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呪われた年下王子の婚約者 ~王子はメイドと勘違いしているようです~  作者: かのん


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十一話

 結局の所、城の門が見えてきた今もまだ私はジルに、自分が婚約者だという事を告げられずにいた。言おうとした。何度も言おうとしたのだが、その度に、また明日でいいか、やっぱり明日伝えよう、と伸びに伸びて、結局王城にたどり着いてしまったのである。


 ジルはと言うと内密にでも家族に会えることが楽しみなのか、わくわくとしている様子であった。その可愛らしい笑顔を見ていると、とても微笑ましく思ってしまう。


 今回の王城への登城については、ごく一部の者にしか知らされていない。ライアンは皆に周知してもかまわないとの手紙を送ってきていたが、さすがに次期国王であるライアンの結婚式に呪われた王子が来るのは憚られる。


 意外と弟には甘いんだなと、少しだけ、ほんの少しだけ見直した。


 ジルはそれを少し嬉しそうにしながらも国王に手紙で相談をした後に、やはり内密に登城することを決めたのであった。


 なので城に到着するのも夕闇が迫る頃であり、出迎えも少人数に抑えられていた。


 本来であれば歓待されるはずの身分なのにもかかわらず、ジルを出迎えるものは少なく、私は胸が痛んだ。


「ジル様、お傍におりますので。」


 そう馬車を下りる前に声をかけると、ジルは嬉しそうに微笑みを浮かべて私の手の甲にキスをした。


「ありがとうローズ。けど大丈夫だ。だって僕にはローズがいるから。」


 微笑を浮かべる姿も、きざな言葉を呟く姿も様になっており、思わず胸がドキリと鳴る。


「じ・・ジル様。私だから許されますが、他の者にしてはいけませんからね!いらぬ誤解を生みます!」


 私の言葉にジルは笑い、そして軽くウィンクをすると馬車を下りる。


 その背中は出会ったころよりも広く、大きく感じられた。


 いつのまにか、どんどんと大人に近づいていくジルに、最近はドキドキさせられることが多くなってきており、どうにも心臓が落ち着かない。


 ジルはその後国王やライアンと謁見することとなり、私は案内された部屋へと下がった。


 次の日もジルは国王とライアンと話をするとのことであったので、私は久しぶりに朝ゆっくりと過ごした後に、メリーと共に庭へと散歩に出かけた。


 久しぶりに訪れる王宮の庭は見事に美しい花々が咲き、温かな風が心地よかった。


「何だか、本当に久しぶりねぇ。」


 思わず背伸びをしながらそう呟いた時であった。


 木陰から現れた影に、私は目を丸くした。


 そこには侍女を従えて日傘を差したエミリの姿があったのである。その表情はどこか疲れて見えたのだが私の顔を見た途端に眉を吊り上げた。


「貴方・・・貴方が何でここにいるのよ!」


 苛立った声で挨拶もないその態度に、私は思わず眉間にしわを寄せそうになるのをぐっと堪えて、淑女らしく美しく礼をすると言った。


「ごきげんよう。エミリ様。本日はご結婚のお祝いに参りました。正式なご挨拶は後程と思っていたのですが、偶然にも先にお会いできたこと嬉しく思います。」


 あまりに美しく礼をしながら挨拶をするローズに、エミリの横に控えていた侍女らが驚いたように息をつき、エミリはその態度が気に入らなかったのか侍女らを睨みつけると言った。


「貴方達!ひかえなさい。」


「も、もうしわけございません。」


 顔を真っ青にして下がる侍女らに申し訳なく思いながらエミリと視線を合わせると、エミリは大きく息を吐いてから言った。


「久しぶりね。ローズ様。呪われた王子の婚約者の分際で、よくのこのこやってこれましたわね?」


 三年も前の事なのにまだ根に持っているのだろうかと思いつつ、笑顔で小首を傾げた。


「私は今の立場は光栄に思っております。ジル様はとても素敵なお方ですし、エミリ様とライアン殿下の結婚を心からお祝いしたいと思っております。」


「何ですって?・・・ふふふ。強がりねぇ。本当はライアンに未練たらたらなのでしょう?」


 にやにやとした笑みを浮かべるエミリに、思わずうんざりと内心しながらも笑顔を絶やさずに首を横に振った。


「いえ、まったく。私にはジル様がおりますので。」




 そんな二人が睨み合いをしている所を、ジルはライアンと共に王宮の廊下を歩いていた時に目にして瞳を輝かせた。


「あ、ローズだ。」


 庭を散策していたのか。あの令嬢は、誰だろうかとジルが思っているとライアンの口から思っても見ない一言が飛び出した。


「あぁ、彼女が俺の婚約者だ。ははっ。ローズはまだ俺の事が好きなのか?・・またエミリに突っかかっているんだろう。三年たっても変わらないな。」


 ジルはライアンの言葉に目を丸くしたのだが、ライアンはそんな事には気づかずにクスクスと笑いながら言った。


「ローズは昔から俺の事が好きでな、だが、俺は最愛のエミリを見つけてしまったから諦めろと言ったのだが、っふ。もてる男と言うのは罪だな。」


 ライアンの頭から今はローズがジルの婚約者であることがすっぽり抜けているのか、呟かれた言葉に控えていた事情を知っている従者らは顔色を悪くする。


「ローズが・・兄上を?」


 ジルは庭にいるローズに視線を向けながら、拳を強く握りしめた。




いつもありがとうございます!

頑張ります!


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