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四話 少女は何処。

 少女の行方調査依頼を受けて、優芽は探し人の少女の足取りをつかむために現場を回ったが、手掛かりらしきものは見つからなかった。近隣のホテルやネットカフェ、カラオケ店などを回り、少女の滞在客がいたか、事件日に不在だったかを確認はしたのだが、該当人物はいないようだった。

ほかの町の同業者に連絡を取ったが、同様の事件は起きておらず、どうもこの町でのみ発生しているようだった。

となるとこの町の住人の中に犯人がいるようなのだが、そうなると範囲が広く見つけることが非常に難しい。

被害者に確認しつつ人相書きをして、駅前で張り込んでも見たのだが、該当するような少女が多く特定することはできなかった。

優芽は依頼報告日近くになっても、まだ少女を見つけられないでいた。


「難航してるみたい。」

優芽が苦悶した表情で机の上で頭を抱えていると、古都梨がコーヒーカップを持って声をかける。

「見つけられそうなのに、見つけられない、このもどかしさ。苦しい。」

優芽はそういうとカップを手に取り、口につける。


「特徴的な子だけど難しい。」

「……。最初は宿泊施設探せばすぐに見つかるとたかくくってたけど見つけられなかったからね。で、駅前の張り込みしたはいいけど、似たような女の子が多い。一人ひとり声かけてたらただの怪しい人だよ。」

自嘲気味に優芽は言った。

「優芽に声かけられたら、うれしいと思うけどな。」

「えっ?」

優芽が古都梨に振り向くと古都梨はそそくさと飲み終わったカップを手に取り、事務所内の給湯室に向かっていく。


「怪しくないかな。」

「怪しむとは思うけど、優芽はやさしいし、落ち着いているから、親しみを持ってもらえるはず。それに……かっこいいし。」

古都梨はほほを染めて優芽を見つめる。優芽はショートカットで、モデルに見えるスラリとした無駄なものがない体系をしていて、年頃の女の子なら気になってしまうタイプだったのだった。

優芽は古都梨に褒められ、勇気づけられたようだった。


「ありがと。じゃあ今日も張り込み行ってくる。」

言うやいなや、優芽は手荷物を持ち、勢いよく外に向かう。

古都梨は手を振り、いってらっしゃいと声をかけた。



優芽は駅前の広場に付くと、周りを見渡す。小さな町ではあったが駅前は栄えていて、ボランティア団体だとか何らかの団体らしき人が無作為に道行く人に声をかけていた。

優芽は端のほうに立つと様子見をする。そしてスマホを見るふりをしつつ、人相書きに近い少女を探すことにした。


時間が経ち、何人か似ている感じの少女は見かけるが、人相書きや聞いていた服装の特徴からは別人だと判断できることばかりだった。

優芽は今日も厳しいかなと思いつつ、休憩することにした。コンビニで飲み物を購入し広場から離れた公園に向かいベンチにこしかける。

ふぅとため息をつき、大人びた表情をしつつ飲み物を飲む。その姿は撮影のように様になっていた。


「あの、すいません」

声を掛けられ、振り向くとジーンズ姿でジャケットを羽織った女性が立っていた。厚めの化粧で目元の印象が深く特徴的な顔つきだったが、優芽の記憶にはなかった。


「えーと、何か用ですか?」

と優しく声を返す。女はあたふたとどのように話すべきか戸惑っている様子だ。


「……。人違いだったらすいません。昨年の冬かにx町にいらしたことはありませんか?」

「x町?行ったことはありますが、もしかしてそこでお会いしまたっけ?」


「はい、あの時はメイクもしてなかったし、服装もスカートだったはずですけど、覚えてくれてませんよね。」

優芽はそう言われ、その時のことを思い出そうとする。

x町は観光で行ったのではあるが、特に出会った記憶はなかった。


「ごめん。あんまり覚えてないかも。」

「……、そう、ですよね。あの時もどこか遠くを見られてましたよね。」

女は寂しそうに話す。見た目の割に繊細で寂しがり屋なとこあるようだった。


「記憶にないと思いますが、あの時にお姉さんに声かけてもらって、この町に住んでるって聞いて、私来ちゃったのですよ。」

「え、そうなの?」

「そうですよ。知り合いもいないし、大変なんですから。」

「それは、なんていうか、ごめんね。」

「謝らなくてもいいです。けど…もしよかったらこの後もう少し話せませんか?」

「今から?一応仕事中ではあるんだけどね。」

「え、広場でずっと待ち合わせされていたようでしたけど、用事すっぽかされたとかではなかつたんですか。」

「見てたんだ。」

優芽はバツが悪そうに笑った。

女を再度観察すると身長は女性平均くらいあると思ったが、底が高い靴を履いているようで、思ったより小柄で、メイクも大人びたメイクをしていて隠れてはいるがあどけなさが残っていて、優芽よりも大分年下のようだった。


「それなら、私の仕事場に来て話す?」

「ついていってもいいですか?」

優芽は迷ってはいたが、事務所に招くことにしたのだった。ただ話すのであればカフェに行ってもよかったが、勘の鋭い古都梨が察する可能性が高く、隠れて女性にあっていたことが後でバレルと困るからだ。


「その前に名前聞いてもいいかな。前に聞いただろうから申し訳ないけど。」

優芽がそういうと、女は嬉しそうに微笑む。

「あの時は名前聞かれませんでしたよ。私は沙奈(さな)です。」

「沙奈さん、じゃあついてきて。」


沙奈と名乗る女と公園を出て、事務所に向かう。


事務所に戻ると古都梨は優芽を見て、その後ろの女をいぶかしげに見つめる。そしてあっと声を上げると微笑む。

「へぇ、さすが優芽、しっかり見つけてきたんだ。」

「え、違う違う。この子は前にx町に行ったときに出会ったって子で、積もった話がありそうだったから、ここに招いただけ。」

優芽はそう返すと、古都梨は眉間にしわを寄せた。


「へー、それは詳しく聞きたいけど、でも先にいうけど、人相書きの少女はこの子よ。」

そして、そう断言した。

優芽は振り返ると、沙奈は無表情だった。

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