眩しいほど青白く光り始めた。

「よし! そのまま維持してくれ」

「了解です!」

エドバンさんが金属の塊を炎の中に突っ込み真剣な様子でそれを観察する。

そして、金属が真っ赤を通り越して真っ白に輝き始めたのを見て、一気に炉の中から引きだした。

大きな槌でガンガン叩く。

赤い火花が辺りに散らばり、鍛冶場は一気に熱を帯びていった。

「カン、カン!」という小気味いい音が暑い作業場の中に響き渡る。

私は一連の様子を見て、

(この調子なら大丈夫そうだな)

と思うと、

(強壮剤入りのスポドリでも作ってやるか)

と思いながら、そっと作業場を後にした。


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