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cello弾くgy〜モンゴル1  作者: コンキリエ
3/11

オユンと馬に魅了される僕

弟のドルジは姉と入れ替えでゲルに戻って行った。


オユンも娘のサロールと共にゲルの方向に身体を向けた。


僕は腹痛が治り掛けているものの

もう少しここに座っていたかった。


一一一付き合ってくれない。

あと少しだけ 



オユンに懇願するように眉を下げた。



すると彼女は大声で

「ドゥルゥーーージィーーッ!!」


弟を呼び戻し

サロールを彼に抱かせて

ゲルに戻るよう告げた。

 


一一一ありがとう。 

ご主人、もう帰ってきてるかな?


オユンは首を横に振った。



一一一じゃぁゆっくり星を眺められるね。

数えるのはムリだけど。

 



一一一少しでしょ?話が違う。


一一一あぁごめん。あと5分だけ。

 


彼女らにとっては

何でもない一日だっただろう。


だけど僕には

心身共にかなり刺激的だった。


そして

この星空を一人で目に焼き付けるのは

淋しくて。


 


見上げた星に聴かせるように

僕はハミングをした。 



横でオユンは両膝を抱え

その膝に顎を乗せて

僕のハミングに合わせて

身体を左右に振っている。


そこで

わざと

音を外してみた。


もしかしたら

バランスを崩して

僕に倒れ込んできてくれるかな?

 



一一一笑わせたいの?

抱き止めたいの?

お腹、痛くないんなら帰ろう。


 


腹を下し

旅に感傷的になっている男


草の波に

身を隠したい夜となった。


***


ゲルのベッドは木製の折りたたみ

寝返りを打つ度に軋む。


お父さんのイビキに合わせて

疲れ切った身体の置き場所を

少しずつ変えてみる。


それにしても目は冴えるばかり

そおっと抜け出そうか

イヤ、皆んなを起こしたら悪いな。


結局

辺りが明るくなるまで寝返りを打っていた。


目覚めと同時にチーズとバター茶が出され

無償にコーヒーが恋しくなった。


いつもに増してボサボサの髪

水で濡らそうと外に出る。



ドルジがゆっくりと羊の住まいの柵を開けていた。


すると

恐らくいつもより勢いよく群れが走り出したのだろう。

 

慌てて馬に跨り後を追うドルジ。

昨日の彼より大人に見えた。


あっという間に100メートル程先に

その群れは移動していた。


70頭は優に超えるだろう。

羊たちはゆったりと草を喰むと

何となく足を進め

そしてまた草を喰む



僕は小川の淵にしゃがんで

お母さんとサロールをおぶったオユンと

3人で洗濯をしていた。


お父さんの弾く

馬頭琴の音がする。


洗濯をさっさと終え

名人の演奏を目の前で聞くんだ。


いつになくドキドキとする。



突然

青い空にドルジの大きな声が上がった。


オユンはおぶっていたサロールを僕の背中に乗せ


僕の手を取り

「サロールを頼むゎ」と

キリッとした表情でこちらを一瞥し


長い長い鞭を持ち

肩に弧を描く様に束ねたロープを掛け


白馬と並走を5メートル程して

大地を蹴り上げ


バレリーナがリフト(持ち上げられる)されるかの様に白馬の背に飛び乗った。


疾風の中

髪留めが外れ

オユンの腰までの髪がなび

白馬の立て髪と黒髪が緑の草原に

影絵の様な残像を残す


オユンは長い長い鞭を操り

群れから抜け出した10頭を軌道に戻す。


あと2頭だっ‼︎

行けーーっ。

オユーーーーン‼︎‼︎‼︎


何キロも先まで聞こえるくらいの

大声を

僕は生まれて初めて出した。


 


オユン

マジ、カッケェ




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