俺、捕まる
1×××年、ハイセン王国に生まれた。
母と機械技師の父と3人暮らし。父の背中を小さい頃から見ていた俺は18になった今、一人前の機械技師への一歩を踏み出した。
と、思っていた...
「父さん!王国から修理の依頼だ!これで俺も一人前かなぁ...」
いかん、ニヤついてしまう。
「バカ言ってんじゃねえよ。内容を見てみろ、こんなん誰でもできるだろう」
相変わらず父は厳しいが、俺は王国からの依頼が初めてだったので内心ウキウキしている。
父は昔から凄腕の機械技師で王国の依頼も何度も受けているほどらしい。そんな父の元に生まれたのだから俺も才能あると思ったんだけどなぁ...
どうやら俺は幼少期の頃から壊すことのほうが得意なようだった。
「俺ってなんで壊す方が得意なんかなぁ」
そう呟くと父が答えた
「お前は俺に似て筋はいいんだよ。なのにいつもサインとか言って自分の名前を刻んだり、こっちの方がかっこいいとか言って違う部品を付けやがる」
なるほど、確かにそれは昔からの癖だ。そっちの方が俺っぽさが出ていいじゃないか。
「王国の依頼が来たのはいいが、今回はそういうことは控えるように。
じゃないとお前捕まってあの島行きだぞ」
えっ。まじかよ。それは聞いてない。
父が言ったあの島とは、シヴァ島のことである。
この島は殺人や反逆罪その他の重罪を犯した人間が送られる島で、一度入れば2度と戻れないと言われている。王国の剣士たちでも入れば戻れないので誰も近づかない。
一度怖いもの見たさで入った悪ガキどもが数日後に死体となって港に流れ着いたという噂もある...。
そんなのごめんだぜ。
俺は依頼を真面目に遂行することを心に誓った。
修理日当日、王国へ向かい今回依頼された機械の元へ案内された。
おっと、これは聞いてたものより楽そうだな。その油断がいけなかった。
「よーし。あとはこれをはめたら終わりだな。思ったよりだいぶ早く終わりそうだな。にしてもすげえなここの部屋、見渡す限り最新鋭の機械だぜ
うわ!この機械、初めて見た...すっげぇー!
ちょっと分解してもわからないよな」
ビービービー...
次の瞬間部屋中に警告音が鳴り響いた、と同時に警備員がわらわらと出てきやがった。
「おい!お前何をしている!この機械は接触禁止だ!こいつを捕えろ!」
あー、終わったっすねこれ
その後、王の間へと連行された俺。
「お主、確かグリーグの息子だったな。何をしていた」
さすが国王、手足が震え上がる。
「すみません、見たことない最新鋭の機械だったものでつい分解してみたくなり...」
国王はため息をついた後、目をこわばらせて言った。
「あの機械は国の存亡をかけた大切なものだ。勝手に触ることは許されん。まぁ今回はグリーグの息子ということでお咎めはなしに...」
と言いかけたところで貴族の一人であるファウラス伯爵が息を切らしてこちらへ向かってきた。
「国王!大変でございます!あやつあの機械にこんな小型爆弾をっ...!」
伯爵の手に目をやるとそこにはいかにもな爆弾があった。
「なんだと!これはどういうことだ!」
うわー、完全にはめられたなこれ。
ファウラス伯爵の家系も機械技師をやっている。でもなんでこんなことを...
俺は必死にやっていないと弁明したがもちろん聞き入れられず、シヴァ島送りとなったのだった。