十八話
ジルの魔力を打ち消すように、ライアンの魔力が部屋へと今度は渦巻いていく。それは、ジルのような淀んだ魔力ではなく澄んだ純粋な魔力。
それにジルは唇を噛む。
まるで自分は清らかでお前は穢れているのだと、そう突きつけられるような光景だった。
「言っておくが、俺は呪いを解くつもりはないぞ?」
「第一王子殿下。私達がこのままでいると思いますか?」
「ん?思わないな・・・だから、そうだ。ローズにも呪いをあげよう。」
良い事を思いついたとばかりな楽しそうな声色に、恐怖を感じる。
「兄上!おやめください。呪いを扱ったものはどのような理由があろうとも罪人です!」
「ん?じゃあ、お前ら二人とも死ぬ?」
あっさりと言い放つ言葉は、あまりにも冷たくて、ジルもローズも目の前にいるのが血の通った人間であるのかという恐怖を抱く。
ジルは大きく息を吐くと、ローズを自分の背に庇い、そしてはっきりとした口調で言った。
「兄上・・いくら兄上とはいえ、罪人をそのままというわけにはいきません。」
「ほう。ではどうする?」
挑発するような言葉に、ジルは腰に差していた剣を引き抜く。その行動にライアンは笑みを深めて、自らも剣を引き抜いた。
「決闘か。っふ・・・俺に勝てるかな?」
「ええ。勝ちます。」
部屋の中で鋼のぶつかる音が響き渡り、魔力の渦はさらに色濃くなっていく。
ローズは助けを呼ばなければと扉へと走り、開けようとするが、ライアンの魔力が扉に鍵をかけるようにして渦巻、開くことが出来ない。
ジルの剣の腕前はライアンに引けを取らない。
けれど、やはり体格差はあり、まだ体の出来上がっていないジルが押されるのは時間の問題のような気がした。
鋼がぶつかる音が聞こえる度に、ローズは恐怖を抱く。
「このままじゃ・・」
だが、ジルとライアンへと視線を向けると、驚くべきことにジルの方がライアンを押し始めていた。
ライアンの顔は歪み、ジルの剣を受けるのがやっとという姿に、ローズは驚いた。
「っくそが!」
ライアンの剣を弾き、ジルの剣の切っ先がライアンの喉元へと向けられる。
「・・兄上、剣の鍛練を怠っていましたか。」
「っは。言うねぇ。」
ローズはその光景を見て、ほっと息をつきそうになった。
しかし、次の瞬間、魔力の渦の動きに変化が現れ、眉間にしわを寄せた。
何かがおかしい。魔力が何かによって操られるようにして動いていく。
そして次の瞬間、ローズはライアンが何をしようとしているのかに気付き、気が付けば走り出していた。
「ジル様!」
ジルの頭上に広がった、ライアンの魔力は次第に形作られ呪いの術式を組んでいく。そしてローズはそれから守るようにジルを突き飛ばした。
「ローズ!?」
ジルは突き飛ばされた瞬間、目を見開いて、その光景を目にする。
ローズの体が、ライアンの魔力によって作られた呪いによって、貫かれる瞬間を。
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