三十七話
ローズはジルと共にリベラ王国へと帰還することとなり、エミリもまた罪人としてリベラ王国へと護送された。またその護送にはタージニア王国の呪術師長も同行しており、国王からはローズを元へと戻すまでは国へと帰る事を許されていない。
タージニア王国側とリベラ王国とでは表面上は友好関係は保たれているが、実際には裏でジルが最終的に国王と話をつけており、今後の国同士の関係についてはそこで話がなされた。長年呪術を使ってきたことや、エミリがリベラ王国で行った事実からジルはタージニア王国へ賠償となるような外交も取り付けており、そうしたところも抜け目がないと、ジルの側近らは感服した。
リベラ王国へと帰ったローズは、久しぶりの自分の国に帰ってこられた事を安堵した。
リシーと別れるのは辛かったが、リシーに簡単に自分はリベラ王国の人間だと話をすると故郷に帰れることはいいことだと笑顔で送り出された。
ローズが家族と再会し、しばらくの間屋敷へと戻ってゆっくりとしている間に、ジルは呪術師長とジル付の魔術師となったイラットと共にサリーの体からローズの魂を引き離し、体へと戻すすべを模索し始めていた。
「それで、可能なんだろうな?」
ジルの言葉に、呪術師長は頭を深々と下げると頷いた。
「サリー嬢の命を考えなければ意図も容易いことです。」
イラットはその言葉に眉間にしわを寄せると言った。
「ローズ様はそうしたことは望まれないでしょう。」
ジルもイラットの言葉に同意するように頷き、呪術師長へと視線を向ける。
呪術師長はしばらくの間、頭の中で何かを計算していたのか考え込むと、静かな口調で言った。
「おそらくは、サリー嬢の体には今まで背負ってきた分の呪術が刻まれているかと。それを、他者へと移すことは可能です。そうすれば、サリー嬢も目覚めるでしょう。」
「移されたものは、死ぬか?」
ジルの言葉に、呪術師長はゆっくりと首を横に振った。
「かなりの魔力と体力は削られるでしょうが、死ぬほどではないかと。移すのを複数名にすれば、さらに安全かと思います。かなりの痛みと苦痛は伴うでしょうが。・・・私は、国に帰っても呪術師長の座を追われ、最終的には死を待つばかりでしょう。私に移していただいても構いません。」
覚悟を決めたその言葉に、ジルは大きくため息をついた。
「ありがたい申し出だけれど、ローズは自分の為に他人が傷つくのは嫌がるだろうからなぁ。うーん・・呪術は何か物には移動できないのか?」
その言葉にイラットはハッとしたように顔を上げると、瞳を輝かせていった。
「魔道具を利用すれば出来るかもしれません!私一人の知識では無理でも、呪術師長がいれば細かな呪術の形状もわかるでしょうし、成功の可能性はあります!」
イラットの言葉に、呪術師長は眉間にしわを寄せ、イラットに魔道具について詳しく話を聞き、その上で、頷いた。
「イラット殿の話を聞く限りでは、可能かと。ですが、それでも誰かが身に着けてその者の魔力は奪わねばならないと思いますが。」
ジルはその言葉ににっこりと黒いほほ笑みを浮かべた。
「そうか。なら、ちょうどいい人がいるじゃないか。」
恐ろしい笑みを浮かべるジルに、イラットと魔術師長は、静かに口を閉じた。
あと少しです!
最後までよろしくお願いいたします!




