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六話 衝突する少女

 優芽の探偵事務所は緊張した空気が漂っていた。行方調査の少女が沙奈であることが判明し、犯行理由の自白もあり問題解決となったはずだった。しかし、沙奈が優芽のことが好きかも呟いたことで、その場に空気が変わったのであった。


「好意を持ってくれてありがとう。嬉しい。では後は依頼人に報告しないといけないわけなのだけど、依頼人に一度会ってくれることは可能かな?」

優芽はこの空気を破るためにさらりと流し、本題に戻すことにした。

沙奈は不満な表情となった。


「会ってもいいですけど、優芽さんは私のことどう思いますか?」

「どうって……」

優芽は返答に困り、沙奈を見つめる。沙奈は涙目になっていて庇護欲をかきたてられそうで、可愛らしくも見える表情をしていた。古都梨はというといら立ちを隠さず立ち上がる。


「ちょっと優芽、話戻して。依頼人にこの子を会わせるなら、日取りとか決めないでしょ。」

「あっ、ごめん。そうだった。沙奈さん、依頼人に会うのに都合のつく日時が知りたいのですが、明日や明後日のこの時間は都合つきますか?」

「先に私のことどう思うか、答えてくれませんか。」

沙奈はそういいながら、優芽を上目遣いでじっと見つめていた。優芽は先に話を進めるためにも答えるしかないと思った。


「かわいい、と思うよ。」

「ちょっと優芽何言っているの。仕事中でしょ。」

優芽にそう言われ、沙奈は満足そうな表情だったが、古都梨は怒り心頭だった。


「嬉しいです。私は明日でも明後日でもご迷惑かけた人に会うことは大丈夫です。優芽さんも一緒についてきてくれますよね?」

「はい、それは同伴しますけど。」

「それなら安心です。」

沙奈は嬉しそうにそう言った。


「連絡先とどこに滞在されていたかを記載してもらっても大丈夫ですか。依頼人の都合付く時間帯を連絡します。」

「はい、今は」

と、沙奈は連絡先と滞在先を紙に書いた。

滞在先は駅から少し離れたところにあるアパートのようだった。


「アパートにお住まいのようですね。ホテルに滞在と思っていました。」

「友達のところですけどね。この町に来たのもその子がいるからなんです。でも最初は数週間と言っていたのが、数か月になってて、居心地が悪くなってるんです。」

「なるほど。」

そして優芽はホテルとかの短期滞在先を探っても特定できなかったわけを知ったのだった。


話がまとまり、優芽の連絡先がわかるように厚めの名刺を沙奈に渡してから、沙奈を送り出す。

沙奈はまた優芽に会えるのがうれしいのか笑みを浮かべて事務所を去っていった。

送り出すと、古都梨が優芽の傍に寄る。


「何でデレデレしているの。」

「してない、してない。あと少しでこの件も終わりかな。」

「ふーん、それならいいけど。」

古都梨は、優芽の沙奈に対しての態度が不満のようで、沙奈が去ってからもいらだっていた。

優芽は気にしないようにし、依頼人達に予定を確認し、明後日の時間が都合つくことがわかったので、その時間帯に面会予定を入れたのだった。

そして沙奈に教えてもらった連絡先に連絡し、面会の予定を確認すると沙奈は二つ返事で快諾したのだった。心なしか前向きにワクワクしているようで、優芽は安心したのだった。

電話を終えると、古都梨に予定を伝える。

古都梨はというと逆に不安そうだった。


「明日、私もついてっていい?」

「いいけど、事務所が空きになるのはよくないかな。」

「そうだけど……。わかった。待ってる。」

そう寂しそうに言うのだった。



そして、面会日となった。予定の時間となり、沙奈は事務所に現れた。その姿はまさしく人相書きの通りで、白いワンピースに身長も古都梨よりも低く、幼く見えた。


「沙奈さんですよね。先日会ったときと印象が違うので驚きました。」

「素の自分の姿はあまり見られたくないのですが、今日は飾らないできました。」

沙奈はそういうとワンピースをはためかせて元気よく笑みを優芽に向ける。

する沙奈と優芽の間に古都梨が割り込む。


「なるほど普段は圧底、大人メイクでごまかされていたようですね。」

「ごまかすって何が言いたいんですか。私は素の姿でいるほうが多いですけど。」

古都梨の小言に沙奈は言い返す。古都梨は沙奈のことが気に入らないようだった。


「古都梨、失礼だよ。」

優芽が古都梨の失言を指摘すると古都梨は悲しそうな表情をし、自身の席に戻り座る。


「沙奈さん、すいません、ではそろそろ依頼人とところに向かいますか。」

「はい」

優芽にそう言われ沙奈は嬉しそうに返した。そして二人は事務所を出て、古都梨は一人残されたのであった。


依頼人の元へはタクシーに乗っていく。優芽は助手席に座ろうとしたが、沙奈に促され二人とも後部座席に着席する。さらに沙奈は優芽の傍がいいのか肩が触れ合う距離に座った。

沙奈の体は柔らかそうで、甘い香りがした。


しばらくすると依頼人のもとに付いたので、部屋に向かう。

呼び鈴を押し、用事を伝えると、依頼人真紀が現れた。

真紀は沙奈の姿を見て、感極まったように目に涙を浮かべていた。


「真紀さん、この方が依頼されていた女性で会っていますね。」

「……、はい。この女性です。また会えるなんて。」

「……この度はご迷惑をかけてしまい申し訳ございません。」

沙奈はしおらしく謝罪の言葉を口にすると真紀は驚いたように大きく首を振る。


「いいえ、迷惑なんて。あんな気持ちになれたのは久しぶりで。また会えて本当にうれしい。」

真紀は本当に嬉しそうにそういうのだった。

「では、これにて依頼は完了となると思うので、私はそろそろ失礼します。」

と、優芽は二人の邪魔にならないように、その場を去ろうとする。


「待ってください。」

沙奈が大きな声でそう言った。

「優芽さん、私のお願い聞いてもらえますか。」

続く言葉に優芽と真紀は茫然とするしかなかった。


「ただいま。」

事務所に戻った優芽は古都梨に声をかける。

古都梨はおかえりと返し、笑顔で優芽に振り向く。そして笑顔が不機嫌な表情に変わる。

なぜならいないはずの沙奈もいたからだった。


「……。依頼人のところに行ったんじゃなかったの。」

「うん、行ってきたんだけどね。」

「じゃあなんで、その子とまだ一緒にいるの。」

古都梨はそう言われ、困り顔の優芽は何も言えなかった。

それを見て、沙奈は古都梨に向かってどうどうと宣言した。


「優芽さんに依頼したいのです。私の運命の人を探してほしいです。」


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