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お嬢さまの身代わり⑦


 馬車の中には私と義両親が向かい合わせに座っている。馬車が揺れたりすることはなく、安定感があるのはカーターが馬を操るのが上手だからかもしれない。それに、上等な乗り心地なのも安定感を与えている理由になっていそうだな。

 外を眺めていた義父が、蒼白になりながら窓から視線を外し俯く。義母が心配そうに義父を見ている中、私は義父が見たものが気になって窓から外を眺めてみた。


「……マジか…」

 目の前に広がる雲…。雲!?まさか!飛んでるの!?うわー…地面が遠いわ。そりゃあ、お義父さんの顔色も悪くもなるよね。私は観覧車を思い出したけど。

 久しぶりに日本語が出ちゃった。二人とも震えてて気づいてなくて良かった。あ、お義母さんも見ちゃったんだ。くっ付いて震えてるけど、落ちる事はないと思う。だよね?

 少し心配しながらもこれ以上景色を見るにはカーテンを開けなきゃいけない。それは義両親の為に止めて、座席に座りなおした。

 でも、馬が羽根でも生えてなきゃ飛べないだろうし、黒馬と茶馬だったから色合い的にペガサスって訳じゃなさそう。てか、ペガサスがいる世界なのかもわかんないけど。んー…魔法?あの杖もって呪文唱える映画あったなぁ。私が小学生の時だったから話は曖昧だったし、内容殆んど覚えてないや。でも、魔法がある世界で、獣人で、モフモフでって考えたら少しワクワクしてくるよね。って思ったけど、王子が相手じゃモフモフ出来ないじゃん。



***



 なんて、色々と考えている間に下降を始めた馬車に気付いて、カーテンを開ける。結構な時間乗ってたからか義両親はいつの間にか高いとこに慣れてたみたいで、反対側のカーテンは開いてて景色を堪能してた。


「すごっ…」

 ……イタリアの街並み?中世のイギリスの街並み?んー…説明が出来ない。ただ、建物は一定の高さを保ち、色取り取りの屋根。あ、あれが王城か。でかっ、威圧感半端ない。王城の周りの少し高そうな屋敷が上級階級の居在地かな。って、また日本語喋ってたわ。興奮すると出るクセ直さなきゃ。

 王城が目の前に差し掛かると、静かに急降下し、地面に降り立った。その間、衝撃は一切感じなかったので、やっぱりカーターは有能な御者なのだと再確認することになった。

 扉が開き、スッと手が伸びてくる。やっぱりカーターは有能だな、なんて考えながらその手に自分の手を乗せると、ゆっくり馬車を降りる。ジェントルマンな相手をカーターだと思っていた私の目の前にいるのは、別人で、態度には見せなかったけど内心驚いてしまった。


「ウィンターソン王国にようこそいらっしゃいました。我が花嫁」

「ど う ぞ こ れ か ら よ ろ し く お ね が い し ま す」

 なんてこった。目の前にいるのが私の旦那さまだと?しかも手の甲にキスされた!もう、テンパり過ぎてやっとこさ絞り出したような返事になっちゃったよ。

 手を引かれたまま城内を誘導されて、そのまま彼の横顔を盗み見る。金色の髪の隙間から黒髪が覗いている短髪に、少しツリ目がちなハチミツ色の瞳、鼻は高すぎず低すぎずのシュッとしていて、唇は少し薄いかも。白を基調とした王族の衣装は、豪華すぎず質素すぎず、王子の恰好良さを引き立たせていた。

 なんで王子はイケメンって部類にしか入らないんだろう。あ、お顔が悪いとお嫁さん来ないから?内面が良ければ、きっと誰かいてくれるのに。まあ、この人は顔が良すぎるからきっとオモテになるんだろうなぁ。直ぐに私に飽きて側室とか迎えちゃって、その内離縁されちゃいそうな気がするな。

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