響き始める時計の音
【>>5で俺は変わろうと思う Pert21】
1:名前:1
やっと終わったよ……
2:名前:恋する名無しさん
なんかあった?
3:名前:恋する名無しさん
時間的に授業かな
4:名前:1
ダンスの授業でさ 各々が練習する時間だったんだけど
ダンス部の人から 「踊って見せてよ」って
一斉に大量の視線がこっち向いたね
5:名前:恋する名無しさん
地獄で草
6:名前:恋する名無しさん
踊ったの?
7:名前:1
逃げ切りました
8:名前:恋する名無しさん
イッチ大丈夫か?
そいつら絶対、何かお前に敵対感情持ってるぞ
9:名前:1
ありがとう
大丈夫……だと思う ダンス自体は楽しいから
気にしないようにしてる
10:名前:1
ただちょっと後悔してるんだ
もし、彼らの前で踊って見せたらなんか仲良くなれたりとか
11:名前:恋する名無しさん
うーん……
12:名前:恋する名無しさん
滅茶苦茶不器用な奴だったらあり得るけどさ、多分違うぞ
13:名前:恋する名無しさん
だな
14:名前:恋する名無しさん
聞いてるこっちが気分悪いわ イッチ本当に平気か……?
15:名前:1
なんかお前ら優しくない?
16:名前:恋する名無しさん
いや 最近の1元気なさそうだし
17:名前:1
そうかな……
□
「……ふぅ」
掲示板を閉じて。
菓子パンを取り出し、一息付く。
場所はもちろんおひとり様用ベンチ(俺専用)。
そしてなんと……手にあるのは例のカレーパン。
定価で買った。四百円!
しかも、前とは違うバターチキン味である。
もう興奮が止まらない。
インド人が喉元から出かかっている(?)。
というか、インド映画って本当に踊るんだね。この前見てちょっと感動した。
「これが欲しかったんだよ……(逮捕)」
さっきの地獄(体育)を終えて、ご褒美だ。
今日は色々しんどいし……これぐらい許される。
大丈夫。住民は心配してくれてるけど、カレーパン食ったら治ります。
満を持して。
いただきま――
――「こことか良いねー」「あっ、はい。中庭は初めてです……お外で食べるのは新鮮ですね」――
……パッケージ、開ける手が止まる。
中庭。遠くから聞こえた声は――椛さんと、他所のクラスの女の子。
「穴場ってやつかなー」「風が気持ち良いです!」
声だけで楽しそうな二人を伺える。
だから俺は、気付かれないうちにその場を去った。
邪魔になっては嫌だから。
ほんの少しの距離なのに、息が切れた。
一人が、やけに辛く感じた。
☆
キーンコーンカーン――
五限、六限。
結局カレーパンは帰ってからのお楽しみに。
教室でアレを食べると、多分匂いでヤバい。
そういうわけで今日の授業はすべて終了。
結局……隣席の彼女達とは話さなかった。
「お、お疲れ様! 二人とも」
「ばいばーい☆」
「おう」
立ち行く二人。
挨拶は、返してくれる。
だから――大丈夫。大丈夫だ。
たった一日。考え過ぎだろ。
ネガティブ思考も、行くとこまで行けば最早病気。
「……あ、そうだった」
携帯。
右斜め先――そこに居る彼女に、メッセージを送る。
直接声を掛けるのは、今は辛かった。断られた時の事を考えると……。
□
東町一『今日、一緒に帰りませんか』
□
指先。
それが震えていたのは、きっと気のせいで。
□
もも『ごめんね 今日あやのんとダンスの練習するから』
東町一『あ、了解です、頑張って』
もも『うん ありがと』
□
携帯を閉じ、席を立つ。
ほんの一日。
一日だけ、たまたま全てがダメな方に傾いただけ。
そう、心の中で念じるけれど。
教室の壁―――白と黒、見慣れた時計が。
時を刻むその音が、ほんの少し耳に掛かって。
☆
☆
そして翌日の火曜。
六限を終了、帰る間際のその音は。
どんどんと――大きく、耳の中に響いていた。
☆
☆
「……今日、東町元気なかったよな?」
「だね☆」
「……」
「だから言ったじゃん☆ まーまだ二日だけど」
火曜日、放課後。
二人は街をいつもの様にぶらつきながら。
「……なんで。あんなに良い奴なのに?」
「んー。悪目立ちってヤツかな☆」
「自分で言うのはアレだが……昔のアタシみたいな感じか」
「そ。まっ比べ物にならないけどね」
(学年一の好成績、それに対してあの髪色。学年一の美女と仲が良い……家まで行く仲)
(後――“月曜”の事もあってよりいっそう。特に男子に敵が多いね、ほんと彼は)
(ただまあ……男子全員ではなさそうだけど。やっぱりまだ壁はあるかな)
教室、クラスメイトの雑談。通り行く別クラスの男子の声も。
あの月曜の体育で――直接見てはいないが――何があったかは、柊はほぼ知っていた。
「……流石に来週からは、普段通り接するか」
「おっやったー! リオ、やっととーまちと話せるの?」
「嬉しそうなこって」
「そりゃねー☆」
(苺が納得するまで、リオがどんだけ我慢したと思ってんの!)
「……何考えてんだ?」
「ふはは! リオが居ないとあんな顔するんだなーって思ってね☆」
隣の隣。
見るからに寂しそうな彼の表情。
休み時間は消える様に教室から出て行ってしまうから見えないけれど。
そんな東町に、真実を告げるのが楽しみで仕方ない……そんな柊の心境。
来週のその日が、待ち遠しく。
ドッキリをバラす気持ちに近いだろう。
安堵して笑うのか。もしかしたら喜びで笑ってしまうかもしれない。
「アイツにも男友達が出来たら良いんだが……出来なければ来週からはいつも通りだ」
「うんうん☆ いっぱい構ってあげようねー☆」
楽し気に街行く二人。
その声は、彼には届く事はない。
☆
☆
「ひゃーつっかれたー!」
「お疲れ様です」
遅くなった学校の帰り道。
すっかり意気投合した、椛とその友達の立花六夏。
彼女は大きな声。
椛の方は……声が小さいが。
これでも頑張っている。
「詩織ちゃん結構体力あるねぇ」
「な、え、そうですかね……」
「このちっさい身体にどこにそんなエネルギーがー……」
今日は、創作ダンスの練習にて二人で遅くまで残っていた。
椛が山で得た体力は、本人は自覚なしだが……こんなところで発揮されている。
「ダンスはちょっと下手だけど!」
「す、すいません……音楽とかあまり聞かなくて……リズム? が掴めなくて」
「ははは、良いよ良いよー。アタフタする詩織ちゃんかわいいし」
「ど、どうも……?」
……ダンスは苦手ではあるものの。
持前の愛くるしさで、立花の方は悪い気はしていない。
「そういえば、詩織ちゃんってあの人と仲良いんだよね?」
「と、東町君ですか?」
「うん!」
「あんな変な人、大丈夫なの?」
「……え?」
「ちょっと怖いし……」
「そっ、そんなことないです!」
「!?」
「あっ……ごめんなさい」
今日一番の大声。
出した本人も、出された本人も驚いてしまい。
お互いに目を丸くして、見つめ合った。
「びっくりした……そんなに?」
「東町君は、凄く優しくて。僕の憧れです」
「ぇ……」
信じられない――そんな顔をする立花に、椛は続ける。
「凄い人なんです。東町君は」
「ま、まあ学年一位だしね……」
「その――学力もですが。もっと違う、いろんな所も凄いんです!」
図書室、文通? を提案してくれた事も。
口を開けない自分に、ずっとそれを続けてくれた事も。
山で遊んだ日、己の道を示してくれた事も。
「……そっかー、ちょっと勘違いしてたかな」
「はい。少なくとも僕にとっては、本当に憧れなんです」
「ふーん……幸せモノだねー彼は」
「え?」
「こんなに強く思ってもらえる人が居てさー」
「そう、でしょうか」
「当たり前でしょう! しかもこんな可愛い詩音ちゃんからー!」
立花が笑ってそう言った。
その顔に、さっきまでの彼への疑いは無い。
椛があまりにも、真剣な表情だったからだ。
「今度また一緒に遊ぶ? 東町君なら良いんじゃないー?」
「はい、ぜひ!」
「三人で図書館とか行ってもいいかもねー」
「とっても楽しそうです!」
「声おっきくなったねー」
「!」
(また、東町君のおかげで……)
発する事すら出来なかった声は、気付けば驚く程に出るようになった。
色んなトレーニング本の効果もある。
それでも、一番は彼のおかげ。
一か月。
たった一か月で――椛は大きく変われた。
「ダンス発表が終わったら、また考えようかー」
「はい! 頑張って頑張ります」
「ははは、詩織ちゃんに珍しく日本語がおかしい」
「し、失礼しました」
「休み時間と放課後、頑張って練習しようね」
「はい!」
(新しいお友達と一緒に東町君と遊ぶの、とっても楽しみです)
そんな楽し気な二人の会話も。
当然、彼には届く事はない。
□
200:名前:恋する名無しさん
深夜一時となりました
201:名前:恋する名無しさん
……もう確定だな 月曜のアレで
202:名前:恋する名無しさん
そうね
203:名前:恋する名無しさん
嫉妬は見苦しいねぇ ダンス部さんよ……
204:名前:恋する名無しさん
女子ばっかりと仲良い 加えて学年一位 多分ダンスも上手
そりゃーそうなるよね
1は何も悪くないんだがな
205:名前:恋する名無しさん
並べてみると そりゃそうだわ
206:名前:恋する名無しさん
友達が居るのが救いだけど
207:名前:恋する名無しさん
大丈夫かなぁ
208:名前:恋する名無しさん
何かあれば1も言うだろ そん時は全力で対応するよ
209:名前:恋する名無しさん
1、自分の事あんまりわかってなさそうで……
210:名前:恋する名無しさん
爆発する前にこっちが言うか?
最近1掲示板にも顔出さなくなってきたし 思い詰めてそう
211:名前:恋する名無しさん
どうしたもんかな
今日もイッチ来なかったし……




