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表の世界と裏の世界  作者: 熊パンダ
1章 太陽の王国
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7話 アリスの力

・8月17日・ 朝  ……ソルダート村の森……


 眩しい……

 目に光が刺してくる

 ここはどこだ……? 

 太陽らしきものが顔を出し、あたりを照らしている

 もう1日経ってるのか……


 立ち上がり、あたりを見るが、やはりここは森のようだ


(ふぁあー、あ、お兄さんおはよう!)


 やはり夢ではなかったらしい

 姿は見えないがどこからか声がする

 耳で声を拾っているのではなく、頭の中に直接響く感じだ。


(あー、おはよう。これで聴こえるかな?)


 と、俺は俺の中にいるアリスに対話を試みる。

(ばっちり! 聞こえてるよ!)


(こんなこともできるんだな、てっきり夢の中でしか喋れないかと思ってた)


(便利でしょ?  これで朝から晩まで一緒だね!)


 だが、これで少し思ってしまう。

 夢の中では実態があったから肉体が死んだことはすんなり受け入れられたが、こうして声だけのアリスを聞くと、アリスが実際に死んだという事実が改めて俺にのしかかってくる。

 結構辛いものだな……。

 ……と俺が考えていると、


(……確かに死んだけど、所詮それは私の体よ! 抜け殻だと思ってくれていいから! 魂は生きてる! わたしは絶対にお兄さんから離れないよ! 安心して!)


 やっぱポジティブだな、それにしても抜け殻まで言うことはないだろう


 ていうか、ナチュラルに考えてることバレてないか……?


(……もしかしてだけど、俺の考えてることがわかるのか?)

(同じ体だもの、少しだけどわかるよ)


(……まじか、プライバシー消えたな)


(お互い様だよ! ふふっ……)


 お互い様……か、

 確かにちょっと集中すると少しだけアリスの気持ちが伝わってくる。


 ……俺と話していて楽しいと言う気持ちだ。

 よかった



 ただ、不思議だなぁ……この感覚。


(あー……とりあえずもうここからサンリスタ王国に向かった方がいいのかな?)


(そうだね、でもやっぱり準備は大切だよ。少しわたしの家で準備してから行こう!)



         ***



 俺はとりあえずアリスの家に戻り地図を開いて確認していた。


(目標はサンリスタ王国! このソルダート村の入り口から出て、ソルダート平原を少し歩いたらリスタの森が見えてくるの。その森を抜けたらようやく城壁が見えてくると思うよ!)


(そういえばアリスはサンリスタ王国に行ったことはないのか?)


(行ったことはないね、ただこういう知識はお母さんとお父さんがよく話してくれたことだから……)

(そうなのか、サンリスタ王国っていうのはどんな王国なんだ?)


(確か……この世界の中で一番活気のある王国で、王様はとってもいい人で民からの評判もいい国だって言ってた記憶があるよ!)


(王様はいい人か……それは良かった、俺の世界のよく聞く話で王様は正直悪いイメージをよく聞くからなぁ……)


 昔に見たアニメでの王様はとてもいい王様と言えるものではなかった。

 おそらくそれが理由で王様に対してそういうイメージがあるのだろう。


(お兄さん、もうそろそろ行く?)


(そうだな……行くか……)


 俺は背中に荷物が入っているリュックサックを持ち、家を出た。


(お父さん、お母さん、行ってきます……)


 アリスのやる気と、不安な気持ちが少し伝わってくる……

 そうだよな、この村から出るのは初めてだ、不安も多いだろう


 少しずつでいいからアリスを支えていこう、俺はそう決意した。


         ***


 村の入り口から出て、少し歩いたところでアリスが話しかけてくる。


(……ソルダート平原についての目立った特徴は特にないよ。ただ、魔物には気をつけてね。お兄さんを襲ってくるから)


(魔物がいるのか……なぁ、魔物と魔族の違いってなんだ?)


(魔物のほとんどは自我がなくて人間だけでなく魔族すらも襲う凶暴な生物だよ、まだこの周辺にはそんなに強いのはいないと思うけど、お兄さんレベルなら戦ったら多分ギリギリだから、魔物にあったら逃げたほうがいいよ! ていうか死にたうなかったら逃げてね!)


(そんなに危ないものなのか? 魔弾だって手から出せるようにはなったぞ?)


(そんなもんじゃたいした攻撃はできないよ。せめて初級魔法が使えればいいけど、初級魔法って適正のない魔法で習得が1年もかかるから今すぐできるってわけじゃないんだよね)


(初級魔法ってわりに結構かかるのな……ん?じゃあ適正のある魔法ってのはどのくらいでできるんだ?)


(それは人によるね、早い人だと数日でできちゃうよ、まぁでもお兄さんの適性のある魔法はそのうち調べないといけないね)


(魔法か……)


 魔法は俺の元いた世界では夢のような存在だ。

 基本小さい頃見たアニメでは便利なイメージがあったな、

 今こんな状況じゃなければ……楽しめるのだが……


 とかなんとか思っていると目の前から小さい犬?のようなものが3匹ほど現れる。

 いや、犬ってよりもオオカミ? 

 小さいのにとても凶暴そうだ。

 これが魔物か……?


(お兄さん! そいつらは狼型魔物のレクエノの子供だね、子供ならお兄さんは魔弾を当てまくればギリギリ倒せそうだけど、親を呼ばれると勝ち目がないから逃げて!)


 ……魔物の子供でも俺はギリギリなんだな……


 俺は全速力で逃げるが、相手は獣、子供とはいえ流石に早い。

 俺は焦りながら魔弾を一番先頭にいるレクエノに飛ばし、転ばせその後ろにいる2匹もそれに巻き込まれなんとか振り切った。


(……な、なんとか逃げ切ったけど、この先これで平気だろうか……絶対王国着く前に死ぬよね……?)


(……確かに……このままだとお兄さん命がいくつあっても足りないね……)



 するとアリスは「もしかしたら……」と言い、

(……お兄さん、少し試したいことがあるんだけど、いいかな?)


 と、提案をしてきた。


(ああ、いいぞ)


 (いくよ)


 すると俺の右手が勝手に上がる。

 俺はすぐ右手を下ろそうとするが、右手どころか、やらだ全体動かない。

 まるで支配されてしまったかのように


(!?!?)


(やった! やっぱりできるんだ!)


(ア、アリス何をしたんだ?)


(わたしにもお兄さんの体を動かせるかなって思ったんだけど、やっぱり動かせるみたい! ……で、でも不思議ね、男の人の……体の感覚ってこんな感じなんだ……)


 アリスの恥ずかしいと言った感情が流れ出てくる。

 やめろ、俺まで恥ずかしい気持ちになる。


(ついでにもう一つ試すね!)


 と言うと、アリスは俺の体を動かし右手を前に、そしてある言葉を発した。


「初級太陽魔法"リャーマ"」


 すると俺の手から炎の玉が出て、前にある岩に当たった。


(今のは……魔法……?)


(そう! 初級太陽魔法のリャーマ! まさかとは思ったけど魔法も使えるみたい! ちょっと他にも色々試させて!)



         ***



 あれから俺の体を1時間ほど使われた。

 それでわかったことがいくつかある。

 それをまとめると、


 ①アリスが俺の体を操れる時間は5分ほど、そのあとインターバルが5分必要。


 ②使える魔法は初級太陽魔法のリャーマと、ブーストのみ、他の魔法やアリスの前使っていた死霊魔法や幻覚魔法は使えなかった。アリスが言うに「お兄さんには適性がないからだよ」と言われた。


 ③魔力の量は俺の量だけなのでそんな連発はできない。使いまくればすぐ魔力が切れる。使い所が重要だな。


 ④アリスに魔法を撃たせてから俺自身でも魔法が少しだけ出せるようになった。初級太陽魔法のリャーマのみだ……といっても1発しか打てないが。


 ⑤アリスが乗り移ったとしても身体能力も俺の身体能力だ。多少元の世界では動けていた方でも今の世界では普通レベル。元のアリスの方がもう少しは楽に動けるらしい。


 ⑥リャーマは炎の玉を自分の手から出せる魔法だ。中級魔法士になるまでは威力が決まっており、消費する魔力とやらも一定になるらしい。ブーストはそのままで、身体能力の向上だ。これも中級魔法士になるまでは5分ほどの効果があるらしい。ただ、これの便利なところはブーストを使った状態でアリスの憑依時間は解けてもに入ってもブーストの効果は持続する。これはとても良い情報だ。


 ざっとこんな感じだ。


(まぁ、でもこれで一応死ぬリスクは減ったね! 逃げて逃げて、しかたなければ戦って……これを続ければいつかは着くよ!)


(はは……骨が折れそうだが、前の状態よりは全然マシだ。ありがとう、アリス)


(えへへ、どういたしまして〜)


 と、こんな調子でしばらく平原を歩くことになった。

 ソルダート平原には強すぎる魔物はいなくてなんとか倒せるレベルだ。

 アリスのインターバルが来たとしても、その瞬間にブーストを唱えてくれるので、俺は魔物に会ってもすぐ逃げれるようになっている。


 アリスにはほんと頭が上がらんな、今度、白い空間で肩でも揉んであげようか……

《出てきた魔法》


1,太陽初級魔法”リャーマ”……基礎5大魔法と呼ばれている太陽魔法の基本の魔法。炎の塊を手のひら、もしくは杖から発射する。

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