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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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32話 100年後の君へ

◇◇◇


 天戸は顔を隠したままそこまで話すと沈黙した。息遣いから、泣いているだろう事が(うかが)える。辛気くさいのもアレなんで少し元気づけておこう。


「泣くなよ」


「泣いてない!」


 よかった、元気になった。


 そして、少し考える。



 まず、確認するべきは①今回の脅威は100年後の魔王と同一なのか?②今回の脅威を取り除くべきか?だろう。そして、③100年後の天戸達に何ができるか、だ。


「100年後までここにいるってのは現実的じゃ無いよな」


 天戸は顔を上げて目を拭いている。

「そうね。寿命で死ぬ可能性の方が高いと思う」


 ほら、泣いてるじゃん。と言おうと思ったけど、言うと怒るから言わない。


「一番いいのは勝てる事だよな。次いですぐ逃げられる事。んで、天戸。一つだけ約束しろ」


「……何?」


「俺が指示を出すか、お前がまずいと判断したらすぐ強制帰還しろ」


 天戸は珍しく素直に頷いた。


「わかった」



◇◇◇



 100年後の天戸たちに何が出来るのか?


 いくつか考えはある。だが、まずは情報収集だ。


 天戸の言うように街は活気に溢れていて、遠目に見える教会もきれいだった。


 だが、天戸の表情は思わしくない。それもそうだろう、天戸にとってここはハルが死んだ街だ。吐き気を抑える為か、口元を手で押さえて街を進む。


「宿で休んでていいぞ」


 さすがの俺もそのくらいのデリカシーはある。

「嫌よ。それで野垂れ死なれたらさすがに立ち直れないわ」


「オッケー。そんじゃしっかり守ってくれよな」

「図に乗るな」


 天戸さんの調子が出てきたところで街を歩く。金貨を換金しておこう。


 露天で適当にドリンクと軽食を買い、食べ歩く。


 あの世界の魔王……ジラークとか言ったか?そうか、異界の勇者を待ち伏せするって言うパターンは初めてだな。例えば今ここで現れて即座に首を刎ねられるかと言えば難しいよな。


 少し考え込んでいると、天戸がドンと肩に体当たりをしてきた。

「眉間にシワ寄ってる。もっと自然にしないと怪しいわ」


「ふはは。言うじゃねーか。それならお前も楽しそうに笑ってもらおうか」

「容易いわ」


 そう言うと天戸はにこっと優しく微笑んだ。


 俺は手を横に振る。

「いやいや、それ仮面だから。そう言うのいいから」


 天戸は自嘲気味に笑う。


「そうね。だってハルの真似だもの。私にとってハルが理想の女の子なんだから」


 俺は腕を組んで思わず納得してしまった。

「でも、確かにそれで学校の皆を虜にしてるってすげーよな。お前才能あるよ。詐欺師か女優の」


「ありがと。あなたもペテン師の才能があると思うわ」


 少し笑った。詐欺師にペテン師か。……ん?



 考える。



 100年後の天戸を、ハルを救う(すべ)を。


 今の天戸が戦えば、或いは勝てるかもしれない。だが、相手は狡猾だ。負ける相手の前に姿は現さないだろう。


 どうするか?


 少なくとも、敵は異界の勇者を知っている。この街辺りに現れることは知っていたのか偶然か分からないので、知っていると仮定する。


「天戸。紙とペンあるよな?」


 不意に顔を上げた俺をきょとんとした顔でみる天戸。


「えぇ。もちろん。何に使うの?」


「手紙を書こうと思う」


 俺の発言に天戸は怪訝な顔をした。




◇◇◇


 

 この世界の脅威は滅竜と言う竜の復活らしい。魔王ジラークの情報が少なすぎるのでなんとも言えないが、同一では無さそうと思っていいのか?


 滅竜は三百年前に異界の勇者により封印され、間もなく封印の効力が失われるという。


 封印から目覚めた滅竜は七日で世界を焼き尽くすと言う。


 マンゴー風飲料を買った行商人情報だ。詳しく聞きたければ南東の祠に行くといいと教えてくれた。


 それにしてもこのジュース旨いな。


「どうするの?」


 天戸はいつも通り腕を組んでいる。


「うん、行くよ。その前に教会は?行って平気?」


「……えぇ。必要なんでしょ」

 


 中央通りから少し入ったところにある教会。

 

 天戸は俺の服の裾をつまむ。足は震えている。


「大丈夫だ。俺は逃げ足が早い」


「先に逃げる気なの?」

 

 口をとがらせて俺の批判をする。


 ギィと重く低い音を立てて扉を開く。


 中は他の世界にもあるような、綺麗に手入れのされた教会だった。


 天戸は中に入れない。足が震え、呼吸も荒い。


「やめるか?」


 天戸は首を横に振る。



「……ごめん。手、繋いで」



「……しょうがねーな」


 手を繋ぐと天戸は大きく何度か深呼吸をした。


 コイツと手を繋ぐなんてのも何年振りだろうか。


「平気。行こう」


 天戸はいつもの天戸になった。


 教会内も、特別変わったことは無い。聖堂の隅に話に聞いた懺悔室があった。同じ物だろうか?


「……あそこにハルと2人で入ったの」


 許可を得て入ろうとするが、流石に天戸は無理だろう。


「中見てみる。そこいて」


「……平気よ。私も入る」


 


 懺悔室の話を聞く方へ2人で入る。


 高校生二人だと、さすがに少し狭い。


 天戸は小さな声で『ごめんなさい』と呟いた。



「いやいや、懺悔はあっちな?狭いから出ろ」


「なっ……嫌よ」


 頭を叩こうと思ったが狭いから頭突きをする。

「痛っ!何するのよ!」


「謝るな。お前は悪くねーんだ。お前も今一度知っておくと良いよ。……誰が一番お前達二人を救いたがってるかをさ」


 天戸は近い距離でじっと俺をみる。

「……ほんと、ペテン師ね」


「どういう意味だよ」


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