~天界と地上が出会う場所~ー総集版
天界と地上が出会う場所の1から4を一つにまとめてみました。
まとまってた方が読みやすいですよね?
他の章も少しずつ総集版出します!!
すべてはこの物語から始まった。
雪が20cmも積もっている森の中、毛皮をまとった一人の男が荷物をソリに乗せ重そうに引きずりながら、木々をかけ分けて進んでいた。スタンリーはポケットからコンパスを取りだして、チラッと見ると白い息を吐きながらただひたすらに北を目指していた。最北の街を出てからもう2ヶ月は歩いただろうか
『本当に世界に端なんかあるのか、あの街の商人に黙られたんじゃないだろうか』
スタンリーの脳裏の片隅に疑問が浮かんでいた。だが、スタンリーは意識が薄くなりながらもただひたすらに真っ直ぐに北に向かって歩き続けていた。そしてついに意識が飛びそうになり、足がふらついた。まさに倒れそうになった時だった……。
何かにぶつかった。何かに頭を強く打ったことで飛びそうになった意識を何とか取り戻すことができた。スタンリーは手で衝突した何かを触る。
そこには見えない壁があった。壁の向こう側は何もなく、暗闇がただひたすらに続いているように見える。壁の向こう側には地面も無く、スタンリーの立っている地面は壁の真下で終わりちょうど90度の崖のようになっている。崖を覗き込むようにして下を見た時、スタンリーは悟った。ここが、世界の端なんだ。それと同時に、この先に行ってみたい。と好奇心も沸いていた。
みえない壁を見つけたスタンリーは壁の近くにテントを貼ると2日間テントから出てこなかった。2ヶ月の旅の疲れを癒していたのか、暗闇を進む方法を考えていたのか、はたまた見つけたことを日記に記録していたのか……。
そして3日目の朝、テントから出ると持っていたツルハシを大きく振りかぶり、全身全霊で壁めがけて振り下ろした。ツルハシを当てた場所を触ってみるが壁はまだある。あるどころか、傷も付いていないようだった。まず地上のもので壊せるのかどうかわからなかったが、ツルハシを振り続けた。壁にツルハシが当たるたびに衝撃で腕が痛くなる。だが、諦めず何回も何回も振り下ろす。それでも、壁は壊れない。だが、スタンリーの目に絶望は無かった。
スタンリーは諦めずに三日三晩ツルハシを振り続けた。そして転機が起きる。
4日目の朝のこと、いつものようにツルハシを持ってテントから出ると、スタンリーは異変に気づいた。壁の向こう側がいつもの見ていた暗黒ではなく、今までで見たこともないような強い光を放っていた。スタンリーはそれを見ると一瞬で悟った。それが地上のそれではなく、天界のそれだと。神だと。スタンリーは神を見るのは初めてだったが一瞬でそれが神だと認識した。頭で理解したのではなく、心でそう感じたのだ。頭がまだ状況を整理できていない間に、神からスタンリーに言葉が届く。
『何故、壁を壊そうとするのか?』
神の声は頭の中で響いていた。スタンリーは声を出し答えた。
『俺はこの世の全てを知りたい。俺は世界のあらゆるところを旅してきた。この先に何があるのか、俺はそれが知りたいだけなのだ』
寒さのせいか、神に臆したせいか声がうまく出なかったが、堂々とした口調で言った。神はそれを聞き、声を上げて笑った。
『その願い叶えてやろう』
すると、壁があったであろうところに黄金でできた階段が現れた。その階段は壁の向こう側、スタンリーが行きたいと望んでいた暗黒の中に伸びている。そして神は続けた
『この階段を登り切った時、この世の全てを知ることになるだろう。ただし、一度登り始めたら後戻りはできない。覚悟を決めろ』
そう言うと神は初めからそこに居なかったかのように消えていた。スタンリーの目の前には終わりの見えない果てしない階段が永遠に続いていた。普通の人間なら、戸惑いや恐怖を覚えるような状況だが、スタンリーは違った。周りの雪が溶けるような情熱を身体から発し、つぶやいた。
『まだまだ俺の知らない世界が広がっているんだ』
そしてスタンリーはなんの迷いもなく、階段を登り始めた。数段登ったところで後ろを振り返るとそこに地上は見えず、ただ暗黒が広がっていた。すぐそこにあったはずの雪の積もった森は見えなかった。その不思議さに戸惑いながらもスタンリーは好奇心に胸を躍らせ前を向きまた登り始めた……。
その後、この男を地上で見たものはいなかったという。もし、みなさんが世界の端の一つ“北のハテ”を目指すのならスタンリーが残したテントや荷物が見つかるかもしれない。だがもう階段はないだろう。地上と天界を長くつなげておくことはとても危険な行為なんだ。
そして、この男が階段を登り切ったか否か、それはまた別のお話。ここで重要なのは神が天界と地上を一時的にではあるが繋げてしまったということなのだ、これが何を意味するかこれから身に沁みて知ることになるであろう…………。
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