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エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を343回繰り返しているようだ~  作者: 竜山三郎丸


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19話 夜の墓場で同窓会

◇◇◇

 ――うちの高校から最寄りのファミレス。

 

「あはは、カンパーイ!」


 ファミレスで淡島となぜか盛り上がっている。淡島の奢りで。


 淡島プレゼンツの謎調合ドリンクを飲む。色はともかくうまい。つーか、どれ混ぜても大概うまい。

「高校生の分際でよく人に奢れるよな。俺なんて小遣い月5000円だけどすぐ無くなっちまう」

「えっへっへー、私は0円だよ。バイトしてるからね、バイト」


 だからテスト悪いんだけどね、と淡島は頭を掻いた。いやいや、笑いごとじゃないだろ。本末転倒だよ。

「それにしても小学校が一緒なんて気づかなかったな。天戸も知らないんじゃねぇ?」


「いやいやいや、知らないはずないでしょ。中学は違うけどね。学区が隣だったからさ」

 俺は1人で納得して、謎ドリンクを飲みながら頷いた。

「あぁ、ならしょうがねぇよな」


 淡島は俺の顔をジッと見ながら首を傾げる。

「うーん、伊織くんとは昔もこうやって話した事あるんだけどなぁ。忘れちゃったかぁ」

 うん、忘れたと言うと語弊がある。最初から知らないんだ。


「淡島、ハルの事は覚えてるか?」

 一瞬間を置いて淡島は少し寂しそうに笑う。

「勿論。うずめも仲良かったもんね。あっ、うずめと言えば久しぶりに会ってびっくりしたよ。すっごい頭よくなってるし、ニコニコ可愛くなってるんだもん!ねっ?そう思うでしょ?」


 俺は腕を組んで話を聞き入る。

「まぁ、可愛いかどうかは別として頑張ったんだろ、きっと。俺はほとんど話をしなかったからわかんねーけど」

「ふーん。でも、よかったね。また話せるようになって。うん、絶対いいよ。うずめも前より楽しそう」


 そうか?俺にはよくわからんな。つーか、このポテト美味いな。もう一個頼んだらさすがに怒るかな?


 意外に楽しく、ファミレスでのひと時を過ごした俺でした。



◇◇◇

 その夜、俺はハルの墓に居た。


 まさかいきなり蘇生をしようなどとは思っていない。越えるべきハードルが多すぎるし、倫理的にもまだ踏み切れない。


 だが、いつかやるだろう。


 やってしまうだろう。それを出来る力が手に入ってしまったのなら。


 ハルは蘇るだろうか?喜ぶだろうか?天戸はどう思うだろうか?もしかして、完全に俺のエゴなのだろうか?


 風の音と虫の声と葉の揺れる音がする。少し離れた所でようやく車の音がする。


「正直に話をするわ」


 頭上から急に声が聞こえて、身体が固まる。――当然、声の主は天戸だ。


 俺は天戸の方を見られない。

「……あ、あぁ、天戸か。どうしたんだよ、こんな時間に」

「その言葉はそのままお返しするわね」


 俺からの返答を待ってか、少し間を置いてから天戸は言葉を続ける。

「正直に言うわ。あなたが一緒に来てくれるようになって、前より心が楽になったし、少し楽しいの。ハルを忘れるわけじゃないけど、一歩だけ前に進めたような気もした」


 天戸はヒラリと樹の上から俺の目の前に降りてきて、ズイっと顔を近づけて俺を睨む。両手はポケットに入っている。スカートで樹上にいるってどういうことだよ。


「何が言いたいんだよ」

「ハルを生き返らせようとしてるでしょ?」


 一瞬の間にいくつかの言い訳が頭に浮かんだ。

「……悪いかよ」

 浮かんだ言い訳は口を出ることは無かった。


 天戸は両手で俺の胸倉をつかんで下を向く。手は少し震えている。

「……私を助けてくれるっていったじゃない」


 ――言った。『俺はこの世界でお前を救うから』、と。


「嘘だったんだ?あはは、ごめんね。1人で真に受けちゃって」

 そう言うと天戸は下を向きながら胸倉から手を離すと少し下がって手を伸ばす。


「……それで私が救われると本当に思ってるなら、もういいよ。もう……、お守りは返して」


 その声は俺の胸を、心臓を、ギューっと鷲掴みにした。


 そして、今更俺にそんなことを思う権利なんかないのかも知れないけれど……、天戸が伸ばしたその手は、やっぱり救いを求める手に見えたんだ。


 天戸はハッと顔を上げる。少し照れた様な顔で。

 俺の両手は反射的に天戸の手を握っていた。


「……どういうつもりなの。離して」

「嫌だ」


 それでも天戸は無理に手を振り解こうとはせずに、俺の言葉を待っているかにも思えた。……ただの思い上がりかもしれないけれど。


「ごめん、自分の事しか考えてなかった」


 正直に、思った通りに謝る。もしかしたら、自分の人生で初めての事かも知れない。


 そりゃ、今まで何度も謝ったりはしてきた。だが、それらは大人に半ば強要されたり、その場しのぎの謝罪でしかなかった。


 でも、今は違う。許してもらえるかはわからないが、間違っていたと気づいた事は伝えたいと思った。


 天戸は呆れたようにクスリと笑った後で口を尖らせた。

「そうね、昔からそうよ。あなた」

「昔はしょうがない。俺は今回の件を謝ってるんだよ」


 天戸は俺に手を握られたまま頭を俺に付けてきた。

「……気持ちはわかるよ。私も同じ事を思ったことがあるもの。……魔法を使えば生き返らせられるんじゃないか、って」


 二人とも暫く沈黙をしたままだった。ハルもきっとハラハラしてみていた事だろう。『えぇっ?!私ゾンビにされちゃうの!?』とかって。


 天戸も同様にハルの事を考えていたのか、慌てて顔を俺の胸から離す。

「あっ、ハルの前でする話じゃないわね。もっと楽しい話にしよ」


「楽しいかは知らんけど、淡島って同小なんだってな。初めて知ったよ」

「うわひっど……。あなたそれ瑞奈に言ってないでしょうね」


「いや言ったけど。ほら、俺正直者だから」

「……どの口がそんな事を」


 あれだな。やっぱ人間正直が一番だ。夜の墓場で天戸と笑い合って、そんな事を思った。



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