挿話.神器の調整
予告詐欺になってしまいました。
清書しているとあまりにも内容が繋がらない部分があり、量的にも半端だったため少し短めの挿話を挟ませていただきました。
挿話.神器の調整
今日も今日とて夜中に目が覚めた。
どうして赤ちゃんって所かまわず時間無視で突然目覚めてしまうのだろう。
今回はお腹が減っていた。
ひと泣きすればハンナが起きてミルクをくれるのだけれど、この夜中の目覚めは私にとっては貴重な、お母様やハンナに見られたくないたぐいの訓練に充てる時間になっている。
もちろん白虎のティグレか白鴉のコルボが教師役を買って出てくれている。
訓練といっても魔力を扱うための前段階で体内を循環させる練習をしたり神器に魔力を流したりといった簡単なものだけだった。
どうやら私はちょっとだけ特殊で、かなり膨大な魔力を蓄えているらしい。
通常であれば必要のないことだけれど定期的に魔力を放出したり、魔力を使用したりしないと体内で魔力が固まり始めて重大な障害になってしまう可能性があるということだった。
この訓練を初めて分かったことは、私は魔力の操作がとても苦手だった。
わたしの状態を端的に換言するとオン・オフどちらか、最大出力と最小出力のどちらかという大雑把な代物だった。
これは赤ん坊だから仕方ないのだと思いたかったのだけれど、コルボ曰く出来る子は産まれてすぐにできているらしい。
ええ、ええ私はずっと不器用で細かいことは苦手でしたよ。
というわけで魔力操作を訓練するのは私にとって急務と言うほどではないけれど、出来るだけ早めにものにしておきたいものだった。
『今日は今のあなたに合わせた形に神器を調整しましょう、これで随分と魔力の扱いはしやすくなるはずよ☆』
コルボが私の枕元に新たに設置された宿り木の上で羽を広げて力説している。
『それじゃあティグレちゃん結界をよろしくね☆』
相変わらずのおネエ口調、いやおネエ思念のコルボだ。
お母様もハンナにもいろいろやらかしをバレちゃってるから今更じゃない?
『この作業はあなたと神器の同期を再調整するような意味合いがあるの、だからうまく調整が終わったあかつきにはもれなく大きな魔力と大気の振動が起きて、平たく言うとこの家から空に向かって光の柱が立っちゃうわ☆』
『今のレナが神子だと知れ渡るのは私も貴女も貴女の母親も望んでいないでしょう、だから結界を張ってこれを抑えるのです』
ティグレが顔を洗いながら教えてくれる。
『本当に業腹だけれどコルボの言う通り、早めに初めて少しでも魔力を安定させましょう』
何の前触れもなく私たちの周りに見えない力が展開されたのを感じた。
『ありがとうティグレちゃん、じゃあさっそく始めましょうれなちゃん。まずは依然やったように真杖を心の中でイメージして具現化してみてね☆』
言われるがままに初めて加護をもらった時のことを思い浮かべると、ポンっと真っ白でシンプルな長杖が現れた。長さ的には今の私の3人分を優に超えそうだった。
『いいわ、じゃあこれを今のあなたに合ったものに調整しましょう、あなたが使いたいと思うような心なる魔法の杖よなにか具体的なイメージがあればそれを思い浮かべればいいわ☆』
杖、杖、杖ねえ魔法の杖と言えばおじいさんが持っているような大きな木製の長杖かなあ。
うーん考えようによっては・・・そうねアレだって魔法の杖よね。
『早かったわねもうイメージできたのね、じゃあそのイメージを強く持っていてね、じゃあいくわよ☆』
先ほどまで白い長杖だった神器がまばゆい光に包まれ一度大きく膨張して徐々に私のイメージした杖が現れ始める。
長さは60センチほどでメインの部分は白、石突の部分は丸くてピンク。
頭の部分にはピンクの大きな環状の飾り付きのリングが付いておりその中に黄色の五芒星が嵌っている。
どういう理屈か星の飾りはクルクル回っている。
やっぱり魔法の杖と言えばこれよね、マジカルステッキ!
イメージしたのは前前世のころに大好きだった札狩人チェリーちゃんのステッキ。
『思ったより派手な杖になったわね・・・』
珍しくコルボが言い淀んでいた。
ティグレはあきれたような表情で眺めている。
ちょっとコルボが考えるようなしぐさをしたあとに
『このままじゃ今のあなたにはまだ大きすぎるから少し縮めましょうね』
頭の飾りと石突の部分の間が拳一つ分ほどに縮まったのだ。
ぐはあ!
これだとどう見てもちょっと派手なガラガラだ・・・
どこに行った札狩人要素!
わたしはあのステッキでカードをキャプターしまくりたかったのに!!
『いい感じに落ち着いたわねこれなら赤ん坊が持っていても違和感がないわ☆』
満足そうなコルボにティグレも珍しく頷いて同意をしている。
これじゃあ完全に赤ちゃんのおもちゃじゃないの!タ〇ラとかでサンキュッパで売り出されてるやつじゃあないか。
わたしはリアル志向なのでタカ〇より海〇堂のほうがいいのー!
『また何かよくわからないことを言っているけど、今のあなたが制御するにはこのくらいの大きさが丁度いいと私もおもいますよ』
ティグレにも押され私の味方は誰もいなかった。
『実際に杖を使って魔法を行使したりする状況になったら改めて調整すればよいだけなのだからしばらく我慢してね☆じゃあ心剣の方もちゃちゃっと終わらせてしましょう☆』
心剣はショートソードから厚手のグラディウスを盾に縮めたような刃をつぶした玩具になっていた。
幼稚園男児が見たら大喜びしそうだよ。
こうして私の神器調整はつつがなく終わったのだった。
『それにしてもこれだけ魔力を使って神器の調整を二回も行ったのに底をついた様子がないわね、まったく末恐ろしい器の大きさね☆』
コルボはティグレと目くばせをしながらハンナにおっぱいをねだるレナを見ていたのだった。
そろそろ黎明編(赤ちゃん編)の終わりが見えてきました。
主人公がベッドの上から一切動けないという状況でかなり動きの少ない展開が続いてしまっていますがもう少しだけを付き合いください。