万屋羽妖
蜘蛛の巣本部の廊下―――
先程部屋を出た2人が第三部隊副隊長が鍛錬している場所、鍛錬場に向かって歩いている。
そして女性が口を開き、
「助っ人とはいったいどんな人達なのかしら?」
と疑問をこぼす。
彼女の名前は空守間野、蜘蛛の巣第七部隊の隊長だ。
「さあな、俺としては愛花を救けれるなら誰でもいい」
と答える。
彼の名前は拳動衝太、蜘蛛の巣第六部隊の隊長だ。
「貴方はそうかもしれないけれど、私からしたら異能とか戦闘スタイルが判らないと作戦が立てれないからどうやったら確実に救けれるかとかがわからないじゃない?
だからせめて異能くらいは把握しておきたいのよ」
「そうゆうもんなのか…」
そういった会話をしながら歩いていたら鍛錬場の前についた。
「此処に居るのか?」
と間野に聞く。
「そうらしいわよ、愛花が自慢していたわ。真面目で努力家だって」
と笑顔で答える。そして鍛錬場に入っていく。
蜘蛛の巣本部鍛錬場―――
鍛錬場には1対49で模擬戦をしている集団がいた。
49人が1人を囲み一人一人攻撃を仕掛けている。
全員異能を使わずに体術のみで戦っていおり、中心に居る女性に1人が拳を伸ばしたが受け流され組み伏せられる。
「ぐ…」
「まだまだ甘い!次!」
そう言われ次々に女性に向かって攻撃を仕掛ける。
だが、全て受け流されるか受け止められ、投げられ、組み伏せられ、時には普通に殴られ、そうして全員返り討ちにあい、地に伏せる。
そして女性が腕を組みながら地に伏せている者達に
「お前達いつまで寝ているんだ!この程度で音を上げているようでは姉御の救出など出来んぞ!」
と言う。
それに対し
「いや、まだやれる!」
と答え、立ち上がる。
それに続くように次々と立ち上がる。それを見て笑みを見せ
「よし!なら来い!」
と言い構えを取る。
「お、第三部隊全員いるじゃねえか」
「「!!!」」
その場に居た者達は驚く。
そしてその声が聴こえた方を向くとそこには間野と衝太がいた。
「空守さん、拳動さん、何か我々にようでも?」
と2人に聞く。
「1時間後に愛花の救出を開始するからすぐに準備しろ」
「救出じゃなくて助っ人と合流するのが1時間後よ。
その後作戦を考えて救出だからね」
「そうだったか?」
「そうよ、蜘蛛ヶ崎さんの言ったことは憶えてるから。
とにかく貴女達、なるべく早く準備して此処に戻っつ来なさい」
「「わかりました!!」」
そう第三部隊の者達が返事をし駆け足で鍛錬場を出て行った。副隊長を除いて。
「貴女は準備しなくていいの?」
残った副隊長に間野が聞く。
「大丈夫です、これだけあれば大丈夫ですので」
と言い、腰に下げていたハンマーを手に取る。
「ならいいわ」
「1つ聞きたいことがあるのですが…」
「何かしら?」
「助っ人とはいったいどんな人なんですか?」
「それは私達にも判らないのよ。だけど、蜘蛛ヶ崎さんが用意した人達だから信用出来ると思うけど…」
「な…るほど、わかりました…あの…」
と言いづらそうに話す。
「どうしたの?」
「拳動さんがいないんですが…」
「え…」
その言葉を聞き辺りを見回すが衝太の姿はどこにもなかった。
「アイツがいなくなるのはいつものことだけど、一言言ってからいなくなってほしいわね…」
と、溜息交じりの間野の声が鍛錬場に広がる。
蜘蛛の巣本部???廊下―――
「―――とまぁ、こんな感じに話が進みました」
誰もいない薄暗い廊下の片隅で、衝太は誰かと通話していた。
その話声は不思議と響くことはなく通話 相手の声も同様に聞こえない。
「それで、俺はどう動けばいいですかね?」
「──────────────────────」
「つまり、いつも通りですね。
わかりました、では」
そうして通話を終え、鍛錬場へと戻っていく。
とある場所―――
1人の男性がベンチに腰掛け本を読んでいる。
そこに1人の少女が話しかけてきた。
「あの…すみません…」
「ん?何かな?」
「この近くに万屋羽妖というお店があると聞いたのですが…どこにあるか知りませんか?」
「…ああ、知ってるよ。
案内してあげるから付いてきて」
「ありがとうございます!」
そして男性は席を立ち、歩き始め、少女はそれに付いて行く。
しばらく歩いていると、男性が立ち止まる。
「ついたよ。
さあ、上がって」
と言いながら横開きの扉を開ける。
「あの…勝手に入って良いんでしょうか?」
と少女が聞いてくる。それに対し
「いいんだよ。
だって、ここは僕たちの家でもあるからね」
と答える。
「そうなんですか!?」
少女は驚く。
「そうだよ、早く上がって」
「は、はい!えっと…おじゃまします」
そう言いながら中に入っていく。
その後部屋に案内され、そこにあったソファーに腰掛けるよう言われ少女は座る。
その間に男性は奥に行き20秒くらい経った時に、クッキーとオレンジジュースを持って戻ってきた。
そして「どうぞ」と言いながら少女の前にある机の上に置いて対面のソファーに腰掛けた。
「さて、改めて自己紹介をしようか。
僕は…そうだなぁ…光、羽妖の副店長をやっているよ。
よろしく依頼人さん」
と、少女に笑顔を向ける。
「えっと…私は焔崎愛美と申します。
それで…あの…依頼の内容なのですg」
「『お姉さん、焔崎愛花さんの救出』でしょう?」
愛美が依頼内容を言う前に光はまるで分かっていたようにそう聞いた。
そして図星だったようでかなり驚いている。
「どうして…分かったのですか」
「簡単だよ。
彼女が連れ去られたのは有名だからね。
そんな時に同じ苗字を名乗る君が来た、ただそれだけ」
「なるほど…」
「さて、依頼は解ったから料金の話をしようか」
「そのことなのですが、私はお金をもってきていません」
「…へえ」