一話 何気ない日常の中で
ある平日の夕刻時、真紀はいつものように仕事をこなし、自身の住むアパートに帰った。真紀は新卒で入った会社にあと何年かで十年勤続になる若手社員の一人だった。会社では真摯な仕事ぶりと真面目なところが評価されてはいたが、飾り気のなく可愛げのないところを小ばかにされることも多い。今日もベテラン社員の人に言われたことが頭をよぎり、部屋に入り椅子に座りこむと、ため息を漏らす。思い出したことを振り払おうと、スマホを取り出し、ぼんやりとニュースやSNSを眺める。気晴らしにはなるいつもの日常ではあるが、物足りなさを真紀は感じていた。
いてもたってもいられず、婚活アプリを開いて、素敵な人がいないか探す。次から次へとプロフィールをめくるが、似たようなものばかりで惹かれはしない。以前に複数人と面会はしたものの、プロフィール通りの人達しかおらず、楽しくもなく誰とも進展することはなかった。しかし、それでも誰かいないかとアプリを開いてしまったわけだが、その日も特にピンとくる人はいなかった。
恋愛をしたいが、変な人とは会いたくない、真紀はそう思っていた。
一方でSNSを開くと、大学時代の友人は恋人や結婚までしている人が増え順風そうにみえてしまい、
うらやましいと思ってしまっていた。真紀の大学時代のころには素敵な恋人がいたものだが、今となっては疎遠で、もう何年もそういった相手に出会えていない。
真紀は何か素敵な出会いはないのかと思っていた。
トントン、と小さく玄関の扉をたたく音がした。
インターホンがあるのに、扉を叩いて呼ばれることはなかっため、真紀は何か危険な感じがした。
忍び足で玄関扉まで行き、のぞき窓から外を見る。
外には小柄な少女がいるようで、他には誰もいないようだった。
怪しさを感じはしたが、ドアロックを外し、扉を開く。
白いワンピースを着た細見の少女がいた。年齢は16歳くらいだろうか、あどけない表情をしている。
真紀が声をかける前に少女が間髪入れなかった。
「私はお前の嫁だ。少しの間かくまってほしい。」
真紀は少女が何を言っているか一瞬理解できなかった。