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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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24話 下駄箱にラブレター

◇◇◇

「伊織くん、おっはよ~」

 登校中に急に背中をバンと叩かれて、誰かと思ったらクラスメイトの淡島(あわしま)瑞奈(みずな)だった。明るく元気な巨乳女子高生。


 小学校の時に同じクラスだったこともあるらしいが、全く記憶には無い。最近妙に絡んでくる事が多い。

「おはよ、瑞奈(みずな)


 にっこりと柔らかな笑顔を(たた)える我らが脳筋天戸うずめさんは仮面の付け替えがうまい。歌舞伎役者もびっくりの早替わりだ。

「うずめおっはよ~!」

 

 淡島は天戸の腕に抱きつくと、上目遣いに天戸を見る。

「うずめ、見たよ見たよ~。伊織くんの家から出てきたでしょ?!まさかまさかぁ?お・と・ま・り?」


「ちょっと止めてよ、瑞奈。杜居君に迷惑でしょ?お母さんから杜居君のおばさんに届け物があっただけなんだから」


 少し照れたようにはにかんだ顔で淡島の邪推を否定する天戸。すげぇな、俺が同じ事を言っても『黙れ』で終わりだろうな。


 黙ってヘッドフォンをつけようとした俺を制止する天戸。

「ちょっと!杜居君も何か言ってよ!」


 おぉ、何か新鮮だな。仮面云々言っといてなんだけど、これはこれで悪くない。


「淡島、学校のアイドル天戸さんと俺がそういう関係になるはずないだろ?天戸さんはうちの朝ごはんを食べに来ただけだ」

「えっ!?朝ごはんを!?何で?!」


 俺は呆れ顔で首を横に振る。

「さぁね。たまには庶民の味が恋しいんじゃないか?俺に聞かないでくれよ」


 淡島は目をきらきらさせて天戸を見る。

「へぇ~」

 何か根本的な勘違いをしているようだが、説明できることでもないしまぁしょうがない。


 天戸の方からよからぬ気配を感じるが気付かない振りをしよう。


「いいなぁ、ずるい。幼馴染っていいね!」

 淡島はキラキラとした目で俺と天戸に言った。


 天戸はクスリと柔らかく微笑んだ。

「……そうね」

 その顔は仮面じゃないように感じた。


◇◇◇


 登校すると、下駄箱に何かが入っていた。

 ――あれ?マジ?

 心臓が高鳴る。手紙?!マジで!?

 

 反射的にチラッと天戸を見てしまう。天戸はこっちを見ていない。

 教室に入る前にトイレに行く振りをして内容を確認する。


『放課後、校舎裏に来てください』と、可愛い文字で書いてある宛名の無い手紙だった。いやいや、絶対罠だよ。罠。でなければ罰ゲーム。絶対。確実。99.9%


 ……でも、まさかの0・1%があるかもしれないよな?


 ピロン、とメッセージが鳴る。

『いい子だといいね』


 ギクリとした。いや、何故ギクリとしたのか自分でも分からないが。そうだ、天戸は全方位視界を持っているのだ。馬よりすごい。


『いやいや絶対嘘か罰ゲームだろ』


 言われる前に自虐的なメッセージを送るが、予想しない返信が帰ってきた。


『そうとも限らないよ』


 どういう意味だ?返信に困るな。

 

 まぁ、いいか。ほっとこう。


 そして、ウキウキした気分と不安が入り交じった気持ちで放課後を迎える。緊張で吐きそうだ。


 ――放課後、校舎裏。


 正直憧れるシチュエーションだ。


 俺は0.1パーセントの奇跡に賭ける。

◇◇◇

「君が杜居伊織君かぁ」

「ヒャハハハ、真に受けちゃってバカじゃねぇの?」


 放課後、校舎裏。俺は数人の上級生に囲まれることになった。ははは、わかってたよ?微かな可能性に賭けただけだから。


 先輩方の1人は最近天戸にフられたらしい。それで、登下校よく一緒にいる俺に矛先を向けたというわけだ。あれ?俺何か悪いか?

「おい、何か喋ったらどうだよ。ブルッてないでさ」

 先輩が俺の顔を覗き込む。


 あー、でもよかったよ。あいつああ見えて見る目があるな。あんな奴でも大事な幼馴染だ、付き合うならまともな奴と付き合って欲しい。


「あのー、先輩方。ところで俺はどうすればいいんですかね?土下座とかで大丈夫ですか?」


 最大限へりくだったのだが、態度が気に入らなかったらしい。いきなり俺の腹に蹴りを入れてきた。


「っ痛ぇ!?」

 蹴ったパイセンが逆に足を痛がり、疑惑の目で俺を見てくる。

「……このビビり野郎、何か仕込んでるぜ!」


 俺も驚いた。そうか、あの薬の影響で一般人よりかは遥かに強化されていたのだ。天戸から比べれば遙かに弱いだけで。


 それに、魔王だ冥王だ降魔王だのを見た後で不良を見ても……正直何とも。恐怖は慣れだと実感した。


 俺は校舎を裏拳で殴る。ゴッと鈍い音がしてコンクリの校舎が容易く割れ、欠片が飛び散り俺も少し驚く。だが、先輩方はもっと驚く。

「もう天戸に近付かないでくれませんかね?あんな奴でも大事な幼馴染なんで」


 先輩方は何も言わず道を空けてくれた。


◇◇◇

「……はぁ」


 溜め息を吐いてとぼとぼと校舎を出る。

 知ってたよ?99.9%無いって。でもさぁ……夢、見るじゃん?男なら。


 ピロン、と音が鳴る。

『どうだった?』


 天戸も大変だな。あんなのにも好かれるんだから。

『フられた』

『えっ!?呼ばれたのに!?』


 適当に送ったが、確かにおかしい。手紙で呼ばれて行ったのにフられたって……。

 まぁ、真実は知らなくてもいいだろ。天戸が悪いわけでもないし特に害もない。


 返事を送らないでいるとまたメッセージ。

『……元気だしなよ。虫には虫の、あなたにはあなたの良いところだってあるわ」


 ……何故虫を引き合いに出した? 励ましてるのか?



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