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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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8話 ゲームと麦茶

◇◇◇

 授業もそこそこに外を眺めながら今後のプランを考える。


 当面は世界ガチャだな。魔法とか超技術がある世界を引くまで即クリアで良いと思った。後の考察の為に地図と歴史書は購入しておきたい。

 そう言えば、あの赤い薬。エリクシルって言ったよな。なんとなしに机の下で検索をする。エリクシル……エリクサー、賢者の石とも呼ばれ不老不死の霊薬とも……。


「賢者の石!?」

 思わず大声で突っ込んでしまって周囲の奇異の目が向けられるが、どうでもいい。まじか?病気が治るってだけならいい。不老不死って……まさかあの子が?いやいや、ねーだろ。そんなレアアイテム中のレアアイテムがたまたま有るはずがない。


 少し動悸がしてきたが問題無い、NPCが一人不老不死になっちゃっても別にあれだよ。ぜーんぜん問題無い。


 動悸が激しくなり、ペンを持つ手が震える。気が付くと俺は手を挙げて保健室へと向かった。思ったより繊細なんだな、俺。考え事が捗る。世界ガチャもいいが、その前に天戸の所持品はしっかり確認しとかないといけない。他にもどんな伝説級、神話級のアイテムを持っているかわからない。


 午後の授業を抜けて、保健室で休む。あぁ、何かいいな。特別扱いな感じが。そんな事はどうでもいい。


 だが、考えてもしょうがないよな、確認する術はないんだから。病で幼くして死んでしまうのと、不老不死となり生き続けるのはどっちが幸せでどっちが不幸なのだろう。


 ――俺なら不老不死は嫌だ。ハルが居なくなって、両親も居なくなって、天戸も居なくなる。あとなにがあるんだろう?その後の人生で、もっと大事な物が見つかるんだろうか?


 ま、考えてもしょうがない。俺は起き上がる。考察を終えたならそれ以上の悩みは無駄だからしない。解決しないからね。


 カーテンから天戸がチラッと顔を見せる。

「あ、起きてる」


「何すか?天戸さんともあろうお方が俺なんかの所に」

 小声で笑いながら『うざ』と言った後でカバンを手渡された。予想外の行動に少し驚く。

「サンキュー」


「体調平気?何かあった?」

 真面目に心配そうな顔をしてきたが、天戸に伝えたところで良いことは何一つ無いな。

「いや、折角だから居眠りじゃなくてガチ寝したいなって」

「……私の心配を返せ」


「あぁ、心配してくれたんだ。天戸さんともあろうお方が俺なんかを!?」 

「だからうざいっての」


◇◇◇

 保健室からそのまま下校する。少し後ろを天戸がついて来る。

「なんでついてくんの?」

「ん?ゲーム」


 まじか、結局うちに来るのかよ。あれだけ文句言っておいて。

「あのねぇ、天戸さん。男の子の部屋はそんなに急には入れないんだよ」

「あなたの部屋に入るなんて言ってないでしょ。リビングでできないの?」

「……できるけど」


 家につく。案の定誰もいないが別にそれで変な空気になることもない。

「おじゃまします」

「今持ってくるからその辺に座ってろ。余計なところ漁るなよ」

「それは自分ならそうするから、って言うこと?」


 無視して部屋に向かう。部屋は汚いが全く問題ない。部屋にあげる必要が無いのだから。


 一昔前のハードは押入にしまってある。ドリクエと、モンステラハンター、――通称テラハンを持って行けばいいか。あとマンガか。何だろう、ちょっと楽しくなってきた。


◇◇◇

「あっ!あっ!出たっ!危ないっ!」

 天戸は興奮しながらスライムを倒し続ける。やはりハルにレベル上げをさせられていたようだ。だが、天戸が楽しんでいたのなら別に良いのか。

「しばらく戦ってると夜になるのよ」


 ドヤ顔で言われた。このゲームの持ち主である俺が知らないと思っているのか。まぁ、面白いから知らない振りをしようと思う。


「へぇー、気が付かなかった。よく気づいたな」

「何回もやってるからね」

 天戸は只ひたすらにマップを歩いて、スライムを倒し続けた。

「楽しいか?」


 天戸は笑った。

「ふふ、子供の頃は楽しかったけど今やるとあんまりね」

『やっぱりハルがいないから』と言いそうになって天戸は止めた。盛り上がっておいてよく言うよ。


 お次はテラハン。熊から逃げてハチミツを集める。

「ふふふ、こっちは楽しいわ。あっ、ヤバい。クマ来た!」

 ハンターが逃げると天戸の体も動く。

「頑張れ~」

 冷蔵庫を開けながらおざなりに応援をして、麦茶を取り出す。冷たくてうまい。

 

 出来るだけキレイなグラスを選んで、天戸にも麦茶をあげる。

「ほらよ、ありがたく飲みな」

「ありがと。恩着せがましくなければもっとよかったわ」

「うちは誰かさんの家みたいに金持ちじゃないんでね」


 天戸は黙々とハチミツを集めている。それを見ていると、なんだか俺もハチミツが食べたくなってくる。また台所に行き、食パンにハチミツをつけて食べる。


「よければどっちも貸してやるよ」

「ありがと。だいぶかさばるけど、当然家まで持ってきてくれるのよね?」

「……デリバリーは別料金となっておりますが」

「ケチ。あと漫画。ハルも読んでたって言うやつ」


「天戸にも合うかは知らないぞ」

「でもいいの。読んでみたいだけ」

 よそ見をしながらも的確にハチミツを集め続ける、全方位視界の天戸。便利だな、ながらプレイにはもってこいだ。


「その全方位視界ってのはどこでゲットしたんだ?」

 天戸は首を傾げる

「いつだっけ……?割と最初の方。何か武神とかとの修行だったと思うけど」

「あー、はいはい。武神ね、武神。って、おかしいだろ。立ち位置どこだよ」


「その収納は?それが一番欲しいんだよ」

 天戸はチャックを開けながら麦茶を飲む。

「これ?三年くらいしたら使えるようになったけど……、そう言えば他に使っている人見た事無いかも」


「あっ、そうだ。中身全部調べさせろよ。それがいやならリスト作ってこい」

「嫌よ。何で命令されなきゃいけないの」

「お前が脳筋プレイしかしないからだよ。何が出来るかが分かればもっとやりようがあるんだよ。前回の薬みたいにな」


 そう言うと天戸は少し神妙な顔をして、納得したようだった。

「わかった。リストにすればいいのね」

「急ぎな。遅いと俺がチェックする」

「……本当に変態ね。女の子の荷物チェックが趣味なんて」


 ハチミツハンターがうるさいのでもう一つの携帯ゲーム機でテラハンをもう一つ始める。

「天戸、一緒にプレイしようぜ」

 俺がそういうと天戸は真っ赤な顔で怒り出す。


「はぁ!?あなたバカじゃないの!?とうとう化けの皮が剥がれたわね、何が巨乳にしか興味がないよ!そんなデリカシーのない……」


「一応言っておくけど、ゲームをプレイだぞ?何度でも言うがな……」

 天戸のハンターはクマに襲われて瀕死になっていた。

「あー、もう!うっさい!」


「はは、下手くそ。これはハチミツを集めるゲームじゃないんだよ」


 こいつとこうやって遊ぶのも小学校のとき以来だ。何だか懐かしい。


 麦茶って、こんなうまかったっけ?

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