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霊魔聖妖 異能神  作者: ジンジャーエール
都市を守る者たち
4/5

覚悟と対価

愛美side


 万屋羽妖。

 対価と引き換えに犯罪行為以外なら何でもこなす集団。

 所属している全員がハイランク異能力者であり、店長はSランク異能力者であり神覚者でもある神創真(しんそうまこと)様であるとの噂がある、そんなお店。

 エイルさんの家に助けを求めに行ってからは、





『残念っすけど自分は助けることはできないっす』


 そう言いながら首を振るエイルさん。

 エイルさんはいつも遅くに帰ってくるお姉ちゃんの代わりにいろいろと良くしてくれる人。

 料理を教えてくれたり勉強を手伝ってくれたりしてくれて助けを求めれば助けてくれる優しい人。

 だから初めて断られてすごくショックを受けた。


『そんな…

 どうしても駄目なんですか?』


『駄目っすね。

 知ってると思うっすけど自分には制約があるっすよ。

 今回の事はその制約に反するっすから助けてあげられないっす』


 エイルさんに制約があるのは聞いていた。

 だけどその内容は分からない。

 だからこそ聞きたい。

 お姉ちゃんを助けることができない理由を。


『エイルさんの制約って何ですか?』


 聞いた後、エイルさんは顎に手を当てて考えている。

 考えて終わったのか私に向き直り口を開く。


『……制約の詳しい内容は言えないっす。

 それでもいいっすか?』


『はい』


『分かったっす。

 特定の条件下以外で自身に危険が迫っていない限り、先手を打つことを禁ずる、というものっす。

 今回の場合、お姉さんを攫った連中が自分に何か仕掛けてこない限り助けに行くことはできないっす。

 もし破ったら自分に神罰が下るっすから破ることが出来ないっすよ』


 神罰…。

 下手したら命に関わるもの。

 流石に、命を捨ててお姉ちゃんを助けて、とも言えない。

 どちらも私にとっては大切な人だから。

 でも、どうしたらお姉ちゃんを助けれるのかな……。


『愛美ちゃん、大丈夫っすか?』


『え?』


 そう言いながらハンカチで私の頬に流れる涙を拭ってくれた。

 いつの間にか泣いていたらしい。


『愛美ちゃん、自分はお姉さんを助けることはできない。

 だけど、助けてくれそうな人たちのことを知ってる』


 普段とは違う話し方に驚いたけど、その言葉を聞いて希望が見えた。

 だけど、どんな人たちなのかが分からない。


『教えてください、その人たちの事を』


『もちろんっすよ』


 いつもの話し方に戻った。

 さっきの話し方のほうがかっこいいいのに。 

 だけど今は言わない。


『その人たち、というかお店の名前は万屋羽妖、何でも屋っす。

 対価と引き換えに犯罪行為以外なら何でもやるお店っす』


 万屋羽妖…。

 聞いたことのないお店だ。


『万屋羽妖には先払いと後払いがあるっす。

 先払いはそれに見合った働きを、後払いは働きに見合った望まれるものを払わなければいけないっす。

 愛美ちゃんはおそらくお金がないっすよね?』


『はい…』


『だったら後払いのほうがいいっすね。

 そうしたら自分も手伝えるっす。

 でも、自分には手伝えないことを要求されるかもしれないっす。

 だから、覚悟を持って行くことをお勧めするよ』


 また違う話し方。

 でも、覚悟か。

 確かに怖い人たちだったら必要かもしれない。


『わかりました』


『念のため噂も話しておくっすよ』


 そうして万屋羽妖に関する噂を聞いて出ていこうとするけど、エイルさんに止められた。


『ちょっと待つっすよ!

 まだ場所言ってないすよ!』


 あ、確かに確認してなかった。


『と言っても自分も詳しくは知らないっすけど、ここら辺にあるって聞いたっす。

 だからあとは近くにいる人に聞いてほしいっす』


『分かりました、ありがとうございました!』





 そうしてエイルさんの家から出て万屋羽妖に来た。

 依頼は受けてくれそうだったけど、対価に私の身体を求められるとは思わなかった。


「…それは、一生ですか?」


 そう震えた声で質問する。


「いや、一週間だ」


 一週間でも正直怖い。

 だけど、二度とお姉ちゃんが戻ってこなくなることも怖い。

 私が一週間耐えるだけでお姉ちゃんが戻ってくるなら……。


「私の身体を一週間差し出せば受けてくれるんですね?」


「もちろん」


「分かりました、それでお願いします」


 そう言って頭を下げる。


「わかった。

 その依頼、必ず完了させるよ。

 さて、後は依頼完了まで待ってもらうだけだから、もう帰っていいよ」


「分かりました。

 では、また後日」


 そうして万屋羽妖から出て、エイルさんの家に向かう。

 対価の話をエイルさんに相談して、家のことをお願いしないと。

 しばらく帰れないかもしれないから。





「副店長、お話が」


  愛美が出て行ってからすぐ後、少女が話しかけてきた。

 彼女の名前は妖羽覚(あやばねさとり)、万屋羽妖の正社員(ナンバーズ)の一人。

 覚の周りには閉じた瞳が一つ宙に浮いている。


「いつもの方から依頼が届いてます。

 対価に関してはいつも通りとのことです」


「了解。

 集合場所は?」


「ここです」


 そう言いながら地図を広げ指をさす。


「人数は?」


「とくに指定はありませんでした」


「なるほど、(アハト)をさっきの娘に、(ヌル)(ゼクス)(ズィーベン)を集合場所に送ってくれ。

 僕はもう一人の依頼人のところに行ってくる。

 留守は任せるね」


「分かりました」


 そうして立ち上がり出かける準備を始め、覚は二階に今回出てもらうメンバーを呼びに行った。

正社員(ナンバーズ)

万屋羽妖の正社員で加入順に数字が与えられている。

現在は0~9まで在籍している。

ちなみに光は2で、覚は5である。

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