02
「え、ちょ。どういう状況?」
僕は自分の頭を触りながら少し考えた。
「痛っ」
頭を触っていると、生々しく嫌な感触が僕の手に伝わった。
手を見るとそれはもう鮮やかな赤。
「えーと、ケチャップかな?」
おかしいなぁ、今日の朝ごはんは和食だったはずだけど。
それともあれかな。目の前の女の子の朝ごはんは洋食だったとか?
「うーん、サイエンス」
「なんでや! サイエンス関係ないやろ!」
独り言を呟いていると、僕に覆いかぶさるように倒れていた女の子が目を覚ましていた。
「やあおはよう」
「おはようじゃありゃせんわ! それよりもアンタ大丈夫かいな」
ガスマスクから発せられる声は思っていたよりも鮮明で聞こえやすい。
「ははは、僕は大丈夫さ。それより君は?」
「いや、頭から血ぃ流しといて大丈夫もクソもあらへんやろ……。まあええかツッコむのもめんどいわ。うちは大丈夫やで、ちぃとばかしマスクが欠けてしもたけど替えはあるし」
「そっか、よかった……」
僕の意識が少しずつ遠のいていく。
あれ? おかしいな。 空がどんどん、暗く――
次に目が覚めると、視界に飛び込んできたのは見知らぬ天井だった。
何だかんだこれも王道な気がする。
僕は目だけを動かして辺りを見渡すと、ベッドの側にガスマスクを付けた女の子が椅子に腰かけて座っていた。
「アンタ、目ぇ覚めたんかいな。おはようさん」
「え、あ、おはよう」
僕、こんな女の子に会ったことあったっけ?
こんなにも独創的な見た目なら一度見たら忘れないと思うけどな。
「なんや、人をモンスターかなんかを見るときみたいな目ぇしよって。まさかアンタ記憶飛んだんか?」
「はあ……。まあ、よく分かりませんが」
「まあしゃーないな。事故に遭ったときっていうのは前後の記憶が飛びやすいみたいやし」
女の子の言っている意味が分からない。いや本能的に分かりたくないだけなのかもしれない。
「僕は何か君に悪いことをしてしまったんだろうか」
「……しゃーないな、説明したろ」
それから彼女は、僕と何があったのかを懇切丁寧に説明してくれた。
「それは……なんたるご無礼を」
「ご無礼もクソもあらへんやん? うちもよそ見してたしどっこいどっこいやで」
「ちなみにここはどこ?」
「ん? 学校の保健室。倒れてしもたアンタをうちがどうにか運んで、目ぇ覚めたのが今さっきって感じやな」
なるほど、僕はこの子に大きな借りを作ってしまったということか。
「なんか、ごめんね」
「せやから、謝らんでええよ。そや、うち京田御代っていうねん。アンタは?」
「佐藤美柑……」
「えらいかわええ名前やな。まあ人の名前にとやかく言うのもあれやけどな」
そう言って、ガスマスク越しではそんなに見えないけど、御代はケラケラと笑った。
喋り方的にも関西の人間なのかな?
「これからよろしくね、御代」
「おう、よろしゅーな」
――これが僕と御代の出会いだ。