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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、ドワーフの里を目指す02

やがてサーニャが立ち上がり、

「ごめんね!」

といつもの明るい笑顔でそう言ってくる。

(強がっている)

と率直に感じたが、その強がりが今のサーニャの精神状態を支えるには必要な強がりだと思ったので、

「いいさ」

と笑顔で応じた。

さっきのベリーの木があった一画に戻り、野営の準備を整える。

時間には余裕があったが、その日はなんとなくここでゆっくり過ごすのがサーニャにとっていいことなのだろうと思い、場所を借りて野営をすることにした。

サーニャの好きな濃いめの味付けで鶏肉を炒め、ご飯の上に盛る。

「美味しそう! いただきます!」

と言うサーニャはあくまでもいつも通りに見えた。

その夜、なにやら腐葉土の匂いを強くしたような匂いと不穏な気配にふと目を覚ます。

私が気付く以前にサーニャが気付いていたらしく、サーニャはすでに剣を構えていた。

「みんなを起こして!」

そう言われてリズとマイを起こす。

リズもマイもびっくりした様子だったが、すぐに武器を取り構えてくれた。

「何かわかるか?」

「たぶん、トレント。もう狙われてるよ」

「わかった! リズ。サーニャの背中を守ってくれ。マイはできるだけ距離を取って援護。俺が護衛につく」

瞬時に指示を出し、マイと共に後方に向かう。

すると藪の中からシュルシュルと木の根が伸び、こちらに襲い掛かってきた。

「させないよ!」

サーニャが木の根を大剣でぶった切る。

リズはその後に続いて防御魔法を展開した。

四方八方から襲ってくる木の根をサーニャが斬り、リズが守るという構図ができあがる。

サーニャは縦横無尽に動き回っているがやや苦戦しているような様子が見えた。

リズの防御もやや押されている。

(意外と厄介な相手だな)

私はそう思いつつマイを守りながら後方に下がると、そこで一気にマイが魔法を放った。

トレントの根がバキバキと砕け散る。

それでサーニャとリズはずいぶん楽になったように見えた。

そこで私は、思いつき、

「マイ。火魔法はいけるか?」

と聞いてみる。

マイが火魔法を使えるかどうかは聞いていなかったが、もしやと思って聞いてみると、

「はい。でも、ちょっと時間がかかります」

という答えが返ってきた。

「わかった。サーニャ、リズ。時間を稼いでくれ!」

「「了解!」」

そう言ったところでマイがなにやらつぶやき始める。

(エルフ語の呪文か)

私が少し驚きつつ見ていると、マイが、

「いつでもいけます!」

と言ってきた。

「わかった。サーニャ、リズ、退け!」

「「了解!」」

そう言ってサーニャとリズがこちらに走ってくる。

トレントの根はそれを追いかけるように伸びてきたが、私は慌てず、

「木の根が伸びてきている先を狙え」

とマイに指示を出した。

「はい!」

そう答えてマイが火魔法を放つ。

その衝撃はかなりのもので、私は内心、

(これって戦略級の火力じゃないか?)

と驚きつつ、マイに驚きの目を向けた。

次の瞬間、「バゴンッ!」という激しい爆発音がして森に目を向ける。

すると一本の木が青白い炎に包まれ勢いよく燃えていた。

「命中です!」

マイが嬉しそうに言ってくるのに、なんとなく苦笑いで答える。

(火魔法で相手を弱体化させて一気に攻め込むつもりだったが、まさかここまでの魔法を持っていたとは……)

私は内心そう思いながら、勢いよく燃えるトレントの姿を見つめた。

「トレントってほんとよく燃えるよね」

「ああ。そのおかげで燃やした場合の素材は炭だけになっちまうがな」

「あ。でもトレントの炭ってドワーフの里じゃけっこう重宝されるんだよ? なにせ、高温になるから、鍛冶に使いやすいんだって」

「なるほど。じゃあ行った先で売れるな」

「うふふ。良かったですね」

そう言いながらトレントの炎が落ち着くのを見守る。

そうしているうちに、なんとなく夜が明け始めたので、私たちは朝食の準備を始めた。

朝食が終わり、麻袋三つ分のトレントの炭を回収する。

「でも驚いたよ。マイってあんな魔法も使えるんだね」

炭を拾い終わりなんとなくリズがそう話を向けると、マイは少し困ったような顔で、

「けっこう消費魔力が大きいですし、詠唱中に隙が生まれるんで使いどころは限られちゃいますけどね」

と言い苦笑いを見せていた。

「一匹出たってことは、もう何匹か確実にいるということになるが、どうする?」

となんとなくサーニャに意見を求める。

サーニャは少し考えるような素振りを見せたが、

「行こうか。このままここがトレントの森になるのはさすがに見過ごせないしね」

と言い、こちらにちょっと申し訳なさそうな苦笑いを見せてきた。

「じゃあ、探索開始だな。まずはこの村の周辺から見ていこう」

「「「了解」」」

そう言ってさっそく森の中に入っていく。

村の周囲はすっかり森に飲まれていて、歩く道を見つけるだけでもひと苦労といった感じになっていた。

いかにもいそうな森を進んでいると、また腐葉土の匂いを強くしたような匂いが漂ってくる。

「いたな。先に仕掛けたいがリズ、いけるか?」

「体力的にはぜんぜん余裕だよ」

「よし。じゃあリズを先頭に進んでいこう。マイは後方でいつでも撃てるように準備しててくれ。突撃はサーニャ、任せたぞ」

「「「了解!」」」

すばやく作戦を立て、匂いの元へ進んでいく。

するとしばらくして私たちの足下の地面が揺れた。

「出たぞ! あの木だ!」

根を辿っていった先にある不自然に大きな木を指し戦闘開始の合図を告げる。

私は足下から伸びあがってくる根に剣で応戦しつつ、マイを守れる位置についた。

時折出てくる根を斬り払いつつ前線に目をやる。

リズが突進し根の攻撃を防いだところでサーニャがリズの上を飛び越えるようにしてトレントに肉薄した。

「どりゃぁ!」

と叫んでサーニャの大剣がトレントを横なぎにする。

バキッと音がしてトレントが大きく欠けた。

そこにマイの魔法が追い打ちをかける。

マイの放った無数の矢はトレントにことごとく命中し、その表面をガリガリと削っていった。

そこに、サーニャが

「もういっちょ!」

と叫び再び大剣を振るう。

すると先ほど欠けた部分にサーニャの大剣がめり込んで勝敗が決した。

バキバキっと音を立ててトレントが倒れていく。

そしてトレントはあっという間に灰色になって四分の一ほどの太さに縮み、カチンカチンの焼き締められた炭のようになった。

「これはこれでドワーフの里で使い道があるのか?」

「うん。燃やす以外にも、訓練用の木剣とか高級な家具なんかに使われてたと思うよ。ヒトの里だと使わないの?」

「ああ。本当に炭として使う以外の利用法はないな」

「へぇ。もったいない。ってことはドワーフの里に持ち込んで売るのが一番だね」

「そうだな」

そんなことを話しつつ、適当な大きさに割って魔法鞄に詰めていく。

そして私たちはまたトレントを探して森の奥へと入っていった。

もう一体倒したところで夕暮れになる。

その日は交代で見張りをし、少し緊張しながら体を休めた。

翌朝。

一時間ほど歩いたところでまたトレントに出くわす。

昨日と同じような作戦で戦いなんとか勝利をおさめたが、私はなんとなく違和感を覚えていた。

「なぁ、サーニャ。どう思う?」

率直に冒険者としての意見を求める。

サーニャは少し考えるような素振りを見せ、

「エルダーがいる可能性があるね」

と真剣なしかしどこか悲しそうな表情でそうつぶやいた。

(やっぱりか。もしかしたらこの村で過去に似たような経験をしたのかもしれないな……)

と思いつつ、あえてやや平然と、

「そうか。もしエルダートレントがいるとなったら、それを叩けば勝負は終わりだ。周りの子分は親分の分身みたいなものだからな。勝手に萎れてくれる。昨日からトレントとの接敵回数が上がっていることからして、このまま奥に進んでいけばいずれ見つかるだろう。マイ。もしもの時は魔法を頼むぞ」

と言いマイの方に視線を送る。

するとマイはなぜか少し嬉しそうに、

「了解です。こう見えて火魔法の制御は得意ですから、延焼はさせませんよ」

と言ってくれた。

「へぇ。ドワーフ以外で火魔法の制御が得意な人なんて初めてかも」

「そうなんですか? なぜか子供のころから得意だったんですよ」

「すごいね。それって才能じゃん!」

「えへへ……」

女子三人がそんな話をしているのを聞き、

(ああ、いつものサーニャに戻ったな)

と少しほっとする。

そして私は、

「じゃあ、行こうか」

と軽く声を掛け、森の奥へと進んでいった。


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