第5話 サクリファイス
網柄甜瓜。好きなものはメロン、メロンパン、メロンサワー、生ハムメロン、メロンソーダ。特にカラオケボックスのドリンクバーで作る、コーラとメロンソーダの割合が3:1のおぞましい色の液体は格別だ。誰かもこれを好きと言っていた気がするが、思い出せないことなどどうでもいい。答え合わせが出来ないことなど知るだけ無駄だ。嫌いなものは最低限の送りバントも出来ない八番キャッチャーだ。
「おはようございます網柄さん」
「おはよう」
「網柄さん!」
会社の男たちはかつてバンダイが販売していた玩具“ピチピチゴンザレス”のように甜瓜に群がり、ご機嫌取りの挨拶をする。網柄甜瓜は会社の人気者だ。控えめに言っても美術品のように完成された美しすぎるマスクは最早人間には思えず、彼女の顔写真をフォトショップで加工すればフォトショップの力が及ばないか、美しさの概念が時計のように一周して醜くなるだろう。メロンのような豊満なバストはいくらボタンをしてもスーツを着ても目立ってしまうし、それが不釣り合いにならないような長身の一七五センチメートル。およそ九頭身で、長い足はスラっと伸びて、高いヒールで歩いても歩幅は少しも変わらない。足に透ける血管に男性社員たちはハァハァする。少し明るい茶色のウェービーなロングヘアーからたまに覗ける未熟なメロンのように青白いうなじも人気だ。
これだけ完璧だと敵もいるんでしょう!? しかし、少なくとも出勤している間に甜瓜に文句を言える人間は誰一人としていない。彼女の仕事は誰よりも迅速、的確で、速度や精度に問題のある同僚へ優しい言葉でのフォローも欠かさない。そういう理由で、会社の人間はみな、甜瓜に優しくしてもらった恩がある。その態度や行動に驕りはない。
甜瓜に文句を言える人間がいるとすれば、「なんで網柄さんは俺に惚れないんだ! キィー!」とか「網柄さんの仕事のクオリティ、美貌、性格のうちどれか一つでも欠けていたら声をかけられたのに!」といった無力で臆病な男たちの愚痴だろう。女性たちは何も言えない。言うだけ自分が悲しくなるだけだ。もし、全国サークルの姫選手権にオーバーエイジ枠で社会人が参加出来るのなら、甜瓜は美人度だけで大学生をぶっちぎるだろう。だが美貌や才覚への自覚と制御力で小悪魔度とサークルブレイカー度を稼げずベスト8ってところだ。
こんな完璧美女、甜瓜様が実は一人カラオケではメロンソーダとコーラのおぞましい液体を作って顔を綻ばせながら飲み、天使のハープの音色で特撮番組のテーマ曲を熱唱しているなんて誰も知らない。
数年前に甜瓜を中途採用した人事部だって、甜瓜のプライベートや過去のことは、その見事な働きっぷりに上書きされてほとんど忘れてしまった。
大混雑の中央線に乗ってもチカンを試みようする輩はいない。このレベルの相手に手を出すとバックに何がいるかわからないからだ。
夕方の中央線。中野駅で降りた甜瓜は、アーケードをくぐって、ゾンビ現象が始まった時にオタクが籠りたいショッピングモールランキング一位の中野ブロードウェイに入店した。掘り出し物のVHSやビンテージのレコード、ショウウィンドーやレンタルスペースに並ぶ良品、珍品、粗悪品のフィギュアや、かつてバンダイが販売していた懐かしの玩具ピチピチゴンザレスなどを一通り眺める。特撮好きの甜瓜にとってここは天国だった。だがあまりショウウィンドーに近づきすぎるとウブなオタクたちがビビってしまうので、遠くを歩きながら一瞬目に入れるだけだ。“修羅の国”とも呼ばれるハイレベルなゲームセンター、中野TRFではニコニコ動画でゲーム大会の生配信がされている。
「グヘヘヘヘ! 昭和美人も悪くねぇなぁ! 流行り廃りの関係ねぇ美人ってもぉう最高! フォトショなしでこれだもんな! この時代ってエステとかどうしてたんだろう?」
「買わねぇなら失せろガキ」
「おいおいおい客にそんなこと言っていいのか? ビデオデッキごともらうぜ」
「毎度」
騒がしくなってきた中野ブロードウェイで誰かの視界に一定以上いることなく去り、中野通りと早稲田通りの交差点で黒塗りのリムジンの後部座席に乗り込んだ。
窓にカーテンを引き、衣服を脱いでセクシーな下着姿になる。メロンの柄のように粗い網目のインナーを着て寄せて上げると、豊かな乳房に繊維が食い込み、より扇情的になる。胸の谷間と美しい太ももが露わになるようにデザインされた、フリルのつきの丈の短い着物を着こみ、生物を興奮させる血のように赤の帯を締め、ブーツの紐を結ぶ。仕上げに甜瓜は、こめかみから渦を巻いた羊角状の突起が伸び、黄色い正六角形が集合したハニカム構造状の複眼を持つ白いマスクを被る。来日した海外のVIPを連れて行く築地の超一流寿司店の板長が握る極上のマグロのような唇でアンニュイにため息をつき、髪の毛をサラッと流して“変身”を完了させた。
リモコンのスイッチをONにすると、備え付けのディスプレイに黒づくめの老人が映った。顔に黒い包帯を巻き、その多くは右目の辺りで重なり隠している。
「こんばんは。君にとってはおはようかな? 網柄甜瓜。いや、最高幹部“サクリファイス”」
「外庭先生、いえ族長。わたしは何も問題ありませんわ。ロードのご様子は?」
「心配には及ばんよ。少しばかり、“犠牲”になってほしい人物がいてね」
「伺います」
車内に吊るされている鳥かごに一人の男の写真があった。自分には出来ないような、他人に向けるまじりっ気のない純度の高い笑顔だ。甜瓜、いや、サクリファイスもこの人物には見覚えがあった。チョコレートの分野において日本でのシェアを大きく伸ばしてるヒジリ製菓の会長の御曹司で、異星人である会長と地球人の女性との間に生まれたハーフの息子、シズマだ。清廉潔白、品行方正、眉目秀麗。このままいけば、彼は日本初の異星人国会議員になるだろう。清廉潔白、品行方正、眉目秀麗な人物に国会議員が務まるとは思えないが、政治家の仕事の大半は当選するまでで終わるので、サクリファイスがシズマを始末してしまえば、異星人の政界進出はまた大きく遅れるだろう。
「彼はどこに?」
「君の乗っているリムジンは既に彼のところに向かっている。君は彼だけをあの世に置いてすぐに戻ってくればよい」
鳥かごを抱えたサクリファイスを乗せ、リムジンは街灯の尾を引きながらいくつもの高架をくぐる。そして甜瓜の職場も近い、渋谷区某所の高級料亭にピッタリとつける。その運転技術は、表面張力だけで持ちこたえているコップの水もこぼさないだろう。非常に挑発的なサクリファイスのバストも少しも揺れない。
ガラっと金属音をたて、鳥かごを左手に持ったサクリファイスがアスファルトにブーツの踵を落とす。突然現れたこの怪人“サクリファイス”に、スマホのカメラを向けるものもいる。しばらく経つと料亭からターゲットであるシズマがやってきた。
「ご機嫌いかが? シズマさん」
「なんだ君は。まさかゴア族か?」
「半分正解。半分外れ」
異次元人ゴア族! 次元の壁に穴を開け、他の世界からやってくる悪質な侵略者である。他の民族が尊重している信仰や命、感情を簡単に踏みにじり、ゴア族以外全てを奴隷にすることを目標としている。アブソリュート一族と激しく対立していたこともあり、この五十年間は大人しくしていたはずだが、ついにそのゴア族が再び蜂起しようとしているのだろうか!? サクリファイスは空の鳥かごを掲げ、シズマに見せつける。
「大人しく武器を置き、頭に手を付けてゆっくりと膝を着け」
その奇行の背後をとり、拳銃を突き付けたのは、強化服“ミリオンスーツ”を装着した特殊警察ACIDの和泉岳だ。
「あらお巡りさん? シズマさん、あなたお巡りさんに守ってもらわなきゃいけないほど何か悪いことをしてるの?」
「警告は一度だ」
「……」
和泉の視界の下の方を何かが駆け回る。だがミリオンスーツのセンサーには何の反応もない。その何かは数を増やして大きなうごめきとなり、感触もなくミリオンスーツの足にへばりつく。
「キャー!」
「コッチヲ見タワー」
「キィー!」
「ヤッツケロー」
ようやく和泉は自分の身に起きている異変に気が付いた。足下からミリオンスーツを包囲するのは、金切り声を上げる、小指の爪ほどの大きさで半透明の小さなサクリファイスの軍団だ! その小型サクリファイスの群れを辿ると、本体であるサクリファイス……網柄甜瓜の鳥かごから次々と小型サクリファイスが飛び出てくるのが見えた。小型サクリファイスは鳥かごから離れるほど姿がくっきりと見えてくるが、鳥かごから離れたばかりの小型サクリファイスは和泉はもちろん、フジでさえ察知するのは容易ではないだろう。
「何をする気だ。武器を置け!」
「点火」
KABOOM!
ミリオンスーツにへばりついていた小型サクリファイス一人一人が爆弾となり、次々と自爆する。一人一人の破壊力は大きくないが、ミリオンスーツの右膝まで隙間なく覆う程の小型サクリファイスの爆発は、和泉の体から制御を奪い、よろめかせる。サクリファイスはまだやめない。鳥かごからどんどん小型サクリファイスを出撃させ、爆破を続ける。断続的に続く細かい炸裂音と爆炎にシズマは目を細めた。
「和泉さん? 和泉さん!」
「彼の心配はいらなくってよ」
KABOOM!
一人の小型サクリファイスがシズマのまつ毛にぶら下がり、自爆する。強化服を着ていない生身のシズマは銃撃されたかのように転倒し、地面に激しく頭を打ち付けて痙攣した後、動かなくなった。
黒塗りのリムジンが最小限の動き、音でサクリファイスを迎えに来た。
「ご苦労、サクリファイス」
「すべてはロードのために」
リムジンに乗り、“変身”を解除したサクリファイスは元のOLの姿に戻り、中野で下ろしてもらって再び中央線に乗った。吉祥寺で降り、超高級タワーマンションの自室に戻る。甜瓜の勤めている会社は稼ぎも悪くないホワイト企業だが、こんなタワーマンションにこの若さで住める程ではない。何か怪しい収入源があるのだ。
シャワーを浴びた甜瓜はいつから好きだったかもわからない程好きな特撮番組のブルーレイをPS4に挿入し、冷蔵庫からキンキンに冷えたメロンを一玉抱え上げる。そしてへたの部分を切り落として直径十センチ程の果肉の断面を露出させ、ギザギザになったスプーンで行儀悪く果肉を削り取って食べながら特撮を観る。フワッとメロンの香りが強くなった。メロンの中心部は空洞なので、スプーンがその空洞部分に辿り着いたのだ。甜瓜はウキウキと小躍りしながらその空洞にブランデーを少量注いだ。しばしの間メロンに夢中になった後、ストレッチをして、特撮フィギュアだらけの寝室で眠りについた。そして今日もまた出勤する。
「おはようございます網柄さん」
「おはよう」
〇
「おっふ、最近帰りが早いですな望月さん」
「そんなことないよぉ」
一方でこのガッカリヒロイン望月鼎は、たった六人のオタクを相手に驕り、片手間に扱って最近は視線のばらまきも行わない。フジというそこそこ面白い遊び相手と出会ったことは理由の一つだが、理由はやっぱり件の一千万円だ。一千万円の使い込みはどうやらバレているようだが、フジは強く鼎を責めなかったし、ミリオンから小遣いももらっているようだから今すぐフジが生活に困ることはないはずだ。もうちょっと使っても大丈夫だろう……。そんなメロンよりも甘い考えは、鼎の自制心を暴走させる。やや心に曇りは残すが、自分がきれいになることはオタサーへの一種の貢献である、と考え、今日も街に繰り出す。
今日はサンシャインシティに行っちゃおうっかなぁ? 悪いワクワクを浮かばせながら池袋の町を歩く。そろそろオタサーにもエサが必要だ。サンシャインシティのポケモンセンターで大きいピカチュウのぬいぐるみでも買ってあざとくだっこしてればしばらくもつだろう。
「……ナニアレ?」
池袋駅東口に出ると、オブジェとしてはセクシーすぎる露出の多い和ゴスの服を着た覆面の長身の女が手に鳥かごを持ち、中に入っているチラシを配っている。過激なグラビア撮影にしては手が込みすぎているし、カメラマンはいない。いや、プロのカメラマンはいないだけで、スマホで写真を撮っている人間はたくさんいるのだが……。鼎はスルーしたが、踏みつけられたチラシにはこんなことが書いてある。
『GOD覚醒の時は近い』
GOD?
パァンと炸裂音が響き、野次馬たちの手からスマホが飛ぶ。野次馬たちはバンダイが販売していた懐かしの玩具ピチピチゴンザレスのように逃げていく。この池袋という町、ヤバイやつは少なくないのだ。スマホを爆破する? そんなやつぐらいいるだろうという考えでこの町で過ごしている。
「少なくとも、俺の友達じゃないな」
上空からすっとぼけた声が聞こえる。
「フジ!? いつからいたの!?」
「今来た。そこの献血に行くと巨乳アニメのグッズがもらえる」
「あんたの血なんて輸血して大丈夫なの?」
「さァな。だが俺に輸血するときはカワイコちゃんの血だけにしてほしいな!」
ゆっくりと着地したフジは垢ぬけない“オタサーの姫”鼎と、“セクシー女幹部”サクリファイスの間に立ち、鼎に背中を向ける。鼎は鞄からアブソリュートミリオンのお面を取り出して、顔を覚えられないように被った。
「うっはぁこりゃたまらんボディ! 俺がシティーハンターじゃなくても危うくモッコリするとこだったぜ。メロンみたいなボインだ!」
「フッ、坊やにメロンはまだ早いわ。あなたにお似合いなのはレモンよ。ファーストキッスの味、まだ知らないでしょう?」
「メロン味でもいいんだぜ? お姉さん」
サクリファイスが鳥かごを掲げると、小型サクリファイスが数十人飛び出してフジに襲い掛かる! サクリファイスの手によって今日、“犠牲”になるのは、このフジ・カケルだ。
「雑魚をいくらよこしたところで意味はねぇぞっと」
フジは左腕をピンと伸ばして掌を地面に垂直に、やや引いた右手でデコピンをする。離れた場所にいるサクリファイスの複眼がパチンと軽い音を立てた。
「意味はあったわ」
フジの前方で、小型サクリファイスが垂直の壁を作っている。小型サクリファイスは阻まれたようにその先に進めないのだ。サクリファイスはこれが知りたかった。
「あなたの超能力は、“バリアー”ね?」
「あぁん?」
「わたしの“サクリファイス”は生きたモーションキャプチャー。一つ一つがセンサーとなり、あなたが作り出した壁に張り付いて、その動きを記録する」
「ご名答。俺の超能力は“バリアー”だ。俺が作り出したバリアーは見えないようにも出来るし、俺は好きなように操作出来るし、好きな形に形成出来る。バリアーの塊で殴ることもできるし、バリアーの板に乗ったまま動かせば飛ぶことだって余裕だ。だがバレたところで意味はねぇ。フジ・カケルは無敵だ。無駄だったな」
そんな危ない能力で何回も飛ばされたりしていたのか。命綱もなく! 鼎はもうフジと飛びたくはない。
フジが人差し指でグルっと空中に輪を描くと、薄い円盤状のバリアーが指先で高速回転する。
「セァッ!」
フジがサクリファイスに指を向けると円盤が小型サクリファイスたちを切り裂いてサクリファイス本体の首を刎ね飛ばし、駅のコンクリに傷をつける。鼎はお面の目を覆い、蹲って恐怖に震えた。ついにフジが明確に人を殺してしまった……。
「キィー!」
「ヨクモ殺シタナッ!」
しかしここに来てまた鼎の勘は外れている。小型サクリファイスは、切り離されて転がったサクリファイス本体の頭をバケツリレーで回収し、首を刎ねられて立ったまま動かない胴体に据える。
「そう来るってわかってたわ。残念。わたしは死なないの。わたしは自分の意思で自分を“犠牲”にした時のみ、ダメージを受けな……」
「知らねぇよ」
フジがロックスターがライブでやる投げキッスのように両手を広げると、数百人の小型サクリファイスでさえ覆いきれない特大のバリアーが展開される。フジはそのバリアーを強引に押し、転がっていたスマホの残骸やエナジードリンクの空き缶、逃げ場がなくなってバンダイが販売していた懐かしの玩具ピチピチゴンザレスのように右往左往する小型サクリファイスも巻き込んで、サクリファイス本体をデパートのショウウィンドーに押し付ける! ガラスとバリアーに挟まれ、サクリファイスの白く柔らかな体がムニュムニュと扇情的に変形する! このままじゃ……。このままじゃ“ど根性サクリファイス”になってしまう!
「ぐっ」
透明なバリアー越しだから見える。フジが全速力でこっちに走ってやってくる。その一歩一歩で揺れるフジの服も、やかましい足音も全てサクリファイスにはわかっている。だが逃げることが出来ない! 小型サクリファイスを“犠牲”にしてもこの障壁は破れない……。根性で耐え抜くしかない!
「ブーツ履くほど寒いんなら胸の谷間なんか出すんじゃねぇ! セアァッ!」
サクリファイスの数歩前で体を回転させたフジは、バリアーの上からサクリファイスの腹部に強烈な飛び後ろ蹴りを見舞う! 衝撃がしっかりと伝わり、背後のショウウィンドーを粉砕して化粧品売り場の中を転がるサクリファイス。どっこい生きてるデパートの中! 砕けたガラスの雨に打たれながら、フジは舌を出してパシャパシャと倒れるサクリファイスの写真を撮る。そして難を逃れた小型サクリファイスを摘まみ上げ、口へ放り込んだ。炸裂音がし、フジが爆炎混じりのくしゃみをするが無傷だ。
今日はここまでだな。フジの能力がバリアーであると裏付けをとった。出来れば左目を破壊しておきたかったが、最低限の最低限は出来た。サクリファイスは引き際を悟り、小型サクリファイスに体をバケツリレーで運搬させて逃亡した。フジもそれを深追いはしない。
「ひぇ……。なんなのよあれ。あれで死んでないの!?」
「今のは多分ゴア族だ。夏の季語だな。夏になると親父がゴア族を退治した時の話を始める」
「そんなことはどうでもいいの! ゴア族って何!? GODって何よ!」
「お前さんが知らなくてもいいことだな。お前さんが知らなくていいことはたくさんある」
「嫌! 教えて! 何が効くの!? スタンガンは効く!?」
「教えてってお前さん、東大とか行ってるやつや国家公務員試験満点合格のやつでもいくら聞かせても理解出来ねぇことをお前さんが理解出来るか?」
一千万円のマネーロンダリング、もう諦めていいんじゃないかな!? 使い込んだ分は謝ってどうにかするしかない。買い占めた転売用の『屍滅』もまだ残ってる。フジに守られるより、フジに関わらない方が安全では? ……戻れるか? 何も知らないオタサーの姫に。
「……」
「知ってりゃいいことは簡単だ。フジ・カケルは無敵。以上だ。ずらかるぞ」
フジは移動用のバリアーの板を展開し、鼎に手招きした。
「ひぇぇ……。せめてこのバリアーは九畳くらいの大きさにして……。あと速度は五キロで……」
次回、いよいよヒロイン交代?
力と正義感を持つトラッシュの姉貴、“アブソリュート・ジェイド/寿ユキ”が登場する。
第6話『大変! 姉が来た!』