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転生令嬢は黒前世に立ち向かう   作者: れれれれん
第一部 黎明編
3/11

03.聖獣 対 聖獣

03.聖獣 対 聖獣


今日も夜中に目が覚めた。おなかが減ったようだ。


出来ればこんな夜中に起きてお母様やハンナの手を煩わせたくはないのだけれど、我慢していても空腹や気持ち悪さが限界に達するとすぐに泣いてしまうのだから仕方ない。自分のことだけれどどうしようもなく泣いてしまう。


そんなこんなでハンナにミルクを飲ませてもらって抱っこされていると、とても幸せな気分になりつつ眠くなるのだ。


わたしってこんなにチョロかったんだね。


こんなに良くしてくれるハンナやお母様の手を煩わせたくなくて、必死に考えたがいつのまにか眠ってしまっていた。

まず我慢していても結局泣いちゃうので我慢という手段は諦めた。


次に考えたのはお腹がすいたりオムツが汚れて泣いてしまうなら事前に伝えられないかということだったけれど。まずもって言葉が話すことが出来ないので難しかった。基本的に寝返りすらまだできないこの体でボディランゲージをしても伝わった様子はない。


肯定と否定を伝えるための方法として、頷いたり首を横に振ったりしているのだけれど、そもそもほとんど質問されないので気が付いてもらえていない。


唯一意思の疎通が取れる子猫改め白虎のティグレに相談してみた。


『とにかく少しづつでも自分のことは自分でできるようになりたいの、なるべく夜泣きなんてしないようにはしているけど、お腹が減ると条件反射的に泣いてしまうからお母様もハンナも寝不足のようで顔色があまりよくないのよね』


『貴女は以前とはずいぶん違う見た目になってしまったけれど、そういうところは変わっていないのですね』


白いモフモフが気だるそうに耳だけをこちらに向け返事をしている。以前というとおそらくオッサン時代の話だろうがアレは黒前世だ、思い出したくもない。


『まずは根本的な間違いを正していくことにしましょう』


あれ?おかしいな?なんだかお説教のような雰囲気だ。


『親が子を育てるのに理由を必要としているでしょうか?答えは否です。逆に子は親に育てられることを負担を強いていると感じる必要があるでしょうか?これもまた答えは否です。今のあなたのような赤子にして成人の知識や記憶を持つという稀有な状況だからこその思考経路なのでしょうが、本来であれば思い切り世話を焼かせるのも親孝行というものです。』


白黒の虎柄子猫は熱心に毛づくろいを続けている。ものすごく勢いをつけて背中をなめ続けている。


『特にあなたの母親にとってはとも言えるでしょうが』


私にはお兄様がいるらしい。

そしてそのお兄様はごく幼い時期に、当主教育を徹底して行うという父かたのお爺様の意見により侯爵家に身柄を移されてしまっているらしい。


『わかったのなら変に我慢などせずに世話をされなさい。いまのあなたの仕事は出来ないことを考えることではなく、健やかに育つことだけでしょう』


白黒子猫は私の髪の毛を巻き込みながら尻尾の毛づくろいに専念し始めた。


不意に前前世の母の仕方ないわねという顔や、父の照れくさそうな顔、祖父母の慈愛に満ちた表情が思い出され、私はすごく愛されていたんだなと思った。


『ありがとうティグレ』


白黒のモフモフは興味なさそうに毛づくろいをつづけていた。


ただそれはそれこれはこれ。

適度に赤ちゃんっぽさを忘れないようにしながら早くお喋りや立って歩きたい!


人間だもの!


うまく喋れないのは顔の筋肉の問題なのか、声帯の発達の問題なのかよくわからないけれど何事も訓練あるのみよね。


お歌を歌えばきっと発声の練習になるよね、赤ちゃんっぽさを忘れないようにここは某国民的アニメの愛と勇気が友達のテーマソングにしよう!


なぜだろう勇気とか友情とかビンビン心に刺さるものがあるよね。


あとは早くあんよをするためにも手足の筋トレね!


やることが決まるとお腹が減っていたのを思い出したわね、ひと泣きいっときますか!


『まったく貴女はわかったようなわからないような・・・』


あわてたお母様が私を抱っこしてくれているのをちらりと横目で見た子猫はふたたび気だるそうに眠るのであった。




そんな平和な日々がしばらく続いたある日、わたしは大きな転換期を迎えていた。

日頃の鍛錬の成果をついに発揮するのだ。


寝返りからのスムーズなハイハイへの移行!


筋トレ(っぽいもの)の成果が如実に出ている、努力の成果が正当に報われるのって本当にうれしい。うれしすぎてなんだか心がはちきれそうだ。


お腹のあたりに大きなうねりのような力の塊のようなものが渦巻いている気がする。


『レナ!いけない!!』


白猫が私のベッドに飛び乗ってきたかと思うと、私の背中あたりにモフっとした手をのせている。するとはち切れそうだった何かがすっと抜けていくのがわかった。


ふと横を見るとお母様がとても驚いた表情で固まってしまっている。


『ダメじゃないティグレ、そんなに突然動き出すとお母様がびっくりしてしまうよ』


『君の母親がびっくりしているのは、わたしの行動に対してではなく、たったいま貴女が練り上げた魔力の大きさにびっくりしているのだと思うのですけどね』


魔力?わたしに魔力があるの?うれしい!!!


前世のころは筋肉しか鍛えていなかったし前前世はただの一般人だったし、もしかして魔法が使えちゃったりするのだろうか。これは鍛錬せねば!!


『まえの人生の時にだって無意識なんでしょうが、ある程度魔力を使いこなしていたというのにまったく貴女という人はこういうところは全く変わっていませんね』


ひどい!私はあんな筋肉だるまのムキマッチョバカじゃないのに


『どちらにせよそんなに小さな体で魔力を扱うものではありません、魔法や魔力の鍛錬は禁止です』


ハイハイの体勢のわたしを、やわらかな尻尾で転がすようにして寝かせられてしまった。


お母様とハンナは相変わらずフリーズしてしまっている。


この状況どうしようかなあ、どうやってお母様とハンナのフリーズ状態を解除すればよいかなあなどと思っていると、突然部屋の窓が開き突風が流れ込んでくる。


『この魔力、この子ねやっと見つけた☆』

『いいわ決めたわ!あなたにわたしの加護をあたえるわん☆』


妙におネエっぽい思念が飛んできたかと思うと、数か月前に見たような気がするきらきらとした虹色の光のかけらが私に降り注いでいる。


あれ?これって?加護?


そしてスッと清冽な何かが私の中に入ってくるのを感じた。


ベッドの淵には白い鳥が止まってこちらを見ている。


ふぁさっと私の顔にモフモフの尻尾が巻き付く


『間に合っています、お引き取りください』


優しい白虎がいつになく厳しい感じの思念を白い鳥にたたきつけている。


『もう加護も与えちゃったし、この子はもう私の愛し子よん☆』


『レナそんなものはやく返してしまいなさい』


わたしを真ん中に置いて白い獣がにらみ合いを続けている。


なんだこの状況は・・・・


龍虎相見えるみたいな感じで鳥猫相見えている、睨み合いの真ん中あたりでバチバチってい火花が散って、背景には雷が落ちているような気がしてきた。


『あなたももうわかっているでしょ、私たちが一度決めてしまった以上変更なんて聞かないことくらいは。だから諦めなさいってば☆』


つまりどういうことなのだろうか?この白い鴉は聖獣で、いとし子っていうことは神子認定?あれ神子ってダブるものなの??限界突破しちゃう系のはなし?前世のオッサン時代は神子なのに無凸だからあんな酷い死に方をしちゃったの!?


『ダブるとか限界突破とか無凸とかわけのわからないことを考えてないでレナ、あなたからもキチンとお帰りくださいしなさい』


え!聖獣っぽいけどこの白い鴉さんはコッ〇リさん的なものなの!?


『ティグレあなたいい加減にしなさいよ、いくら何でも低級霊扱いはひどいわ。ちゃんと自己紹介するわね☆そっちの人間は二回目かしら、私は杖を司る白鴉コルボ、たった今あなたに真杖を授け神子として祝福した聖獣よん☆』


お母様とハンナが白目になりかけているわ!


『ほらあなたの中にある力を感じてみなさい☆』


言われてつい素直に自分の内側に向き合ってしまった、うかつにも。

大きな力が二つ渦巻いているのを感じ手に取るイメージをした途端ふたつの神器が具現化してしまった。


わたしが仰向けになって伸ばした手の先に浮かぶナイフとワンド。

疑いようもなく神器の輝きだった。

心なしかティグレがジト目になっている。

対照的にコルボと名乗った白鴉の目はらんらんと輝いているように見えた。


『で、コルボあなたはまだ赤ん坊のこの子に二つも神器を現出させてどうする気なの?』


『もちろんあなたと私で納めるしかないでしょうね☆』


『何の意味もなくこんなことさせて一体何の意味があるというの?』


『意味も何も、神子を兼ねる子が生まれるのなんて500年ぶりよちゃんと顕現できるのか確認してみたいじゃない☆』


『その結果、この地はほぼ神域に近い申請を帯びてしまったのだけれどどうするの?』


『変なのが寄ってこなくなるからいいじゃない、それよりそろそろ限界になる前に神気を納めさせましょう☆』


『まったくあなたは・・・』


不承不承という感じを体全体で表現しながら猫はしっぽでナイフを、鳥は羽で杖を消し込んでしまった。


『それにしても素晴らしい魔力量ね、今の時点で歴代の杖使いの中でもトップクラスよ。将来素晴らしい魔術師になるわ☆』


相変わらずな様子のオカマなカラスをティグレがにらんでいる。


『この子は前世でも剣聖だったの。今世だって素晴らしい使い手になるのよ』


『前世ね、だからカルマを持っているのかしら。こんな小さな体に三つも持ってしまっている。普通ならあり得ないわ、肉体か魂、もしくはその両方が耐え切れないはずだもの』


丁寧ではあるがオカマ口調が抜けた鴉


『やはり・・・ですか』


重苦しくうなだれるティグレ


『神器二つ持ちの神子だからこそ耐えられるのか、それとも転生者だから耐えられるのかはわたしにもわからないけど、どちらにせよ早めに神器の扱いを覚えた方がいいわね』


『とは言えまだ赤ちゃんのレナちゃんには難しいだろうし、少なくとも3年ほどは器を成長させることだけにするべきね☆』


気が付くとまた無駄に明るい新宿三丁目な感じの口調に戻っている。


『さしあたってこの子の親にどう理解させるかも問題ね』


いまだにフリーズするお母様とハンナの方を見ながら猫あくびをしながらそう言った。


結局その後、たっぷり30分ほどかけてフリーズ状態を脱したお母様はハンナにお茶の準備を頼んでいたのであった。

ひと息つきようやく頭の整理が終わったお母様は改めて白鴉の方に向き直った。


「レナ・エスペリアの母、クラリッサ・エスペリアです。白鴉コルボ様に置かれましてはご機嫌麗しく、また我が子に祝福を授けていただけ感謝いたします。我が子ながらレナは神子であり精一杯いつくしみ育てることをお誓いいたします」


「また改めまして白虎ティグレ様にもお誓いいたします。」


さすがお母様ちゃんとバランスをとっていらっしゃる。


『あなたの子なのだから好きにするといいわ、わたしも私にできる加護をあたえるつもりですから☆』

『わかっているとは思うけどクラリッサ、あなたの心配の通り出来るだけこのことは暫く知れ渡らないように配慮するべきね、それができないようであれば私が安全なところでレナの世話をすると心得なさい』


わたしの顔をモフモフ尻尾でぺちんぺちんやりながら言うことではないと思うのだけれど。


「承知しております、委細聖獣様のおっしゃる通りに」


お母様が決意の表情を浮かべている。

ぺちんぺちんやられているのが気持ちよくてすごく眠くなってきた。

そういえばカルマって何なんだろう・・・すごく気になる・・・でもねむいーー・・・





今回も地味に黒前世が迫ってきていました。

次回はもう少し登場人物と黒前世が登場します。

よろしくお願いします。

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