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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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45話 白き闇と金色の鬼③

◇◇◇


 白き闇こと、元異界の勇者ギルティは脅威として駆逐対象だった金色の鬼ことオーギュに一目惚れをしてしまったという。


 確か、白き闇はこっちに来て3年って司祭が言っていた気がする。


 ――今後どうするつもりなのだろう?


 角が生えていて背がでかいが、胸もでかく顔も性格もかわいらしい異世界の彼女と死ぬまでこっちで暮らすのだろうか?

 

 正直ありだと思う。正直うらやましい。だが、確か同行者がいたはずだ。四人で白き闇って言っていたような気がする。


 

 ギルティがこっちの世界で一生暮らすってことは、他の三人も一生こっちで暮らすって事じゃないのか?


 それとも同行者だけ帰る(すべ)があるのか?

 

 俺が考えているとギルティは肩をポンポンと叩く。


「はは、伊織君。お手洗い行こう、お手洗い」


「いいっすけど」


 天戸がチラッと見てきたので、僅かに首を横に動かす。


「どうだい、伊織君。この世界の食べ物も美味しいだろう」


「あー、単刀直入でいいっすよ。オーギュさんに聞かれたくない質問っすよね」


 横目でギルティを見ると、ニッコリと笑って俺を見ていた。

「さっすが。察しがよくて助かる」


「他の三人だけ戻したいんすよね?」


 ギルティはわざとらしく大きなため息を吐いて俺の肩をバシバシ叩く。


「ははは、何だよもー。全部バレバレじゃないか。俺の方が年上なのにこんなわかりやすくてどうするんだよ」


 何というか、気持ちのいいおっさんだと思った。32歳だっけ?


「結論から言うと、やった事ないからわかんねーっす。帰還術みたいなのがあるんすよね?」


「あぁ、一人の時に試した事があったからやり方を教えてみたりもしたんだが……召喚された本人しか使えないようなんだ」


 あー、やっぱりそうだよな。


「……一応聞いてみようと思うんすけど、ギルさんはずっとここにいようと思ってるんです?」


 俺の言葉にためらい無くギルティは頷いた。


「あぁ、勿論だ」


 だよな、重ねて言うがかわいらしくて、胸がでかい金髪美女だ。異世界に残る理由としては十分だろ。


「えーっと、俺の考えですけど。可能性として、同行者だけ帰す方法はあるかもしれないっすけど、今の時点では俺たちもそれは知らないです」


 実際にトイレに移動して用を足しながら俺達は会話を続ける。


「……手洗いが長いって怒られちゃうな。もしよければ、また後で話を聞かせて欲しい」


「うーっす」




 密談から戻ると、天戸とオーギュも恐らく同じ様な話をしていたと思う。


 天戸は頬杖をついて薄笑いで俺を見る。


「長いトイレだね」


「はい、セクハラ。俺も今度言うわ」


 戻ってみると、食べ物は全て食い尽くされていた。


 ――脳筋勇者と、金色の鬼によって。




◇◇◇


 昨日から移動しっぱなしだったので、魔物区の見学は明日にすることにした。


 高くそびえるガルガンド城に案内してもらう。


「ギルさんのお仲間は城にいるんですかね?」


 俺が問うとギルティは腕を組んで首を傾げる。


「うーん、夜には戻ると思うけどね。日中はあんまりいないよ」


 三人ともこっちで暮らす気なら話は早いんだけどな。多分、そんな事にはならないだろう。



「部屋はどうする?」


「あ、ダブルでお願いします」


「ええっ?!」


 俺の言葉に天戸は赤い顔で声を上げた。


「いやいや、広い方がいいだろ。お前の部屋もダブルで用意してもらえばいいじゃん。あ、狭いほうが落ち着くとかか?」


 天戸は俺をジト目で見てため息を吐く。


「……そうね、広い方が良いわ」




 取りあえず、俺の部屋で双方情報交換を行うことにする。


 いつも通り俺はベッドに寝転がり、天戸はソファに腰掛ける。


「何だか素敵な話ね」


 天戸はニコニコしながらのんきなことを言った。同じような話をしていたのかと思ったらどうやら只の恋バナだったようだ。


相変わらず頭お花畑っすね、と言おうと思ったがあんまり天戸がニコニコしているものだから少し言うのが憚られた。


「……そうだなぁ。本当にうらやましい限りだよな」


 天戸は俺を睨む。


「何が羨ましいのか言ってみなよ」


「まぁ、それはさておき君らは恋バナ以外に何か話してないの?」


「んー、出会いとかその辺の話から始まってどっちから告白したのかとか、今幸せだとかね」


 想像以上にお花畑のスイーツだった。


「それにしても、天戸もそう言う話に興味あるんだな。少し意外だったよ」


「どういう意味よ。女の子は大体皆好きな話でしょ」


 うん、『女の子は』ね。


「毎月告られる皆の人気者天戸さんなら彼氏の2、3人位余裕だろ?」


 俺の発言を聞いて馬鹿にしたように大きくため息を吐く。


「私相手誰でもいいっていいました?……女の子はね、運命を求めてるものなの」


「……何が女の子だよ、主語を大きくするな。どんなだよ、運命的なのは」


「そうね、ギルティとオーギュみたいなのは素敵ね」


「それは聞いた。他のは」


 天戸は少し顔を赤らめてそっぽを向いた。


「あなたに答える必要はないわ」


 何だよそれ。


 せっかくいい気分のところ申し訳ないけれど、本題に入ろうかな。


「ギルティは一生こっちで暮らしたいってさ」


 クッションを抱いて嬉しそうに脚をパタパタする天戸。


「ふふ、そう。そうよね」


 はぁ、気が重いな。やはり天戸はまだ気が付いていない。


「……白き闇は4人なんだよ。他の3人もそれで良いならいいんだけどな」


 天戸は足のパタパタを止めて、困った眼で俺を見る。


「……どうするの?」


「現状どうしようもない。残るか、ギルさんが帰還を使うか……同行者がオーギュを殺すか」


 天戸は泣きそうな顔になってしまった。


 俺は大きくため息を吐く。


 ……泣けばどうにかなると思っているのか、こいつは。


「どうにかしてやろうぜ、俺たちでさ」





 


 

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