おっさんA、ドワーフと一緒にモノづくりをする04
結局ダッチオーブンだけを買い、グルワッツ商会を後にする。
リズのおススメだという天丼屋で昼を済ませると、私たちは市場に向かった。
足りないものがないか考えながら保存食を中心に買い足し、市場を後にする。
そして、私たちは冒険者ギルドに寄ると、そこで使い捨ての灯りの魔道具を購入した。
「私、灯りの魔道具って初めて見ました」
「ほう。マイは夜行動することが無かったのか?」
「いえ。ありましたけど、足元を照らす小さな光でよければ自分のワンドで出せますから」
「なるほどな。この灯りの魔道具は広域を照らすための道具だからたしかに旅には不要かもしれん。一回の射出で一時間くらい周りを照らしてくれるから夜間戦闘がある可能性のある時は必需品なんだ」
「そうなんですね。今回は洞窟ですから、私はあまり力になれないかもしれませんから、奥に進む時に足元を照らすのは任せてくださいね」
「ああ。それは助かるな。ランタンの灯りだとけっこう心もとないからな」
「ええ。それよりはきっちり照らせますよ」
「ははは。持つべきものは魔法に長けた仲間だな」
「あら。アレンさんったら……」
そんなことを呑気に話し、宿に戻る。
そしてその日はゆっくり休み、明日からの冒険に備えた。
翌朝。
エドバンさんの工房に向かう。
わりと早くに出たので、少し早すぎただろうかと思ったが、店の扉を叩くと、いかにも準備万端といった感じでエドバンさんが出てきてくれた。
「おはようさん。今日からしばらくよろしくな」
「ええ。こちらこそ。採掘の予定はどのくらいだ?」
「坑道の奥まで行くのに一日、その後採掘にはかかっても一日あれば足りるだろう。で帰りに一日の計三日だな」
「了解した。で、聞き忘れてたが依頼料はいくらだ?」
「おう。そうだったな。三日で小金貨十二枚でどうよ?」
「ふっ。少し安いがまぁいいさ。無事帰ってきたら飯を奢ってくれ」
「わかった。とびっきりのステーキ屋に連れてってやる。安いが美味くて大盛りだぜ」
「そいつは楽しみだ」
「おう。じゃあ、さっそく行こうか」
「了解だ」
打ち合わせとも言えない軽い会話を交わし、さっそく町はずれにあるという廃鉱山に向かう。
鉱山の入り口に着いたのが昼少し前だったので、そこで簡単に食事を済ませてから中に入っていくことにした。
ホットサンドを食べ、さっそく中に入っていく。
事前に申し出てくれたようにマイが先頭に立って明かりを灯してくれたが、それはかなり性能のいい懐中電灯くらいの明るさで、十分に足元を照らしてくれた。
「ほう。けっこうな魔力量じゃねぇか。お前さんたち本当になにもんだ?」
「ただ偶然集まっただけのパーティーだよ」
「ふっ。そいつはいいな。いい偶然だ」
「ああ。こういうことがあるから人生ってやつは面白い」
そんな風に世間話をしながら、エドバンさんの案内に従って進んでいく。
坑道の中はけっこう複雑で、きっとエドバンさんがいなければもっと苦戦していただろうと思えた。
たっぷり数時間も歩き、広く開けた空間に出る。
「この奥にある細い坑道がそれぞれ鉱脈につながってる。昔はこの大空間いっぱいにアダマンタイトとミスリルの鉱石が詰まってたって話だからたいしたもんさ」
「ほう。そいつはすごいな」
「ああ。大昔の話らしいがな。まぁ、いいさ。こっちは何本か剣をこさえるのに必要な分だけ取れればいいんだ。採掘作業は明日にしてとっとと野営にしちまおうぜ」
「了解した」
いつもの要領で飯を作り始める。
献立は迷ったが、温かい物がいいだろうと思ってクリームシチューにした。
「いただきます」の声を揃えて食べ始める。
「お。美味ぇな。おっさんの手料理にしちゃ本格的だ」
「そいつはどうも。料理にはけっこうこだわってるからな」
「いい心掛けだ。冒険者のことはよくわからんが、体が資本の商売だってことはよくわかる。そういう仕事をしている人間こそ食事は大事にしなきゃいけねぇ」
そんな話をしながら夕飯を食べ終えると、私たちはランタンに火を灯し、交代で見張りをしながら眠ることにした。
夜中。
サーニャの声で起こされる。
「来たよ! ゴブリン」
そう言われてすぐ私は灯りの魔道具を取り出し、素早く上空に光の球を射出した。
ワラワラと出てくる洞窟ゴブリンの数はおよそ三十。
(よくもまぁ、これだけ出てきたものだな。職人ギルドは日ごろからちゃんと管理してるのか?)
そんな愚痴を思い浮かべつつもさっと剣を抜く。
「リズはエドバンさんを守れ。マイはリズの横で後衛に徹しろ。いざという時は魔法を頼む。サーニャ、一気にカタをつけるぞ」
「「「了解!」」」
そう言って駆け出すサーニャに遅れを取るまいと私も一気に駆け出した。
気味の悪い乱杭歯に黄色く光る不気味な目をした洞窟ゴブリンを的確に斬っていく。
戦闘中チラリとサーニャの方を確認したが、サーニャはいきいきとした様子で愛用の大剣をブンブンふりまわしていた。
(よし。これなら大丈夫だろう)
と思いつつも慎重に敵を殲滅していく。
やがて、サーニャがあっさり少し大きな個体を斬ったところで戦闘は終わった。
「おいおい。本当になにもんだよ、お前ぇら?」
「だから偶然集まっただけのパーティーさ」
いかにも「あはは……」という感じで呆れたように言ってくるエドバンさんにそう答えて困ったような笑みを浮かべる。
するとエドバンさんは呆れたような顔で苦笑いを浮かべつつも、サーニャの方に視線を向け、
「とんでもねぇ業物だと思っていたが、そいつ、賢者様の作か?」
と尋ねた。
「賢者かどうかはわかんない。昔、知り合いから魔法鞄と一緒にもらったの。『ちょっとやそっとじゃぶっ壊れねぇから好きに振り回しな』って言われたから好き勝手振り回してるだけって感じかな?」
「なるほどな。素人が見たんじゃただの大剣にしか見えねぇが、魔力の制御機構がえげつねぇ精度で組まれてる。それこそ竜を相手にしたって壊れねぇだろうぜ」
「あはは。そうかもね」
サーニャの笑顔に一瞬だけ影が走った。
私は一瞬、大丈夫だろうか? と思ったがサーニャはすぐ切り替えていつものようにのほほんと笑っている。
私はどことなくほっとして、エドバンさんに、
「さぁ。戦闘も済んだし、もう少し眠ってくれ。明日が本番なんだろ?」
と声を掛け、休むよう促した。
数時間の睡眠と朝食を経てさっそくエドバンさんが採掘作業に取りかかる。
時折場所を変え、坑道の奥で作業をするエドバンさんをしっかり護衛していたが、岩肌を一目見るだけで当たりをつけ、さすがの手並みで鉱石を素早く掘り出してくれたので、結局なにも起こらず無事採掘は完了した。
「いい石が十分に採れたぜ。ありがとな」
「いや。こっちは仕事をこなしただけさ」
「そう言ってくれりゃありがたい。ギルドで小耳に挟んだんだが、グルワッツ商会も近々この鉱山に入って採掘したいって言ってたらしい。おそらくあっちもアダマンタイトの宝剣で勝負してくるんだと思うぜ」
「そうか。ならば負けられないな」
「おうよ。しっかり気合入れていいもん作ってみせるぜ」
「ああ。楽しみにしてるよ」
そう言って握手を交わし、坑道を後にする。
帰りもエドバンさんの案内のおかげで順調に進み、一日かけて町に戻っていった。
「さて。飯を奢る約束だったな。夕方になったら工房に顔を出してくれ。とっておきに連れて行ってやるよ」
「了解だ」
町の入り口でそう言葉を交わし、二手に分かれる。
私たちはまず銭湯に向かうとそこで冒険の汗を流した。
夕暮れ時、人で賑わう路地を抜けエドバンさんの工房に向かう。
「ステーキ♪ ステーキ♪」
と鼻歌を歌うサーニャを微笑ましく思いつつエドバンさんの工房に着くと、そこには見知らぬ商人らしき男性がいた。




