07.商人来訪
お待たせしました(待ってくれている人はいるのだろうか?w)
ようやく第二部幼児編を開始です。
07.商人来訪
「こんな田舎に来ても何にもないぞ?」
関所と言うにはみすぼらし過ぎるほったて小屋に詰めている衛兵が、めんどくさそうに問いかけてくる。
「商人ですので何も無いところにこそ価値を見い出しあきないに繋げていこうかと」
俺は愛想笑いを張り付けて常套句で応えつつ商業ギルド発行の身分証を見せる。
「まぁいいさ、名前と目的、それに税を」
「ファーディナンド・ゴドリク29歳、ゴドリク商会所属、この地に商売をしにやって来た」
自己紹介をしつつ指定された銀貨を衛兵に手渡す。それとは別に小銅貨を手渡しながら質問する。
「しかし何もないと言う割には領地は広く、通行税も割高じゃないですかね?」
こんな森の関所で他に誰がいると言うわけでもなさそうなのにワザワザ小声で耳打ちしてくる。
「大半はジョスリン・グラント代官公子様の懐に入るのさ、ほらコレが通行証だ無くすなよ」
情報料かわりのチップに気を良くした兵士がバンバン背中を叩いてくる。
「何も無いとはいったが、大量にあるものもあるぞ、悪党と魔獣と奴隷だ」
言いつつ大笑いしている
「ここらは領都まで近いからあまり心配は要らんが、その先は護衛なしでの行商なんぞ金貨がおそってくださいって言ってるようなもんだ、領都まで半日とはいえ気をつけな」
「ありがとう助かったよ、帰りもあんたが当番であることを祈るよ」
追加で銅貨を握らせながら握手をして立ち去ろうとすると、手を引き寄せられ耳元に先ほどよりもさらに小声で
「ここで上手くやっていきたいなら子爵家には近づくなよ」
今度こそもう何も言う事はないと送り出される。
関所を超えてすぐに森がひらけ地平線に街のような影が見えている、たしかにここからなら馬車で一日はかからないだろう。
流石にこの距離で魔獣や野党も出ないだろう、しかし子爵家に近づくなときたか。
代官に大半の金が回るって話だったが、ジョスリン・グラントだったか、そもそもエスペリア子爵家で幅を利かせる子爵家以外の人間ってのもきな臭いな。
挙げ句の果てには、上手くやっていきたければ領主様におもねるななのだから、よほどジョスリンなにがしの権力が強いのだと容易に想像ができる。
どちらにせよ大商会だった頃ならいざ知らず、今のようなちっぽけな店ではどちらにせよ、お貴族様と縁など結びようもない。
街に着いたらまず商業ギルドに出向いてそれから特産物でも探すか。
高低差のせいか先ほどまでは見えなかった大きな丘陵地に差し掛かりそれを迂回するように街道が続いている。
途中から道に沿うように川が流れている。川と切り立った崖に挟まれて一本道になってしまっている。
こんなところで賊に襲われたら逃げ場が無いな、などとぼんやり考えていると前方に人影がチラホラ見える。後ろも見るとやはり騎影が三つ見える。
完全に囲まれた。馬車を捨てて川に飛び込めばまだ命は助かるかもしれないが、ほぼ全財産とも言える荷のことを思うとまよう。
一瞬前方に全速力で駆け抜けようかとも思ったが、馬車を止めるためだろう朽木を設置されてしまった。
まだ成人していない妹の顔が思い出され、命あっての物種と頭を切り替えることにした。
最低限ギルド証と通行証、いくつかある大事な証文を懐に仕舞い込みいつでも逃げられるようにする。
「もう説明はいらねえよな、馬車から降りて来い」
ボロボロの着古しの男がこれまた錆びた小剣をぷらぷらしながらこちらを品定めするかのように見てくる。
ほかの2人も貧相な槍を持っているだけだった。前の賊をどうにかするだけなら、とっておきを使えば良いのだが馬車が通れなければ背後の騎影にやられて終わりだ。
「命だけは勘弁してくれ、馬車と荷は全て渡すから」
馬車から降り川沿いに移動しようとすると
「残念だが命も置いていって貰うぜ、生きてるとその口が言わなくてもいいことを喋っちまうからなヒヒヒ」
「川に飛び込んでも良いんだぜ、懐にあるお宝は勿体ねえが、川の魔獣が骨まで残らず食い尽くしてくれるだろうからな」
下卑た笑いをあげながら距離を詰めてくる。
腰のショートソードに手を掛け、ゆっくりと引き抜く。
「いいものを持ってるじゃねえか、なかなか高そうだなあ」
まったくあの衛兵めここら辺は安全じゃなかったのかよ!
コイツらの話を信じるなら川にも逃げ込めない、自分の剣技なんて護身程度なので複数の敵を相手に立ち回るなど無理だ。
切り札は2回しか使えない、どう効果的に使うか。
まずは1回目!
「炎よ焼き尽くせ!」
力ある言葉とともにショートソードから炎が立ち上がり、軽口を叩いていた野盗3人をたちまち飲み込み炎で包み込む。
野盗達は炎を消そうと地面を転がり回っているが、魔法の炎は転がる程度では消えない。
その脇を走り抜け少しでも有利な場所を探そうとしていたが、後方の相手はそこまで甘くはなかった。
「何かあるとは思っていたが中々すごいものを持ってるじゃないか。だがすぐに使ってこないところを見ると連発できないのか回数制限があるのかどちらかってとこだろ?」
馬上から隙なくクロスボウを構えた男が核心をついてくる。
どうする?
迷っているとショートソードを握っていた右腕に激痛が走り、切り札を取り落としてしまう。カラカラと乾いた音をたて手の届かないところに行ってしまう。
「すまないフェイリス」
襲いくる凶刃に身構えるように体を硬くした。
「そこまでよ!」
背後の崖上から鈴を転がすような凛とした声が響く。
逆光になってよく見えないがだいぶ小さい影が見えた。崖の高さは三階建ての建物くらいはありそうだ。
「そこまでよっていっているのよ!」
二度目のそれは幼さがまったく隠せておらず愛らしささえ漂っていた。
「あいあるかぎりたたかいましょう!いのちもえつきるまで!」
なんだかナイフのようなものを構えて見栄を切っているぞ?
「お嬢様さまぁー、命は燃え尽きさせないでくださーい」
「むしろ戦わないで下さい!」
口々に叫びながら年若い男女二人組が走ってきている。もしかして助けてくれようとしているのだろうか?
だけど、どう見ても幼児だよなあ。
この幼女はいったい誰なのでしょうか!?(しらじらしい)
続きは早めにアップしますのでよろしくお願いいたしますm(__)m