二十六話
女性の名前はリシーと言って、王城で洗濯女中をしているらしいのだが、仕事場では一番の下っ端で、常に先輩達の仕事を押し付けられているらしい。
その上、上司である女中頭の女性には嫌われているらしく、今日も自分の仕事ではないのに買いだしを押し付けられて、休憩時間を使って町へと降りてきたということであった。
だが、買い物の場所が問題だった。このあたりの路地裏は女性が一人で出歩くのは危ないようで、先ほど走ってきたのも男に絡まれて逃げていたらしい。
「大変だねー。」
ローズはそう言いながら、未だ抱き着いてくるリシーの背中をぽんぽんと撫でていたのだが、リシーの言葉に固まった。
「貴方、女の子でしょう?・・それで、貴方見たら、女の子で男の格好して、私以外にも必死で頑張っている今が居るんだって、勝手に共感しちゃって・・・泣いちゃった。ごめんなさい。」
「え・・・」
そう言う理由だったのかとローズが背中を撫でる手を止めると、リシーはゆっくりと体を離して、涙をぬぐうと言った。
「本当に、ごめんなさい。突然、見ず知らずの女に抱き着かれて、泣かれて、本当に・・・今更ながらに恥ずかしくなってきたわ。」
それほどまでに追い詰められていたのだろう。ローズはリシーの頭をぽんと撫でると、にこっと笑った。
「いいよ。でも、ここでの出会いは幸運かも。ねぇリシーさん。お城の女中ってどうやったらなれるの?」
その言葉にリシーはきょとんとした後に、少し考えてから口を開いた。
「私みたいな女中とか下働きなら、平民の子でも可能よ。でも、本当に下働きだから、死ぬほど大変だけど。」
「へぇ。でも、働き口はあるんだ。王城の仕事なのに。」
リシーはまた少し考えると、声を落として言った。
「・・・少し前に、城にリベラ王国に留学なさっていたお姫様が帰ってきて、それで、人が足りなくなったの。だから仕方なくって感じよ。それでも人では足りないの。仕事が大変すぎてすぐに人は辞めちゃうし・・・リベラ王国の王子様が来るっていうのも重なって、てんやわんやよ。」
なるほどと考えていた時、リシーはローズを伺うように見つめると言った。
「貴方、働き口を探しているの?」
「うん。お金なくってさ。」
リシーは頷くと、ローズの手を取って言った。
「これは運命ね。うん。私、きっと貴方と出会う運命だったのだわ。女中頭には私嫌われているけれど人手不足だからきっと雇ってくれるわ。」
「え?そんな簡単に?お城の仕事なのに?」
「さっきも言ったけれど、私達は下働きよ。王城の中になんてめったに入れないし、私達が働くのは、城の端にある洗濯場や調理場や納屋とかよ。城の中はちゃんとしたメイドが掃除したりお料理運んだりするの。」
「あー。なるほどね。」
それでも今の現状よりはかなり城に近づける。
ローズはにっこりと笑うとリシーの手をぎゅっと握って頷いた。
「リシー。お願いしてもいい?大変だろうと、働かないと私も生きていけないから。」
「もちろんよ。ふふふ!友達が出来て嬉しいわ!」
ローズはリシーの笑顔に、久しぶりに自分も笑顔を返した。
リシーの言うとおり、まるで運命に導かれるようだなと、ローズは心の中で思ったのであった。
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