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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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21話 三人で行ったよね

◇◇◇

 宿が一部屋しか空いていなくて、且つツインではなくダブルだった。


「じゃあおやすみ」

 天戸は異空間収納に設置してあるベッドへ入り、ジッパーを閉めた。


 俺はダブルベッドを独り占めだ。

「いいよな、あの収納。いつ手に入るんだよ」


 何回か周回しているが、使っている人を天戸以外に見たこと無いことからもレアだろう事が伺えるが。


 あっ、それはそれとして、俺と天戸が宿に泊まったところで別におかしな雰囲気になることもない。ダブルベッドが空いていてラッキーだ。


 それにしても、眠ってこの異世界に来るのに、こっちでまた眠るのって何か不思議だな。


 港町なので波の音がする。

 そして、少し離れて賑やかな声が聞こえる。――祭りがあるって言ってたっけ?


◇◇◇


 祭りの言葉通り、街は夜なのに準備やらなにやらで中々に活気が溢れている。


 天戸から貰ったお小遣いで露天で買い物をする。りんご飴のようなものと、イカ焼きの二刀流だ。ふはは、楽しい。子供の頃三人で行ったお祭りを思い出す。


 気がつくと宿にUターンしていた。

「天戸!祭り行こうぜ!」

 部屋に入り、勢い良くジッパーを開けるとTシャツ1枚で眠っていた天戸は慌ててタオルケットで下を隠す。


「ととととうとう本性を現したのね!?何が巨乳派よ、この性欲の権化!」


「あっ、なんかごめんな。そんな事よりお祭り行こうぜ?」


 天戸はきょとんとして俺をみた。『そんな事より』に反応するべきか、『お祭り』に反応するべきか判断しかねた末のフリーズだろう。


「……お祭り?あるの?」

 で、お祭りを取った。俺はイカ焼きを天戸に見せる。


「おう。夜店出てるぜ。ほら、イカみたいなの焼き!」

 俺の言葉に天戸はクスリとする。

「ふふ、何それ」


「何時までかわかんねーから、早く行こうぜ。パンツ見えてんぞ」


 紳士的な俺の指摘に天戸は慌ててタオルケットで隠しながら俺を睨む。マフラーを着けていれば攻撃を受けていただろうが、さすがに眠るときは着けていないようだった。


 Tシャツに、下は下着か……。もう少し女の子らしい格好で寝ると良いよ。


◇◇◇

「……絶対に許さないわ。今後は勝手に開けた時点で攻撃の意志有りと見なすわ」


 いつもの制服マフラースタイルで、ポケットに手を入れながら天戸はプンプン怒っている。

「人が折角教えてやったのに。1人で祭り楽しんでも良かったんだぞ?」


 無駄に恩着せがましく言ったつもりなので、また噛みついてくるかと思ったら何故か素直に認めて笑った。

 スーっと香ばしい焼き物の匂いを吸い込む天戸。


「ふふ、ごめん。ありがと。お祭りなんて久しぶり」

 天戸は楽しそうに出店を覗く。

 何だろう、俺も嬉しい。


「あれ?天戸?」


 一瞬の隙に姿をくらませてしまった。子供かよ、あいつ。


 何十秒か経ち、後ろから『杜居くん、杜居くん』と呼ぶ声がした。

「……こら、迷子になるぞ……うおわっ!?」


 天戸は薄木彫りのキツネ面を顔に着けていた。

「あははは、びっくりしたでしょ?ふふふ」


 お面を上げて、飾り気なく屈託なく笑う天戸は、仮面を着けて笑う学校での天戸よりも、不覚にも随分可愛く見えた。


「……仮面外した方がいいんじゃねぇ?」

 天戸はきょとんとして『外したよ?』という顔をした。外したのはお面な。


木彫りのお面を顔の横にずらして、楽しそうに通りを歩く天戸。

「そのイカみたいの焼きはどこで売ってるの?」


 さぁ?どこだっけ?店も人も多すぎてよく覚えていない。

「知らね。他のでもいいだろ、あっこれ。リザードの蒲焼だって」

「嫌よ。イカみたいなの焼きが食べたいの」


 子供のように駄々をこねる。お前いくつだよ。精神年齢50歳超じゃないのか?


「食いかけだったらやるよ」

「えっ、いいの。ふふふ」


 差し出したイカみたいなの焼きをパッとすばやく奪い取ると、即座に一口かじる天戸。珍しくニッコニコだ。

「ん~、おいしい」


 酒でも飲んでるんじゃねぇか?って言うテンションだ。……なので、水を差してやることにしよう。

「あっ、間接キスだ」


 イカ焼きを齧る天戸を指差して小学生のような指摘をする。

『変態!』とか何とか罵られるかと思ったが、反応は意外だった。


 天戸は真っ赤な顔をして横を向き、イカ焼きを俺に差し出してきた。

「えっ……、ごめん。そういうつもりじゃないの」

「俺これ食べていいの?大丈夫?よく考えてごらん?」


 まぁ、結果上手いこと水が差せたようでよかった。俺もニッコニコだ。

「……あっ、ダメよ。変態。そういう策略だったのね」

 ワンクッション置いて天戸らしい反応に戻る。結局天戸が食べるらしい。


 二人で色々買い食いをしながら異世界の祭りを楽しむ。


 同時に無言になったが、天戸が何を考えているのかはわかった。多分、天戸もわかっただろう。


「……ハルとも来たいね」

 来たかったね、では無く『来たいね』だ。俺達の間には、いつだってハルがいる。


 小5まで毎年近所の神社のお祭りに行っていた。結構大きい神社だったから、出店も結構たくさん出ていた。親から貰った小遣いを握り締め、三人で待ち合わせてた。


 俺は食べ物そっちのけでクジの類をやっていた。ゲーム機なんて絶対ヒモ繋がってないよな、今考えると。

 天戸は今みたいに食べ物を二刀流で食い歩いて、ハルは俺達を見てニコニコと笑っていた。


 ハルはクジをやったり、食べ物を食べたり、お面を被ったり。浴衣が可愛かった印象が強い。

「ハルの浴衣はかわいかったよな」


 俺がそう言うと、天戸はニコニコしながら杏飴を食べて答えた。

「私も浴衣だったけど覚えていない?随分都合のいい記憶だね」


 ギクリとしたが、まぁしょうがない。覚えていないものは覚えていない。

「まぁ、アレだよ。浴衣とか着物は胸が無いほうが似合うって言うから、きっと似合ってたんじゃないか?」


「ふふふ、ばーか」

 ニコニコ飴をなめながら俺を罵倒してくる。


◇◇◇

 ワイワイと賑やかな祭りは、海神様に捧げる祭りだそうだ。


 天戸はチョコバナナ風の食べ物とカキ氷の二刀流、俺はお好み焼きスティックのようなものを食べながら、生贄となる少女の話しを聞いた。


 16歳までの処女を生贄に捧げることで、海神様の機嫌を取ろうと言う祭りのようだ。


 俺と天戸はまた同時に思いついたらしく、食べ物を食べながら顔を見合わせる。

「……条件大丈夫?」


「セクハラよ、バカ」


 天戸はジトっとした目で俺を見る。

「いやいや、必要な情報でしょ。条件満たしてる?」


 天戸はお面を被ると少女に声をかける。

「私が代わりに行くわ」


 あ、条件満たしてるんだ。

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