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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、ドワーフと一緒にモノづくりをする03

「いや、そりゃそうだが……」

驚いて言い淀むエドバンさんに、

「ちなみに、硬さと靭性を兼ね備えた剣を作るにはどんな素材がいる?」

とさらに聞く。

そこでエドバンさんは少しハッとしたような顔をしたあと、少し考えるような素振りを見せながら、

「もし、エルダートレントの炭の火力を最大限に引き出せればって条件付きだが、黒鋼とミスリル、それにアダマンタイトを混ぜ合わせた合金が作れるはずだ。あくまでも理論上だが、おそらく冒険者にとって理想的な剣ができあがるぜ」

と言った。

私はうなずき、ポケットからメモ帳を取り出す。

そして、それに簡単な日本刀の絵を描き、

「昔読んだ冒険小説にこんな武器が出てきたんだ。細くてやや反りがある片刃の剣という説明が書かれていたんだが、どうだろうか? 強烈な硬さと靭性を備えた素材で作るなら理想的な形をしていると思わんか?」

と言ってエドバンさんに見せてみた。

「太さは細剣よりもやや太いくらいがちょうどいいだろう。長さは自由だが、冒険者が森の中で実用的に使うなら少し短めで刃渡りが六十から七十センチくらいがちょうどいいんじゃなかろうか?」

そう言ってエドバンさんに「どうだ?」という視線を送る。

エドバンさんは驚いたような顔で、

「……お前さん、なにもんだ? 久しぶりに血が騒ぐ話を持ってきやがって」

と言い、こちらを問いただすような視線を向けてきた。

「なにもんでもないただのおっさんさ。ただ、たまたま話を聞いて思いついたことを言ってみたまでだな。乗るか乗らないかはそっちの判断に任せるが、どうする? なんなら素材集めの手伝いをしてやってもいいぞ?」

「たしかに理想的な形だ。折れにくそうだし、ちょいと研ぎを入れれば長年使えるものになる気がするぜ。まさしく職人が作るのにふさわしい武器って感じがするな。俺の職人としての魂にもガンガン響きやがる。しかし、なんでそんなに協力してくれるんだ? そっちにはあまり利益のある話じゃないだろう?」

「そんなことはないさ。こっちもしっかり利益を計算してる」

「というと?」

「ドワーフの職人を何人か紹介してくれ。腕のいい本物の職人をな。で、その職人が作るこだわりの逸品を遠くの町の冒険者ギルドか商業ギルド、もしくは武器屋に直接卸すってわけさ。質のいい武器は遠くの町じゃかなりの高級品だ。それをいくらかでも安く仕入れて、暴利にならない程度の値段で売り抜けばこっちは十分利益が出るし、エドバンさんの言うドワーフの職人の魂ってやつを世に広めて冒険者の命を守ることにつながる。売り手も買い手も世間にも好かれるいい商売になるってわけさ。どうだ? けっこうな利益だろ?」

「けっ。若造のわりにいいこと言うじゃねぇか」

「ふっ。これでもいちおういい歳したおっさんだからな」

「へっ。俺から見りゃただの小僧よ」

「ははは。そりゃそうだな」

そんな話で最後は笑い、硬い握手を交わす。

「素材は市場から集めるつもりだったが、そっちが冒険者ってんなら話は別だ。この町の外れに昔グルワッツ商会が持ってた廃鉱山がある。もうとっくの昔に掘り尽くされて今は職人ギルドが管理してるんだが、奥に行けば少量のミスリルとアダマンタイトが取れるんだ。そこの採掘許可を申請しておこう。おそらく許可はすぐ下りるはずだからな。で、お前さんたちを護衛で雇うからよろしく頼むぜ」

「なるほど。いい素材を市場価格より安く手に入れようってことだな?」

「おう。そういうことだ」

「ちなみに、魔獣が出るのか?」

「ああ。奥だと洞窟ゴブリンか定番のゴーレムだな」

「了解した。そのくらいなら問題ないだろう」

「よっしゃ。決まりだな。明後日の朝、また来てくれ」

「ああ。いい取引をありがとう」

「へっ。そりゃこっちのセリフさ」

そんな約束を交わし、私たちはエドバンさんの店を後にした。


夕暮れに染まりかけている路地を歩きつつ、

「すまん。ちょっと勝手に決め過ぎたか?」

今さらながら少し反省してみんなにそう聞いてみる。

しかし、最初にリズが、

「いえ。商売に関しては私も似たようなことを考えてたから大丈夫だよ」

と笑顔で言ってくれると、サーニャとマイもそれに続き、

「冒険できるんならなんでもいいよ!」

「ええ。採掘現場に立ち会うなんて初めてだから楽しみですわ」

とにこやかに了承してくれた。

少しほっとして頬を緩める。

「さて。晩飯はなんにしようか?」

「あ。それなら任せて。美味しい店知ってるから」

「なに? どんな店?」

「ただの焼肉屋さんなんだけど、モツがぷりっぷりで美味しいの!」

「それは楽しみですね。私モツ好きなんですよ」

「そうだな。冒険中はなんだかんだでモツは食わないから、俺も久しぶりだ」

「ふっふっふ。楽しみはそれだけじゃないよ。なんともつ鍋を頼むと〆にドワーフ麺がついてくるの。それがまた美味しいんだから」

それを聞いて私の前世の記憶がバッと蘇る。

(ドワーフ麺ってあのラーメンそっくりの麺だよな!? そうだ。ドワーフの里と言えばラーメンじゃないか。なんで忘れてた? チキショウ! おいおい、しかももつ鍋の〆にラーメンだって? それは最高以外のなにものでもないじゃないか!)

そう思って「くわっ」と目を見開くとリズがドヤ顔で、

「美味しいよ」

とまたさらに私の胃袋を刺激するようなことを言ってきた。

夕方の人出でにぎわう石畳の通りを抜け、路地にあるいかにもな焼肉屋に入る。

そこはいわゆる大衆焼肉といった風情の店で、入った瞬間に香る強烈な肉の香りともうもうとした煙がさらに食欲をそそってきた。

「とりあえず、ビール四つ。あと、とりあえず、タンとハラミとシマチョウちょうだい」

リズが慣れた感じでとりあえずの注文を出しつつ席に着く。

「まずは肉で一杯ね。その後は自由にご飯にしましょ。ああ、もつ鍋の分はきっちり空けておいてね。〆の麺もあるからさ」

いつもよりやや興奮気味にリズがそう言うと、そこからは楽しい食事が始まった。

モツを食い、酒を飲む。

楽しい話はいつまでも尽きず、結局また調子に乗ったサーニャが例の軽業師のような踊りを披露し、その場を大いに盛り上げ、楽しい夜が更けてった。

翌日。

やや二日酔いで起きる。

私は二日酔いの薬を飲んでから宿の食堂に向かった。

平気そうな顔の三人を見て、

(若いっていいよなぁ……)

と密かに思いつつ、朝食を取って職人ギルドに向かう。

直接倉庫に向かって昨日会った受付係のおっちゃんを見つけると、さっそく素材の売却金を受け取った。

「金貨七十枚になったぜ。大金だから気を付けてな」

「ありがとう。その点は大丈夫よ。きっちり護衛も付けてますから」

リズとそのおっちゃんが握手を交わし、無事用事が済む。

その後私たちは例のグルワッツ商会に行ってみることにした。

大きくて立派な看板を掲げた大店といった印象の店に感心しつつ中に入る。

中は明るく綺麗で、いかにも大手らしく様々な商品が整然と陳列されていた。

「ほんとにいろんなものがあるね。あっちは鍋だし、こっちは縫い針かな?」

「ええ。大きなものから小さなものまで本当によく揃ってるわね。さすがだよ」

「見ていてなんだかワクワクしますね」

「ああ。これで魔道具まで扱ってたらほぼ完璧だろうな」

「魔道具市場への参入はここも狙ってるんじゃないかな? でも、現状では難しいだろうね。なにせ、この町だけでも三軒の老舗があるから、そこがそれなりの職人を抱えて競争してる感じなんだ。だからグルワッツ商会といえども簡単には手が出せないって感じの構造になってるよ」

「そうか。大手といっても完全な独占企業じゃないってことなんだな」

「ま、そういう感じ。でも、商人としてはいろいろ勉強になることが多いよ」

「だな。おそらく商売の広げ方が上手かったんだろう。その辺を深掘りしていくと面白いかもしれんな」

そんな話をしながら店内をじっくり見て回る。

私は適度な大きさのダッチオーブンがわりと安値で売られているのを見て、即決で買ってしまった。

(本来ならこんな重たいもの冒険者には向かないが、これがあれば野外でいろんなものが作れるようになるからな。シチューもよく煮込めるし、なんならローストチキンなんてものもできるから、きっとみんな喜んでくれるぞ)

とややホクホクで会計を済ませる。

そのついでに、

「武器が見当たらないが、どこに並べてあるんだ?」

と聞くと、

「武器売り場は二階でございます」

という返事が返ってきた。

(なるほど。さすが大商会。売り場が二つあるのか)

と感心しながら二階に向かう。

そこには本当にたくさんの種類の武器が並べられていた。

手近にあった剣を手に取ってみる。

値段は小金貨三枚と驚くほど安く、持ってみた感じもそこまで悪いとは感じなかった。

(なるほど。この品質でこの値段なら職人が対抗できないわけだ。おそらく安い鉄を使っているだろうから耐久性という点ではたしかに問題がある。しかし、軍なら問題にしないだろうな。それに駆け出しの冒険者ならまずこちらに目が行く。本当に上手い商売をしているな)

そんな感想を抱き、剣を棚に戻す。

そして、やや高い所に陳列された金貨十枚もする高級品を手に取ってみた。

(お。こっちはイマイチだな。使い勝手が悪そうだ。それに装飾も少し入りすぎているような気がする。なるほど、これは指揮官とか貴族が飾りで持つ剣だな。なるほど、これはこれで需要があるのかもしれんが、こういう所に職人の強みを当てると勝機が見出せるわけか。なるほどねぇ)

そんな私の横にサーニャがやってくる。

サーニャは私の持っている剣を一瞥すると、

「それ、つまんないね」

と一言でバッサリと斬り捨てた。


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