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おっさんAの異世界冒険譚 ~転生者、詰みそうな町を事業計画で立て直す~  作者: タツダノキイチ
第一部

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おっさんA、海に行く03

「生姜焼き♪ 生姜焼き♪」

と即興で妙な歌を歌いつつ、解体しているサーニャに、

「今日食べる分は取ったから先に料理を始めておくぞ。そろそろ日が暮れるからキリのいいところで終わらせて、続きは明日にしてくれ」

と声を掛け、さっそく生姜焼きを作り始める。

米を炊き、分厚く切ったオークの肉を焼き始めると途端に腹が空いてきた。

ショウガとタレを入れた瞬間、これでもかと食欲を掻き立てる香りが辺りに広がる。

「もうできた?」

そう言ってサーニャが皿を差し出してきたので、

「先に米を盛っておいてくれ。もう少しで完成するぞ」

と言うと、私はさっと肉の仕上げをしていった。

肉全体にタレが絡まり、少しトロっとしたところで、肉を皿の上にドドンと盛る。

「さぁ、できたぞ」

と言ってみんなの前に出すと、さっそくサーニャが、

「いただきます!」

と言って肉に箸を伸ばした。

それに続いてみんなも肉を取る。

私もたっぷりタレが絡まった肉を一枚とると、茶碗に盛られた米の上に一度バウンドさせてから思いっきり肉を頬張った。

「うまっ!」

思わず叫んだサーニャがモリモリとご飯をかき込み始める。

私も、

(うん。やっぱりオークは普通の豚よりも味が濃くて美味いな。特に脂身の甘味がたまらん)

と思いながら、思いっきり米をかき込んだ。

やがて満腹になり星空を見上げる。

「村を守れてよかったですわね」

と声を掛けてくるマイに、

「ああ。地味に大事になるところだったからな。運がよかったよ」

と返すと、リズが、

「ついでにオーク肉を村に卸したらお小遣いにもなるしね」

と商人らしいことを言ってきた。

「そうだな。この美味さは是非村の人たちにも味わってもらわなければいかん。こんな田舎の一般の家庭でオーク肉なんて食べる機会はそうそうないだろうからきっと喜ばれるぞ」

「そうだね。みんながそれぞれに喜んでなりたつ商売が一番だって改めて思ったよ」

「商売ってのは奥が深いな」

「うん。だからやめられないんだよね」

そんな話をして自然と笑みを漏らす。

私はまた何気なく星を見上げ、

(よかったな)

と心の中でつぶやいた。

また二日ほどかけて村に戻り、肉屋にたっぷりのオーク肉を卸す。

相場よりも少し安い値段で卸したから、きっと村中に行き渡ることだろうと思いながら、宿に入り、その日も満ち足りた気持ちで床に就いた。

翌日。

さっそく村長の家を訪ねると、

「できあがりましたので、見ていただけますか?」

と言われさっそく品を見せてもらう。

綺麗に織られた薄布はなんとも涼やかで言われてみればほんのり草の香りがした。

(なるほど。この匂いは衣服には厳しいかもしれんな。しかし、この蚊帳なら問題ないだろう。むしろ爽やかな香りで安眠効果もありそうだ。それに冒険者や行商人が使うテントの生地なんかにも応用が利きそうだな。ということはあの薬液自体も産業になりうるぞ。あの薬草は気候と土壌の条件さえ満たせば栽培もそれほど難しくないはずから、是非村長に薦めてみよう)

そう思って見ている私の横で、村長が、

「どうでしょうか?」

と少し不安げな顔を見せてくる。

私がニッコリ笑い、

「完璧だ。商品にするには、色々改良しなければならないところも出てくるだろうが、それはおいおい商人と話しながらやってみてくれ」

と伝えると、村長はほっとしたような顔で、

「ありがとうございます」

と言ってきた。

それからリズを交え、少し商売の話をする。

これから南の町の大商会との間で契約の話が進むだろうということや、薬液の生産自体が商売になる可能性があるから、そっちも頑張ってくれと伝えると、村長はやや緊張したような表情を見せながらも、

「頑張ってみます。本当にみなさんのおかげで村の明るい未来がみえてきました」

と前向きな言葉を言ってくれた。

そんな村長宅を辞し、宿に戻る。

そして、昼食のオーク肉がたっぷり使われた麻婆豆腐を食うと私たちはまた南の町に向け出発していった。

二泊ほどして南の町にたどり着く。

そこで、私たちは宿をとるとさっそく商業ギルドのエメローダさんを訪ねた。

受付で、エメローダさんの名前を出すと、

「ギルドマスターですね。少々お待ちください」

と言われ、そこで初めてエメローダさんがギルドマスターであることを知る。

(なるほど。それで、話が早かったわけだ)

と感心していると、カウンターの奥からエメローダさんがやってきた。

「先日はどうも。あれから話は順調に進んでいるようですよ」

そう挨拶をしてくるエメローダさんにリズが、

「それはよかったです。本日はそれとは少し別件でお伺いしましたの」

と話を切り出す。

するとエメローダさんはやや怪訝な顔で、

「別件、ですか?」

と尋ねてきた。

「ええ。リッツ商会のヒースさんにお約束を取り付けたいと思いまして。お取次ぎをお願いできますでしょうか?」

「ヒースさんですか? それはかまいませんが……」

「とってもいい商売の種を見つけましたので、是非、ご意見を伺いたいと思っているんですよ」

「左様でございますか。あの方はこの町で長年顔役をやられてきた方です。手強いですよ?」

「ええ。存じ上げております。だからこそ、一番に新しい商売のお話を持って行きたいと思ったんです」

「なるほど。それはある意味正解かもしれませんね。かしこまりました。使いの者を出しますので、明日の朝またお越しください」

「ありがとうございます」

話はすぐに終わり、商業ギルドを後にする。

ギルドを出るや否や、

「ていうか、エメローダさんってギルマスだったの!?」

と驚くリズに、

「ああ。私も驚いた」

と苦笑いで答える。

「もう、めっちゃ緊張したよー」

と言って軽くため息を吐くリズの頭を軽くポンポンと叩くと、私は、

「お疲れ。でも明日からが本番だからな」

と笑顔でそう言った。

「だね。気合入れなくっちゃ」

「ああ。がんばれ」

と声を掛けあっているところにサーニャが、

「お昼はパスタにしようよ。なんとなくそんな気分なんだ」

と話しかけてくる。

私もリズもなんとなく救われたような気持ちになって、

「ああ。いいな。さっそく店を探してみよう」

「ですね」

と言うとどこか楽しげに尻尾を揺らして歩いていくサーニャの後に続いた。


翌朝。

さっそく商業ギルドに出向きエメローダさんを訪ねる。

「さっそくですが、昼食をともにしたいとのお返事でした。この通りの一本向こうにある宿をひと部屋押さえたそうですから、そちらにお向かいください。ああ、今、簡単な地図をお渡ししますね」

という意外な申し出に少し驚きつつもお礼を言って商業ギルドを後にした。

喫茶店で軽く作戦会議を開き、その宿に向かう。

いわゆる高級宿と呼ばれる類の宿の外観に少し圧倒されつつも、私とリズは軽く目を合わせ、コクンとうなずき合ってからその宿に入っていった。

受付で話すとすぐに部屋に案内される。

一番上の階のどこからどう見ても高そうな部屋に入ると、あの商談の時にあったいかにも威厳のありそうな老紳士が立ち上がって出迎えてくれた。

「この度はお時間をいただきありがとうございます」

と丁寧に頭を下げるリズに、ヒースさんが、

「いいえ。新しい商売の話となればいち早く聞きたいと思うのが商人の性ですからな。それに、あなた方には先日のお礼もしたいと思っていたところなので、軽く一席設けさせていただきましたよ」

と答えると私たちはさっそく席に着き、そこに昼食が運ばれてきた。

どれも見事な盛り付けがされたお皿を見て、

(なるほど、こういう風に盛り付けると、料理全体に高さが出て見栄えが良くなるわけか。それにこの緑のものが少し入っているのがいい。この一つだけで皿全体に華やかさが増してる)

とやや呑気に思いつつ、さっそく料理を口に運ぶ。

味はそれなりに美味しかったが、飛びぬけて美味しいというわけでもなかった。

そんな食事が始まり、いきなりヒースさんが、

「で。今回はどのような?」

とリズに話しかける。

リズは一瞬詰まったような感じで息を呑んだが、「ふぅ……」と周りにわからない程度に深呼吸をすると、

「海辺の町の蚊の問題はご存じですか?」

と話を切り出した。


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