第4話:鯨は確かに本当に居た
第4話です。是非最後まで読んで頂きたいです。
「え?」
『凛の、体験談…たぶん漫画にしたら正直凄く面白い内容だと思うの!』
「いやでも、その、本が読めなくなった原因とかまだ分からないじゃん」
『それがね、最近もしかしたらって思う原因が分かったのよ!!』
「ほんと!?」
『漫画にさせてくれたら教えてあ』
「いいよ!いいよ全然!!教えてよ!!」
『わ、分かったわ、ありがとう。とりあえず暑いし部室いかない?』
そこから私達は漫研の部室に行った。
その時は私達だけだった。
『はー、凄いクーラー効いてる…』
「それで!?結局原因はなんだったの!」
『…うん、私が聞いたのは…あなた"鯨"って聞いたことある?』
ゾクっとした、なぜか、失ってしまった宝の手掛かりが、本当に絶対的にない筈の、もう諦めたその先の地図に、絶好のバツ印が唐突にぶつかってきた予感がブワッと、鳥肌と共に、私の全身の骨を軋ませるまで抱きしめてくれたような。
「…うん」
『あのね、ごめん、嘘くさい話かと思うかもしれないけど、世界中で"本を喰う鯨"っていう話が噂され始めたの』
「…!!!」
『その、SNSからの話だし、本当に確信はないのだけど、国籍を問わず、多くはないのだけれど、僅かな人達がぽつ、ぽつと。ある日、みんな同日に文字だけの本が読めなくなったらしいの』
「…それはいつなの?」
『2021年3月7日よ』
「私と……私と、全く同じだ……」
『あのさ、この話……!』
「うん、ごめん、私もたぶん今」
『「凄くワクワクしてる』」
退屈で、残酷で、何の為に在るかも分からないこの人間の世界に。
『鯨は確かに本当に居た』
私はその鯨に苛烈な、憎しみの業火を燃やした。
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