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アブソリュート・トラッシュ  作者: 三篠森・N
第3章 絶対零度
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第23話 テオリア

 もう長いこと彼女は平穏? 無風の時間? を過ごしていたので忘れられていそうだが、この物語はフジ・カケルと望月鼎が出会ったことで始まった。

 彼女の通う大学を予備校のサイトで調べてみると一応偏差値は出てくるが、それは立地の良さとか歴史の長さや人口密集地で定員割れは起きませんよ、って意味の偏差値だ。そのため、都内では偏差値不明の大学はない。広く浅くを絶妙に役に立たないレベルで学ぶため、何のエキスパートにもなれない。秘書検定だとか教職だとか、宅建だとか自分で考えて将来像を描かないと無力なまま世間に放り出される。一応、試験ナシで入手出来る資格もあるが、勉強などほぼしなくても入れる大学の必修教科を修めるだけで手に入るようなものだ。

 鼎に社会調査を教える講師は映画好きだった。映画を例に出したり、映画を見せたり……。程度の低い学校で、教員が学生の興味を引くためにパワポでボケたりアニメやドラマで親しみを持たせることは少なくない。

 鼎が講義で観たのは黒澤昭の『羅生門』だった。複数の視点と証言により、たった一つであるはずの真実が藪の中に消えてなくなる。テオリア……観察眼がインタビューによる質的調査には必要だ。


 では聞いてみよう。


 天狗1号さん(本名:宇野)……『サザエさん』のEDじゃんけんにおいて驚異的な勝率を誇る。十連勝を三回、九連勝一回、八連勝五回。彼曰く「じゃんけんは三連勝するとゾーンに入る」。

 アブソリュートミリオンと戦った彼はこう思った。

「悪鬼羅刹だ! ヤバい! こんな話、上から聞いてねぇ! 殺される……。あいつはレイやジェイドと違う! 本気で殺しに来てやがる!」


 天狗2号さん(本名:津村)……家事の達人。お料理、お掃除に重曹をフル活用。“重曹2号”の異名を持つ。

「静寂閑雅。俺たちは重曹が水に溶ける時の気泡より静かに、ミリオンの刃に斬り裂かれた。少し違うか。みんな悲鳴を上げていた。俺は恐怖のあまりに何も聞こえなくなったんだ」


 天狗3号さん(本名:枕木)……すぐに睡魔に襲われてしまうが負けることはない。睡魔との戦闘回数は非常に多いが、実は勝率十割。通称“3(スリー)プ”。

「夢幻泡影。それは、まるで夢の景色のように、ただひたすらに、惨たらしい眺めだった。運命だとか未来だとかに手を伸ばそうと届かない場所で僕らは殺された。僕も来来来世で目覚めた時、きっと理由もわからず泣いているんだろう」


 天狗4号さん(本名:ハリソン)……前職はゲスパパラッチ。スクープを狙うあまりに女優をストーキングし、猥褻な盗撮写真をネットで売りさばいたことで前科持ちに。

「風声鶴唳。ペンは剣よりも強しィィィ? そんなことを言ったやつは代わってくれ! 俺の代わりにミリオンを止めてくれよ!」


 天狗5号さん(本名:林田)……小学二年生の時に素人のど自慢に兄弟五人で出演。二週間だけクラスの人気者に。中学生の頃は合唱コンクールで指揮者賞など、微妙に音楽の才能があった。

「異口同音。俺たちにできることはただ一つ、恐怖と怒りで叫ぶだけだった。ヨシツネとベンケイ以外は言葉にならない鳴き声だった。俺たちは人間でも動物でもなかった。ただの獲物。それ以上でも以下でもなかった」


 天狗6号さん(本名:ロイズ)……高血圧、ガン、糖尿、片頭痛、胃痛など遺伝病のデパート。

「茫然自失。気づいたら死んでた」


 天狗7号さん(本名:ジョニィ)……後に天狗として犯罪に手を染めることになるが、その前のフリーターの時点で貯金が三百万もあった。家計簿の達人。そんな彼が偽札工場勤務なのはなんと皮肉なことだろうか。

「明鏡止水。敵の命を断ったり暴力を振るうことには必ず躊躇いが生じ、それは後々、後悔や罪悪感になる。ミリオンにはそのどれもがなかった。空に溶けるほど澄み渡った美しさだった」


 天狗8号さん(本名:タイラー)……元カノが広末涼子に似ていた。それだけが人生の誇りかつ、それですべての運を使い果たしたと思い込み、次の恋が出来なかった。

「気炎万丈。ミリオンの刃はまだ遠くにあるのに、あいつの獰猛な殺意の炎だけで俺は死を覚悟した。もうすぐ止められるってわかっていたのか、心臓がノルマを果たすようにバクバク鳴ったよ」


 天狗9号さん(本名:田中)……クワガタ用マットを使用した斬新キノコ栽培システムを考案。

「獅子奮迅だ! ミリオンは冷血漢? 会ったこともない奴が言ってたんだろうな。焼けつくような殺意だけで死ねそうだったよ」


 天狗10号さん(本名:ビスケット)……画期的な努力値配分のトリトドンを育成。天狗内ポケモンバトル大会ではテッカグヤ、カミツルギ、メガフシギバナさえ葬る。“ビスケットリトドン”と呼ばれたが調整内容は未だに極秘。

「鎧袖一触。俺はほんのちょっと、掠っただけだったんだぜ!? 畜生」


 天狗11号さん(本名:金糸雀)……好きな怪獣はメカキングギドラ。メカキングギドラスーツの窃盗を企てたが、盗めば自慢出来ないことに気付き、驚異の自作。実家の倉庫に保管してある。

「快刀乱麻。俺たちのフォーメーションが通用しない。迷いのない殺意の前に、敵の良心や油断に付け入るなんてことは出来なかった」


 天狗12号さん(本名:星矢)……『バガボンド』を読んで剣豪に憧れ、高校を中退して三年間山に籠った。野山を駆ける専門家。メッセのお風呂を覗きに下山したツーブロックの天狗はこいつだ。

「千載一遇。あのアブソリュートミリオンと手合わせ願えるなんて武人のはしくれとして誇り。歯牙にもかけられなかったけどね。ハハハ」


 天狗13号さん(本名:久三)……お笑いの劇場に通うが、笑いもせずにメモを取るため芸人からは嫌われていた客。

「一騎当千! 以上!」




 〇




 天狗。彼らは“人間”だった。地球人もいるし、異星人もいるし、ハーフもいる。異星人やハーフにはまだ生きづらい星、地球。罪を犯し、偶然燈の目に留まり、なおかつ何か“見どころ”があったやつは天狗の面をつけ顔を失う代わりに仕事を与えられ、その報酬として逃亡生活や余生にささやかながら給料が出た。同じような天狗仲間、ヨシツネ、ベンケイと共に日光の山奥の偽札工場で働かされるが、安全な逃走経路から次の勤務地まで全て燈が用意してくれる。トーチランドの階級では最下層だが不自由はなかった。地球で何も罪を犯さず生き延びる方が難しかった。十五人で過ごしたワクワク男子校ライフは嫌いじゃなかった。


「ディエエエ!」


 前後左右を囲むフォーメーションが取れないまま、ミリオンの刃が天狗1号の腹を突き破る。貫通した風穴から血と内臓が、体からは意識が、この世からは魂が飛び出して消える。

 この状況下で平常心を保てるのはおそらくヨシツネとベンケイのみ。ヨシツネがミリオンと対峙し、天狗13号に迫る刃が食い止められる。まずはヨシツネが動かねばならない。ヨシツネが指示を出さねば天狗は烏合の衆。


「獅子搏兎ォ! 狼狽えるな! こいつはジェイドやレイに比べれば全然マシだ! 2号から8号! ライトで援護に回れ! 9号から11号はフォーメーションCだ! 12号、13号! ミリオンを囲むぞ!」


「ガッチャ!」


「そういう事だ。死んでもらう」


 ヨシツネがミリオンを挑発し、天狗たちが四方八方に分散していく。レイと一緒にジェイドリウムに閉じ込められた場合のフォーメーションCだ。不忍池のスワンボートに火が放たれ、五條天神社の弓道場からの火の手が上がる。戦略的放火活動だ! 前方のヨシツネ、後方のベンケイ、右手側の12号、左手側の13号は頑馬を囲った時よりもターゲットから距離をとった位置だ。即ち時間稼ぎ特化!


「さぁ、どうするミリオン? 早く俺たちをどうにかしないと火の海だぜ。簡単だァ。巨大化しろ、ミリオン。火を踏み消せ! ただ踏み消すってことはここで暴れるということだ。お前の必死の消火活動がジェイドを削る。俺たちには出来ない程のスピードでな」


「そうか」


「どぉする?」


「ディエッ!」


 ぱきゐ! リハーサルではセーフティエリアとされていた位置まで後退していた天狗5号のライト、右腕、右肩、下顎までが一気に刀に貫かれた。ミリオンが投擲した刀が懐かしのオモチャ、ドリンキングバードの首のように振られ、天狗5号の血液を天高くまで打ち上げる。動揺と恐怖で天狗から浴びせられる光線が途切れた。ヨシツネの前に影が伸びていない。


「ガアアアアア!」


 鬼の形相でアブソリュートミリオン、咆哮。多少丸くなったって噂のレイとは段違いの迫力だ。ヨシツネでさえ一瞬足が竦む気合の雄たけび。迷いがない。隙がない。勝機がない! こいつと比べれば、レイなんて青かった。幾多の死線……いや、死さえも経験した戦士には死角がない。力ではレイとジェイドに劣っていても、源になる精神力が違いすぎる!


「誰に死んでもらうだと? 誰がウサギだ?」


「クソッ……」


「貴様らは俺の子供たちを殺そうとした。そんな貴様らを俺が生きて帰すと思ったか? ここで全員殺す。鏖殺だ」


 「殺す」。これがアブソリュートミリオン三〇五〇歳の答えだ! 悪と敵は死ね! 三人の子供の全員に魔の手を伸ばしたトーチランド及び天狗。存在が確認された悪のアブソリュート人マイン。史上最悪の災厄XYZ。到底野放しに出来るものではなく……。許せるはずもない。

 死は救いだ。解決だ。容赦だ。正義だ。慈愛だ。その裁きはミリオンが下す!

 ぐきゐ! 足の竦んだ12号の面の鼻に掌を押し付け一気に木片にまで粉砕し、破片を顔面に食い込ませて額を握り潰し、地面に叩きつけ殺害する!


「ライトを外すな! 数は勝機ィ! もう逃げられないとわかったろ! 俺とベンケイで殺す!」


 ヨシツネの太刀筋が緩やかな弧を描き、急速に径を縮める。ヨシツネの陰に入って光を遮ったミリオンが懐に潜り込んでヨシツネの足を払ったのだ。


「なまくらだな」


 腰をがちゐと殴られたかと思いきや予備で持っていた日光の模造刀がパクられた。試し斬りで13号の鎖骨がへし折られ、屈めた顔面が膝で蹴り上げられて13号が倒れて痙攣する。歩幅。迷いのない殺意と踏み込みは間合いを一瞬で詰める。ベンケイが攻撃に備えて気合を入れた。


「ディアッ!」


 一発目! メッセに焼かれた傷を模造刀の切っ先でなぞってベンケイの傷を開き、ヒゲと頭巾から深紅の血がしたたらせる。

 二発目! ベンケイ、皮膚と肉の強度でこめかめへの一撃を堪え切る。

 三発目! 模造刀の先端で引っ掻いただけの傷では浅く、斬ることも出来ない相手への攻撃はタックルでのテイクダウンだ。ミリオンの人間態セリザワ一七〇センチ。ベンケイ二四四センチ。倒してしまえば身長差はハンデにならない! 馬乗りになって空手の瓦割りの要領で下段突き! ベンケイの頭が拳と地面でピンボールになる。


「俺行きますッスよ!」


「お前だけじゃ足りねぇ! 2号! 放火はもう十分だ! 放火要員は呼び戻してライトに回せ! 3号! お前が右! 4号が左だ!」


 ベンケイの足が重力に逆らって空に伸び、鼻から頬へ真一文字に開いた傷の血がベンケイの睫毛で滴になる。


「ディアアア!」


 持参した刀はぶん投げ、強奪した模造刀も放り出したが今のミリオンには体重二百キロを超えるベンケイというハンマーがある。勢いをつけてジャイアントスイングでぶん回し、天狗4号に投げつけ、下敷きになった4号を死に至らしめる。これが老人の腕力だというのだろうか!?


「ディア……」


 いからせた肩からあまりの殺気に蒸気が上がりそうだ。鬼気迫る気迫! 


「貴様だけは硬すぎて斬れないようだな」


 仰向けに倒れるベンケイの頭巾を掴み、二発、三発と鉄拳を叩き込んで平常心を与えない。先程の一撃で血の滲んだ頭巾を引っぺがして度重なる殴打で出血した鼻と口を覆い、ベンケイには何も見えなくなる。布越しに巨大な口が開かれた。二四四センチの巨体が空気を求めて暴走する。だが相手はアブソリュートミリオン。最小限の動きでベンケイを往なし、不忍池に頭を叩き込んで水と空気の区別なく吸い込ませて溺れさせる。


「ガハッ!」


「ディアッ!」


 水から顔を上げたベンケイの口を模造刀で突き刺し、ベンケイの口腔のトンネルを抜けた切っ先が右の頬から飛び出した。ミリオンは刀の柄、飛び出した切っ先を自転車のハンドルのように握って急カーブを切る。ベンケイの首の骨が折れてついにこと切れてしまった。


「……ッ怯むなッ! 残っている奴は何人だ!? フォーメーションを組みなおす!」


 果たして鼎のテオリアはアブソリュートミリオンの戦いの真実を導き出せるだろうか。ジェイドリウムの中のこの戦いを見ることが出来たのはジェイド、レイ、マインのみ。ジェイドとレイはミリオンがデスクワーク派になってから生まれた子なので、この三人のアブソリュート人の中でも全盛期のアブソリュートミリオンを知っているのはマインのみだ。

 千里眼から涙を流し、マインはアジトで歯ぎしりした。


「こんなのずるいよぉ……。初代の周りをウロチョロしてたあのガキが……。殺しておくべきだった」


 真っ先にマインが感じたのはずるいってことだ。そして次に感じたのは親子の縁だった。


「マッチポイントだ」


 ベンケイと十三人の天狗を始末し、最後の一人を討つべくアブソリュートミリオンが刀の峰、切っ先、ヨシツネの喉笛と視線を滑らせて目のピント調節をする。ヨシツネは却って冷静になっているようにも見えた。


「まさか伝説の英雄がただの殺人鬼だったとはな」


「殺人鬼か。そう間違ってはいない。貴様の相手がレイとジェイドのままならこうなることはなかった。あの二人は強いからな。あの二人は強い。貴様ら如きを逃がしてしまっても、いつでも倒すことが出来るし恐怖にも感じない。だが俺はそうはいかない。弱い者は復讐や再戦があっても負けないよう、時に執拗に敵を殺さねばならない。俺には殺すことしか出来ん」


「弱い、か」


「兄はおろか、息子、娘よりも俺は弱い。俺に出来ることは徹することだけだった。決して容赦せず、悔いを残さない。褒められたものではないが……。俺の唯一の強みがこの精神力であるならば、貴様もなかなかだったぞ。よくやった。レイ、ジェイドを追い詰めた策略、最後の一人になるまで勝機を捨てなかった精神力、なかなか見どころのあるやつだった。バカで厚顔無恥で無鉄砲だったのか、それとも傑物だったのか。だが完璧すぎたことが敗因だ」


「嬉しくないねぇ。お褒めの言葉なんてのは嬉しくないよぉ上から目線で。お前が言うから様になるだけだろ。十四人も殺して勝ったお前が言えばなんだってすごく見えるさ。今のお前ならいきなりポコチーンとか言っても様になるさ」


 周囲の風景がグニャグニャと変形し、真っ白に溶け落ちた。ヨシツネはヘソを掴まれて引っ張り回されるような錯覚を覚えた。何もない空間の上空に夕焼けの空とセミの声が重なる。


「ジェイドリウムの時間切れか。レイが相手だったら貴様の勝ちだったな。ディエッ!」


 不忍池の畔には、体力を全て使い果たして蹲る寿ユキ、第二陣に備えて彼女を守る飛燕頑馬、戦を終えて刀を鞘にしまうセリザワ・ヒデオ、かろうじて息のあった天狗4号。ジェイドリウムの中で死んだ十四人の天狗軍団構成員は世界に戻ることはなかった。ベンケイの下敷きになっていた天狗4号も解放されたがすぐに心肺停止した。瀕死の重傷からたった五日で戦線復帰し、ヨシツネの策略でジェイドリウムを破壊しつくされたユキに天狗4号を助ける力はなかった。


「親父」


「勉強させてもらった、などと言うなよ。疲れたな。俺が力を貸せるのはここまでだ。お前たちにはお前たちの理想がある。ブレるな」


「ありがとう」




 〇




「……」


 燈はカイのことを思い出していた。ミリオンの三人の子供はみんなミリオンから何かを受け継いでいた。そしてこの戦いを見終え、一番ミリオンに似ているのはなんだかんだでアッシュだったんだなぁ、とか考えた。コンプレックスを力に変えるメンタリティーはミリオン譲りだ。カイは何かを燈から受け継いだのだろうか。受け継いでいてほしかったのか? 初めからコマだった息子に。最後の最後でヨシツネに少し愛着を感じ、死んでほしくないと強く願った。カイを愛すこともいつか可能だったのだろうか。


「ロード……。これは全く予想がつかなかったことです。すぐには切り替えられませんよ。初代も来る!?」


「いいえ、初代は来ないわヒトミちゃん。初代はこんなことに興味を持たない。っていうか来たら終わりよ。わたしは真っ先にサインもらいに行っちゃうもん。そしたらサイン会から帰ってきたわたしをビンタしてね。あれはずるいよぉ〜。ミッドガルの魔晄炉を爆破にしに来たテロリストの迎撃に入ったら召喚獣使われた気分。しかもナイツ・オブ・ラウンド」


 憔悴した燈が不忍池にチャンネルを合わせていた千里眼を切った。


「可哀そうなアッシュ。パパの雄姿を観るチャンスなんてそうそうないのに。っていうか子供が生まれてから戦ってないから五十年以上ブランクか、ミリオンは。上の双子は持ってるね。でもフジが姉が死んだショックを知らずに済んでよかった。……ッ結局ジェイドが生きてたじゃない。どぉするかなぁ」


「ヨシツネは喜を多く残してくれましたし、XYZ様をそろそろ出すべきですかね?」


「いえ、わたしはやっぱり正しかった。ミリオンで調子に乗ったあの双子には、ミリオン殺しのマグナイトのBトリガーが一番よく効く。そしてこれはやっぱりフジじゃないと作れない」


 燈がお化け屋敷に放送をかける。


「君のパパが大活躍したわ。お姉ちゃんは死んだけど見事な復活! これを見られなくて残念だったね」


「そうか、親父と姉貴が。で? 兄貴はこんなことを言ってなかったか? バアさんは用済みって。レイが」


「そんなこと言われたら首絞めて殺さないと」


 路上喫煙、ポイ捨て以上に危険視される喫煙の厳禁行為奥義、寝タバコをしていたフジがあくびをしながら立ち上がった。


「もうダルくなってきたし帰るわ」


「帰る?」


「俺も一週間ここでぼーっとしてた訳じゃないんでねぇ。じゃ、そういうことで。バアさんは用済みだ」

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