二十話
「えー。まさか、ライアン失敗したの?ウソでしょう。はぁ・・私の貴重な三年間が、まさか、ご破算なんて・・・許せない・・・けど・・一つ良いモノが手に入ったわね。もしもの時の為に、ライアンに覚えさせておいてよかったわ。」
エミリは豪華な馬車に揺られながら、楽しげに瓶の中に入っている光を見つめてそれを眺める。
「ローズの魂だなんて。ふふふ!あの憎たらしいローズには、みすぼらしい人生の方がお似合いなのに、まったく懲りてなさそうだったものねぇ。あははっ!でも、これであんたにやっと、ふさわしい人生を与えてあげられるわ。はぁ、私貴方の事大っ嫌いだったのよねぇ。いつもおりこうさんって顔して、本当に嫌い。だから嬉しくてたまらないわ。さぁ、どうしようかなぁ。」
馬車から先ほどまでいた王城を見れば、禍々しい呪いの力が消えうせ、いつもの輝かしい城の姿へと姿を戻している。
「あーあ。呪い解いちゃったのね。っていうことは、ライアンは失脚か。取りあえず国に急いで逃げ帰って、それからお父様のご支持を仰ぎましょうか。でも・・・ローズの事は黙っておきましょう。だって、お父様がどんな判断するか分からないしね。ふふふ。どうしようかなぁ。」
馬車はどんどんと王城を離れ、そして道はどんどんと細くなっていく。それと同時に空は少しずつ陰り、雲が増え、雨がぽつりぽつりと降り始めた。
雨はどんどんと強くなり、ざーざーという音が煩いくらいに馬車の中に聞こえる。森に入り、そして国境を越えようとしたところで突然馬車が大きく揺れたかと思うと、地響きが轟く。
「っきゃぁっ!?何!?」
馬車が大きく揺れた次の瞬間、体に浮遊感が襲ってきたかと思えばエミリは体を床に叩きつけられる。それどころか馬車の扉が開いてしまい、そこから雨が入り込んでくる。
「何!?一体どうしたっていうのよ!」
「雨で道が荒れているようです!」
「しっかりなさい!私が乗っているのよ!あれ・・・え!?瓶!瓶はどこ!」
瓶は床を転がり、馬車の外へと投げ出されてしまう。エミリは慌ててそれに手を伸ばすが、控えていた侍女がエミリを押さえた。
「お嬢様!ダメです!」
「ダメよ!あれは!あれはあの女の!」
「命の方が重要です!お願いです!」
扉を侍女は必死に締め、馬車は体勢を立て直すと森の中を駆け抜けていく。エミリは声を荒げると、自分を抑えた侍女を叩き、荒く呼吸を繰り返したのちに、にやりと笑った。
「まぁいいわ。これであの女はもう二度と目覚めることはなくなったのだし、はぁ。みじめな虫にでも魂を移して踏みつけて殺そうと思ったのに、残念。でも、まぁいいわ。」
自分を納得させるようにエミリはそう呟くと、外の豪雨を睨みつけた。
「鬱陶しい雨だ事!」
馬車は森を抜け、エミリの出身国であるタージニア王国へと入る。
小瓶は転がり、岩に弾かれ、そして川へと落ちる。川の流れに小瓶は揺られ、そこからさらに南へと流されていく。水の中へと沈み、流れに身をゆだねて。
南へ、南へと、運命に導かれるように流され、そしてたどり着く。
「これ・・は・・・・」
運命は、一人の少女に託された。
いつもありがとうございます!
よーし、頑張ります!




