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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、ドワーフと一緒にモノづくりをする05

「ほら。客が来たんだ、帰ってくれ。お前さんと話すことはなにもねぇよ!」

「そう言わずお話だけでも……」

「うるせぇ! どうせろくでもねぇ仕事の話だ。聞くだけ損だ。さっさと失せろ!」

エドバンさんの怒声に尻込みするように男性がそそくさと店を出ていく。

「どうしたんだ?」

と聞くと、

「ああ。グルワッツ商会のやつだ。ちょっと前から、商会に入らないか? って話を持ち掛けてきててよ。ふざけんじゃねぇ! って追い返したところさ」

とまるで反吐を吐くような口調で事情を教えてくれた。

「なるほど。あっちはあっちで技術力を上げたいという目論見があるんだろうな」

「けっ。どうせ商会に入ったところでやらされるのはあの見た目だけの剣を作らされる仕事だけだ。そんなの職人の魂が許さねぇよ」

「そうだな。そういう考えもあるだろう。しかし、そうやって誘いに乗った職人も多いんじゃないか?」

「……ああ。残念ながらな。だからこそ見せてぇんだ。俺ら職人の意地と魂ってやつをよ」

「そうか。それならなおのこといい剣を作らなければな」

「おうよ! すまねぇなみっともねぇとこと見せて。さぁ、美味い肉でも食いに行こうぜ。なにせ今日は俺の奢りだからな。好きなだけ食ってくれ」

そう言うエドバンさんの言葉にサーニャが、

「やった!」

と真っ先に反応する。

私はとんでもない金額の会計になるのを予防するため、サーニャに、

「サーニャは小金貨一枚までな」

と苦笑いで釘を刺した。


その後、裏路地にあるエドバンさんが行くにしては瀟洒な店で、ジュージューと良い音を立てて焼ける分厚いステーキをご馳走になる。

値段を聞いて驚いたが、一枚で大銀貨一枚ということだった。

滴るような肉汁とニンニクの効いたパンチのあるソースが絶妙に絡み合った美味しいステーキを食べ、大満足で店を出る。

「明日からさっそく試作に入る。三日もありゃ形ができるだろうから、是非見に来てくれ。まぁ大会まであんまり間がねぇから急いで仕上げなきゃいけねぇってのもあるがな」

「ああ。楽しみにしてるよ」

エドバンさんと私たちはそれぞれに握手を交わすとどこか朗らかな気持ちでそれぞれの寝床に戻っていった。

翌日はリズの案内で市場を見て回る。

リズはこれはと思うものを見つけては、値段や性能を細かく聞き、なにやらメモ帳に書きつけていた。

「すぐには買わないんだな」

という私の質問に、

「鉄は腐らないからね。じっくり選んだ方が結果お得なんだ」

といかにもドワーフの商人らしい言葉を返してくる。

私はその言葉に納得させられ、その後もリズが品定めをするのを横で見守った。

その翌日。

「近くに温泉があるんだけど、どう? 行ってみない?」

というリズの言葉を聞き、

「行こう!」

と即決する。

温泉と聞いてどうにも前世の記憶が騒いでしまった。

「あはは。やけに前のめりだね。まぁ、いいや。露天風呂っていって屋根のない湯船もあるから解放感があっていいんだ。みんなもそれでいい?」

「ええ。どんなところか楽しみだわ」

「うん! 大きなお風呂大好き!」

無事みんなも賛成してくれたので、宿を出て温泉に向かう。

リズ曰く、温泉地には大きな温泉施設があって、その周りにいくつかの宿があるということだった。

「もっと遠くに行けばそれこそ秘湯って感じの温泉もあるんだけどね。そこまで行くのはさすがに時間がかかりすぎるから、今回はご近所でドワーフの里名物の温泉気分を楽しんでよ」

「いや。十分だ。エドバンさんのことも気になるからあまり遠出はできないした。それになによりいい気分転換になる」

「ええ。リズのおかげで自分じゃ絶対に行かないところに連れて行ってもらえるんですもの。とってもうれしいわ」

「ありがとね、リズ」

「あはは。そう言ってもらえると嬉しいな。温泉地までは駅馬車が出てるからそれに乗っていくんだよ。半日くらいで着くから今日はそこで一泊して明日また戻ってこよう」

簡単に予定を組んでさっそく駅馬車の乗り場に向かう。

十人ほどが乗れる馬車は満席で、みんなそれぞれ楽しそうな顔をしているのが印象的だった。

ゆったり流れる景色を見ながらのんびり進む馬車に揺られる。

(こんなにのんびりした気分になるのはどのくらいぶりだろうか? もしかしたら、この世界に生まれ変わったと知ってから始めてかもしれない。そうだな。なんだかんだ頑張ってきたもんな、俺。いつも何かの目標に向かってけっこう必死にやってた気がする。思えば、けっこう忙しい日々だったかもしれん。日々、薬草を探して、剣を振って……。今思えばけっこうな無茶もしたな)

そんなことを思っていると不意に目の前にオレンジ色の物体が差し出されてきた。

「おみかんもらったの。アレンもひとつどうぞ」

そう言うマイの後を見るとニコニコ微笑む年嵩のご婦人の姿が見える。

私は「ありがとう」と言って微笑むと、ゆっくりみかんの皮を剥き始めた。

やがて馬車が温泉地に到着する。

さっそく適当な宿を取ると、私たちはワクワクした気持ちで温泉に向かった。

(ほう。スーパー銭湯って感じか? けっこう広そうだな)

そんな感覚の建物に入り男女で別れる。

「俺の方が早いだろうから、そこの休憩所で待ってるぞ」

と決め、私はさっそく男湯に入っていった。

広い脱衣所を通りさっそく中に入る。

そこには二十人くらい入れそうな大きな湯船や薬草風呂などの小さな湯船が三つほど設えられていた。

「ぬっはぁ……」

大きな湯船に浸かり思わず息を漏らす。

(これだよ。これ。ああ、全身の力が抜けていく……。こりゃたまらん)

オヤジ臭い感想を漏らし、体が温まったところで湯から上がり、いよいよ露天風呂に向かう。

「おぉ……。こりゃ……」

私はその広さや前世の記憶と寸分たがわぬ完璧な露天風呂に思わず声を漏らしてしまった。

さっそく入りまた息を漏らす。

(いいねぇ。こういうの。心の底からのんびりした気持ちになる。お湯の効能もあるかもしれんが、露天風呂ってのはこういう心の解放ってのが一番の効果なような気がするな)

そんなことを思っているとふと隣にいたドワーフのおっちゃんから、

「兄ちゃん。すげぇ気持ちよさそうな顔してるなぁ。よほど疲れたのか?」

と声を掛けられた。

「ああ。思えばこの十五年働きづめだったからな。それが一気に解放された気分だよ」

「はっはっは。そいつぁご苦労だったな。じゃあ今日はさぞかし風呂上がりの一杯が美味しかろうよ」

「ああ。楽しみにしているよ」

「おう。ここは自分ところでビールを作ってるからな。他の所じゃ飲めねぇ味なんだぜ」

「ほう。そいつはますます楽しみだ」

「ああ。ドワーフの里名物の温泉を心から楽しんでくれ」

温泉ならではの人と人の距離の近さで他愛もない話をしてにこやかに温泉を堪能する。

そして、体が温まっては少し休憩し、またお湯に入っては体を温めるということを何度か繰り返した後、体の芯からポカポカになって私は風呂を上がった。

休憩所で牛乳を飲み、板張りの上にゴロンと横になる。

(これで畳があれば完璧なんだろうが……。はて、畳はこの世界にあるのか? あったら是非体験してみたいが)

などと思っていると、そこに三人がやってきた。

「あ。アレンが伸びてる」

「ほんとだ。湯あたりでもした?」

「いや。気持ちよくて、つい、な」

「うふふ。本当に気持ちのいいお湯でしたものね。気持ちはわかりますわ」

「ああ。みんなもとりあえず牛乳を飲んだらどうだ? 濃いめの味で美味しかったぞ」

「そうだね。サーニャ、マイ。牛乳買いに行こう」

「アタシ、シロップ入りがいい!」

「私も!」

そんなことを言ってきゃっきゃと牛乳を買いに行く三人を見送り私は軽く頬を緩めた。


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