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01

 ――王道っていったい何だろう。

 学校に遅刻しそうになって、走っていたら食パン咥えた女の子とぶつかる。それが王道? 多分そうじゃないよね。

『俺たちの戦いはこれからだ』? ラブコメ作品において幼馴染が勝てないことが王道?


 僕はどれも違うと思う。


 平々凡々という言葉が恐ろしいほど似合っているのが、僕こと佐藤美柑(さとうみかん)

 ご時世的にこんなことを言うべきじゃないけど、言わせてほしい。男なのに美柑ってすごいよね。

 そんな僕の考えとは裏腹に身長やら趣味はだいぶ女の子寄りになってしまっているけれど。


「…………」


 まあ三人の姉の影響だと思う。うん、間違いない。


「美柑! 何やってんの? 遅刻するよ」


 家で朝ごはんを食べている最中、母親からそんなことを言われる。


「分かってるって」


 僕は今日から高校生だ。初日から悪目立ちするわけにもいかない。

 時計を確認すると、時刻は八時四十五分。


「…………」


 うん、遅刻だ。


「わあああ!」


 僕は味噌汁の入ったお椀を持ちながら家を出た。

 啜りながら向かうしかない!


「なんでこんなことに」


 少し考える。

 多分、昨日MMORPGをやるために夜更かししたせいだと思った。


「仕方がないじゃないか! 限定イベントが来てたんだから! 夜更かしはマストでしょ!」


 僕は足を速める。メロスにでもなったように。

 でもメロスになっちゃったら、途中でバテてしまう。


「じゃあほどほどで行こう。味噌汁もまだまだあるし」


 手に持ってるのが焼き魚とかじゃなくて本当によかった。

 そしたら僕は魚臭い男というレッテルを張られていたに違いない。


「それだけは絶対に嫌だ!!」


 心の底から本音が飛び出た。

 道行く人が僕のことを白い目で見ている。

 そりゃそうだよ、味噌汁片手に全力疾走する高校生がどこにいるんだ。

 ……いるよ! それは僕だよ!


 味噌汁を啜る。

 一旦落ち着こう。まだ慌てるような時間じゃない。

 腕時計に目をやると、時刻は九時を回っていた。


「ああ、終わった」


 僕の高校生デビューはこのまま失敗に終わるんだ。

 そして変な連中に目を付けられて、散々な三年間を過ごすに違いない。


「……うぅ」


 涙が出てくるよ、目にゴミが入ったんだよ。きっと。

 でも足を止めるわけにはいかない。

 遅刻は確定でも向かわなきゃ。


「僕の想像以上のことになったら悲惨過ぎて笑えちゃうよ」


 走り続けているうちに、味噌汁はなくなって、学校も間近に迫って来た。


「よし、何とかなりそうだ。このままの速度を維持すれば問題なく、あと数分で校門をくぐれる!」


 そう思った瞬間だった。僕の横腹に今まで短い人生で感じたことのない大きな衝撃が走る。


「いてて……」


 気づいたら僕は倒れていた。

 しかも仰向けに。


「…………」


 見えるのは青く美しい空――の半分が赤く染まっている。


「あれぇ?」


 そして目を覚ましてから感じる、重み。

 どうにか頭を動かして、自分の腹の方を見る。


「……え?」


 するとそこにはガスマスクを装着した女の子が僕にのしかかるように倒れていた。

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