合流
今回の話には残酷な表現があります。
煉獄会事務所地下──
煉獄会の事務所の地下、そこには六つの牢屋があった。
四つは誰も入っていなく、一つには白髪の老人が入れられており、もう一つには、四肢を鎖でクロス型に固定させられている女性、愛花と彼女を殴ったりしている三人の男が入っていた。
愛花はそのうちの一人、義正に腹部に蹴りを入れられ口から血を吐く。
愛花の体にはいたるところに痣があり、鞭の跡もあり、喉は焼き潰され声を出すことすら出来ず、左目もくり抜かれている。
蜘蛛の巣の情報を得るためとして彼女を連れてきたが、本当は彼らが楽しむために連れてこられたのだ。
「ボス、次は何をしやすか?」
そう一人の男が義正に聞く。
そして不気味な笑みを浮かべながら答える。
「そうだなぁ、キヒヒッ。
おい、あれ持ってこい」
あれ、と言われ聞いた男は何のことか分かっていなかったが、もう一人の男は分かったのか牢屋から出ていき、少しして焼き印を押すための持ち手の長い鏝を手に戻ってきた。
「こちらを」
義正は男に差し出された鏝を受け取る。
すると右手の人差し指につけていた赤い宝石のついた指輪が光だし、高温になっていると見ればわかるほどに鏝が赤く変色する。
「おい」
指輪の光が収まった後、義正はの方を見て顎で愛花を指す。
すると男たちは愛花のそれぞれの腕を引っ張っている鎖を緩め、上半身を前倒しにする。
義正はがら空きになった愛花の背中に鏝を押し付ける。
「~~~~~~~~!」
牢屋の中には肉の焦げる音と臭い、そして声にならない悲鳴と、苦痛を顔に出している愛花を見て狂気的な男たちの笑い声が満ちる。
その一部始終を見ていた影が普通に足音を立てながらその場を去っていった。
だが、足音を立てていたのにも関わらず、その存在に気付く者はこの場にはいなかった。
間野side
今私たちは煉獄会の事務所の近くの廃墟になっていた屋敷の中にいた。
ここが集合場所らしい。
ちなみに第三部隊は屋敷の外で警戒してもらってる。
あの後、第三部隊員にしれっと紛れて戻ってきた衝太に「部隊長なら勝手にいなくならないで」と怒って、罰を与えた。
「なあ空守、勝手に居なくなった俺が悪いんだけどよ、さすがにこれは…」
と、言いながら衝太は自分の首からつり下がっている吊り看板を見る。
そこには『私は誰にも言わず勝手にいなくなりました』と書いてあった。
まあ、私が書いたものだけれど。
「反省を促すための罰なのだから我慢しなさい。
でも、さすがに戦闘中は外してもいいからね」
「それでもこれから会うやつらにも見られるんだぜ?」
「自業自得ね」
そう私が返すと、衝太は大きな白いため息を吐きながらがっくりと肩を落とす。
今までも何も言わずにいなくなることがあったから、これで反省してくれると嬉しいのだけれど…
それにしてもこの時期にしては寒いわね。
「まあその話は置いといて、少し寒すぎないか?」
「やっぱりそうよね」
この屋敷の中と外では、中の方が気温が低い。
まだ肌寒くあるけれど吐く息が白くなるほどではなかったもの。
「すまない、それは俺のせいだ」
「「!!??」」
突如聞こえた機械的な声に驚きながら声の聞こえた方に顔を向けると、鳥のくちばしを模した仮面を付けているフードを被った男と、真黒で雪の結晶の柄が描かれているマスクを被っている男がいた。
「貴方達は?」
警戒しながら男たちに問う。
「俺達は依頼を受けてここに来た。
俺はクロ、こいつはカラス、そして──」
「私はリハンだよ!」
今まで何もなかった所から突如現れたリハンと名乗る少女に驚いて衝太の隣に飛び下がる。
気配からしてあちらの方が実力は上、だけど雰囲気的に敵意がないように思える。
依頼で、と言っていたから何かしら目的があって私達に接触してきたのだろうけど、警戒はした方がいいわよね。
そう私が考えているとき、衝太が彼らに対して質問を投げかけた。
「お前ら…羽妖か?」
「せいか~い!
よくわかったね!」
と少女は笑顔で答える。
羽妖…有名な組織はすべて覚えてるつもりだったけど、羽妖がどんな組織かは知らない。
だから小声で衝太に聞いた。
「彼らのこと知ってるの?」
「あいつらは万屋羽妖、対価さえ払えば何でもする集団で素顔を見せるものは少ない、っていう話を師匠から聞いた」
「ちょっと違うかなー」
「「!!??」」
二人で、しかも小声で話していたはずなのに、少し離れたところにいた少女がいつの間にか私たちの間にいて会話に入ってくる。
驚いた私たちはお互い別の方向に飛び下がり、衝太は少女に拳を放とうとしていた。
「衝太!」
衝太の名前を呼んだ時にはすでに拳は少女の眼前にあった。
今から異能を発動しても間に合わない!
警戒しているとはいえ、もしかしたら蜘蛛ヶ埼さんが言っていた助っ人かもしれない相手に攻撃をしたら、私たちに協力してくれなくなるかもしれないし、何よりも蜘蛛ヶ埼さんの顔に泥を塗ることになる!
そう思いながらも衝太を見ていたが、彼の拳は少女に届く前に仮面の男に腕をつかまれ止まっていた。
「やりすぎだ、リハン」
「衝太、あなたもよ。
彼らは蜘蛛ヶ埼さんが言っていた助っ人かもしれないのに」
「それは…すまん」
見た感じ反省しているみたいね。
衝太は考えずに動くタイプだから時々困るのよね。
小さい溜息をついて少女の方を見るとこちらをずっと見ていたようで目が合った。
「衝太がごめんなさいね?」
「別にいいよー?
原因は私なんだし、こっちこそごめんね」
「いいのよ」
とお互いに謝っているとマスクを被っている男が咳ばらいをし話始める。
「その話はそれで終わりにして、仕事の話に移ろう。
さっき言っていた助っ人、それは俺たちで間違いない。
だからお互いが持っている情報を交換して作戦を立てたいんだがいいか?」
と言いながら蜘蛛の巣と協力関係であることを示すバッチを見せてきた。
「本物みたいね。
そういうことならもちろんいいわよ」
そうして私達は情報を交換した。
そして驚いたことに彼らは全員がSランク異能力者で、リハン殿は先ほど潜入してきて戻ってきたばかりとのことだった。
渡された地図には煉獄会拠点の上から書き足されていてそれは地下の部屋だと教えてもらった、その時の様子も含めて。
そのことを踏まえて作戦を提案され、私たちはそれに了承した。
その後、外にいる第三部隊員に情報と作戦を共有し、クロ殿と副部隊長である大重軽小の二人と、それ以外で別れ煉獄会の拠点に向かった。