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夢のまた夢の中の夢

作者: 笙野ひいろ

昔昔、まだ神様が地上におわした時のこと


地上は争いに満ちておった

災害に満ちておった

澱みに満ち溢れておった


人々はそれが(ケガレ)だと言った

穢を祓わなくてはならぬと言った


王にはそれができなかった

彼にはそれをする力がなかった

する為の時間も金もなかった


しかし彼は高潔だった


あらゆる手を尽くした

自ら敵を屠った

自ら鍬を振るった

自ら民と同じ地に立った


そんな王を民は愛した

王もまた民を愛し慈しんだ


それでも穢は止まないとまらない

王は自らを贄として神に身を捧げた

民の安全を請い願った

民もまた高潔な王の再来を請い願った




光が差した


巫女が降り立った

巫女は神の使いだと言った

双方の願いに打たれたと

清廉な魂に導かれたと言った


巫女は高潔な王に力を与えた

穢を祓う祓除(ふつじょ)

その世が続く治平(ちへい)

その力をもって高潔な王は穢を祓い

世を平和たらしめた


高潔な王は人の身

巫女は神の使い

故に躰が持たなかった


高潔な王はもはや王ではない

もはや人ではない

もはや存在すらない


高潔な彼は光となった

光となって国中に降り注いだ

全ての民がその光を浴びた

光を感じた

高潔な王を想った

彼を祀り想い続けた


巫女は自らを呪った

清廉な彼を民から引き離してしまったこと

民から王を取り上げてしまったこと

呪いの果てに

巫女は自らの躰を引き離し

地上へと降った

高潔な彼の代わりとして

穢を祓い続けると誓った




宙を見上げてご覧なさい

頂に社が見えるでしょう

清廉な彼は今もそこにいる

彼の魂は受け継がれ

今も我らの王として

我らと共に生きている


我らは想い続ける

我らは願い続ける

彼の御代が穏やかであるように


我らは唄い続ける

我らは祈り続ける

巫女の贖罪が報われるように







『「漣国記」仁和伝』より抜粋


ありがとうございました!


今度、この世界観で一つ作品を書こうと思っているので、良かったらそちらも楽しみにしていただけると幸いです

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